ゴールデンウイーク(『ラビット・ホール』観劇)

福岡行き。目的は演劇『ラビット・ホール』を観劇することです。
が、本当の目的は主演の宮澤エマさんを見るためと言った方が正解(笑)
まあ、沼民だし、好きに理由はありません。
会場が福岡であったので新幹線で日帰りもできそうば感じ。
内容を知っていたわけでもなく観客も満員ではなかろうから当日券で行けたら行こうかなという感じでした。
フォローしているツイッターから「ツイッター予約」という通知があり、登録したことから計画は動き出しました。

予約が確定し、交通機関を調べてみたところ、新幹線が意外に高い。
高速バスは県都からしか出ない(時間がかかる)、自家用車は疲れそう。
ということで飛行機を使うことにしました。
往復で約18,000円。家からのバスと地下鉄で博多駅までの料金がかかります。
無理すれば日帰りも可能なプランではあるかもしれませんが、余裕を持たせ前日着、翌日帰宅の2泊3日を考えました。ホテルはカプセルホテルを考えていましたがうっかり予約を忘れ、遅れて探したところどこにも空きがなく、1泊20,000円のビジネスホテルを選ぶことになりました。ちょうど博多どんたくと重なり観光地価格になってしまったわけです。
※後で調べてみると平日でも18,000円ではあったみたいです。

飛行機も意外に時間はかかり、バス乗車時間。心配性とバスの便数が少なさが重なり早すぎる空港着で3時間ほどの待ち。しかも出発が20分ぐらい遅れた上、福岡空港も便の発着が立て込み、空中待機しさらに遅れるという始末。
風向きのせいなのか、目的地と反対方向に離陸、到着も空港をやり過ごし大きく回り込みながらの着陸であったので飛行時間も長かったようです。
もしかして、観光用に景色が見えるよう滞空時間を長くとってくれたのかなとも思いますが、別に急ぎたいわけではないけれど、こちらとしては早い方がいいと思いますね。

着いた日は少しだけ近くの街中を散策して、でも疲れないように無理をしないことに注意しました。

【観劇当日(キャナルシティ劇場)】
このような作品については、事前にあらすじを知って観るか、全く予備知識を入れずに観るか考える人間です。
ネタバレが嫌がられる風潮はありますが、映画など案外事前にあらすじを最後まで知っていて観ても、物語についていけるため楽しめる場合が多いと感じることがあると思うからです。
今回は軽く検索しましたが、よく使うウィキペディアの記載も少なかったのでその程度の理解度で鑑賞することになりました。
ちなみに、開場が割と遅い(開演30分前)ため、早めに着いた自分は足の痛みが心配でした。チケット売り場の方が、隣の無印良品のショップで休んで行く人がいますよ。とアドバイスしていただき、それを話すと快くソファーを使ってくださいと言われました。感謝。

開場は10分ぐらい早められたようで、あまり長く待つことなく入場。
多分修学旅行の引率で『オペラ座の怪人』を観たことがある劇場。
大きい。
座席はツイッター予約であったせいか、最前列あたりの真ん中あたりでした(言えないぐらいの:笑)。両隣女性で、全体的に女性が多かったのですが、申し訳ないと思いつつ、隣が空いていなくて(しかも野郎でもなく)こちらは居心地は悪くなかったです。
映画館あたりではあまり前には座らないのですが、見たい演者さんがいるせいもあり前寄りでよかったです。声もよく聞こえるし(マイクで拾っているかもしれませんが)。
内容的に重いストーリーであり、単純でもなく簡単でもないというエンタメとは方向性の違う作品なのですが、客入りはまずますというところでそれもよかったです。ホッとしました。

【観劇雑感】
・概要(ウィキペディア)
『ラビット・ホール』(Rabbit Hole)は、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督、ニコール・キッドマン製作・主演による2010年のドラマ映画である。デヴィッド・リンゼイ=アベアーによる2005年の同名の戯曲を原作としており、リンゼイ=アベアー自身が映画脚本を執筆した。2010年のトロント国際映画祭でプレミア上映が行われ、北米ではライオンズゲート配給により同年12月17日に限定公開、翌2011年1月14日に拡大公開された。

製作・主演を務めたニコール・キッドマンはアカデミー主演女優賞を初めとする数々の賞に受賞・ノミネートされた。

・あらすじ(ウィキペディア)
ニューヨーク郊外の閑静な住宅街に暮らす、妻ベッカと夫ハウイーのコーベット夫妻。彼らの幸せな生活が一変したのは8か月前。
一人息子ダニーが道路に飛び出し交通事故に遭い、わずか4歳でこの世を去ってしまったのだ。それ以来、2人の心には埋めようのない喪失感が生まれていた。
前に進もうとするハウイーとは対照的に、心乱れるベッカは周囲にも辛く当たり散らす。そんなある日、彼女は息子を轢いた高校生ジェイソンを偶然見かけ思わず尾行してしまう…

結論から言えば、”喪失からの恢復”の物語。
登場人物は5名。帰宅後読んだ誰かが書いた”あらすじ”ブログを読むと、原作とは登場人物も作品構成も少し違っているようです。

舞台は天井から吊り下げられた”青いボール”が下に降りてきて階段上にコトンと置かれるところからはじまります。
ありがちな演出ですが少しの事前知識と少しの思考力があれば、このボールを中心として物語のパーツがつながってくるだろうということを想像することができます。
あらすじを知っていないとこのボールが何なのか分からず、劇の時間の真ん中あたりまで話の枠組みを掴むことができないかもしれません。

最初のシーンは主人公のベッカ(宮澤エマ氏)と妹イギー(土井ケイト氏)の会話から始まります。このあたりも事前の知識がないとさっぱり分からないでしょう。
二人の演者の会話はまさにマシンガントーク。
これだけのセリフを覚えなければならないプレッシャーはどれぐらいだろう。(なんていう要らん想像が演技を観る集中力を削いでしまったりするのでありますが☺・・・)
青いボールの暗喩への気付きが救いかな?
でも演出としてはそれぞれの会話や演技にはきっちり意味があり、伏線というわけではないけれど後から分かる仕掛けの場面ではあるので、事前知識なしに「?」を抱えながら観てもいいかもしれません。

その後、コーベット夫妻。ベッカとその母親であるナットとの会話劇があり、それぞれの関係性が深堀りされていきます。
(造船王)メネシスの話のくだりになるとコーベット夫妻の一人息子のダニーが交通事故で亡くなったことが分かりそれがこの物語の焦点となっていることに気が付きます。

最初事件から立ち直れていないのはベッカだけのように描かれていますが、夫であるハウイーも違った形で喪失感を抱いたままであることが分かってきます。この二人の喪失感の質の違いが二人の思いのすれ違いをさらに助長していきます。
場面は展開し、息子の思い出であるビデオテープが失われてしまうことから夫婦の亀裂はいよいよ修復不可能となり、ついには家を手放す決意をすることになります。
そこから先は交通事故を起こした高校生ジェイソンの登場。
彼に対するコーベット夫妻の想いの違いが描かれていくことになるのですが、ジェイソンを通して彼の心の悩みを知り、それを受け入れていくベッカ。
演題の『ラビット・ホール』とは高校生のジェイソンが書いた短編のSFのタイトルです。
異世界に通じるウサギの穴。それぞれの登場人物が抱える現実逃避するための場に導くワームホールという設定のように思えます。

時間は流れ妹のイジーの誕生会。ベッカの変わり始めたその想いがハウイーにも伝わり、売れなかった家と残った思い出が二人の絆を再び結びはじめたように見せつつ、ふたりが手を取り合って劇は終幕へ。

【あるブログからの感想】
実は劇自体には少し釈然としないものがありました。テーマは分かるのですが、この短い時間であったせいか、うまくまとめきれていないという印象です。最初の青いボール。そしてタイトルの『ラビット・ホール』からの小道具としての小説「ラビット・ホール」。もう少しストンと落ちる脚本と演出があったらな。というのが自分が感じた感想です。

帰宅後ネットで検索し『ラビット・ホール』について書かれたレビューブログを見つけました。それにはあらすじと感想(批評)が書かれてあったので、そのまま転載したいと思います。
以下はそのブログの内容の一部になります。
映画『ラビット・ホール』あらすじネタバレ結末と感想。無料視聴できる動画配信は? | MIHOシネマ (mihocinema.com)

子供を亡くすということ

悲しみや喪失感には個人差があるし、何が一番悲しいかは人によって違う。それでも子供を持つ親ならば、子供に先立たれることほどつらく苦しいことはないはずだ。しかもその悲しみの形は、同じ子供を亡くした夫婦の間でも共有できない。夫婦だから支え合える、相手の痛みがすべて理解できるといった理想論ではなく、悲しみを取り除く正しい方法などないのだとこの作品は教えてくれる。

では、子供を亡くした親はどうすればいいのか。明確な答えなどないが、物語の後半でベッカの母親が語る言葉には一筋の光があった。“悲しみは消えない。しかし時間とともに変化し、その重さが変わる。重たくのしかかっていた大きな石がポケットの中に収まる小石になる。それでも、この小石に触れるたび、やはり悲しみに襲われる”要約するとこんな感じだ。さらに母親はこう言う。“息子の遺したものだから持ち続けられる”と。

ともに息子を亡くした母と娘が静かな地下室で語り合うこのシーンは、本作の中で一番印象に残った。ずっと悲しみを抱えて生きるという漠然とした状態を、とてもうまく言葉にしている。

あと一歩の何か

主演のニコール・キッドマンは製作にも関わっている。それを考えると、この作品への熱意は並々ならぬものがあったのだろう。確かに演技にも熱がこもっていた。実際に本作での演技で数多くの映画賞にノミネートされている。

しかし多くの賞にノミネートされながら主演女優賞の受賞は少ない。それもわかる。何度か彼女の演技にグッとくるシーンもあったのだが、“息子を亡くした母親の痛み”が思うように届いてこない。それには脚本や演出や他のキャストとのバランスなど、いろいろな原因があるので一概には言えないが、全体に彼女が浮き気味だなとは感じた。どうもニコール・キッドマンの演じる母親はリアリティに欠けている。母親としてはベッカの母親を演じたダイアン・ウィーストの方が、ずっと心に残る。ルックスが良すぎるというのも、役によっては損だなと思った。

映画『ラビット・ホール』 まとめ

物語はとてもわかりやすいのに、ベッカが心を開いていくきっかけとなるジェイソンの漫画の内容がわかりにくい。もとの戯曲を映画用に脚色した際、ずいぶん省いた箇所があるのかもしれない。しかし戯曲の原作者が映画の脚色も担当しているので、納得してはいるのだろうが…。とりあえず「ラビット・ホール」を読ませて欲しい。

ネット上の評価は高いようなので、日本人には好まれる作品なのだろう。個人的には“ものすごく平均点の映画”という感想で、一度見れば満足だ。

【私の感想】
・緊張感ある雰囲気で、劇場も物音一つしない静かさ。
・私は宮澤氏推しですが、すべての演者さんが作品に真摯に対峙しようとする姿勢は強く感じました。これは他の作品や演者さんも同じだろうとは思います。
ネット動画(EMTV視聴者☺)の中で「もー大変。死にそう」みたいな話をされているのを聴いていたので、演技を観ることだけに集中できないのです(笑)
・とにもかくにもこういうことが今後のキャリアにつながるのだろうなとは思いました。そういう意味では大成功でしょう。
・セリフが膨大。覚える演者さんも大変でしょうが、膨大な情報を処理する側の能力値が追いつかない。ちょっとこのへんで置いてけぼり感がありました。どちらかと言えば何度か見てやっと分かるような深みのある作品です。完全に大人向けであり、子供には色んな意味で難しいでしょう。
・宮澤氏はハーフですが、体型も含めて日本人に見えてしまう方だという印象がありました。しかしライティングのせいか、肌の色や顔の彫りの深さなどやっぱり異国の血を結構強く感じました。美しいし、近くで見ることができるというのはありがたいものです。
・ブログのあらすじを読みますと、劇バージョンが構成や演出をかなり違えて来ているようです。どちらがいいのか私には分かりませんが、ただ、劇バージョンはややストーリーをうまくまとめあげることが難しかったのかな?という印象を受けました(個人の感想です)
・青いボールから始まり、いくつかのパートで登場人物の関係性と、それぞれの登場人物(抱えた背景)を掘り下げ、息子の交通事故に焦点を当て、そこから関係の恢復へと向かう。テーマははっきりしており、向かうべきゴールも見えている。
でも、そこに至るために作品構成として劇中散りばめられたパーツの時間配分と提示すべきパーツの選別と配置、小道具(ボール、小説)の使い方。もう少しスッキリできなかったのかな?と思いました。
・青いボールは息子の交通事故を観客に強く印象づける小道具です。最初は最高。途中ボールを意識させる場面があるのですが、もう少し強調してもらいたかった。
・SF小説『ラビット・ホール』はオチを決める決定的な小道具だろうというのは自分でも予測できますし、どういうオチを見せてくれるのかという期待がありました。たしかに「なるほど」とは思えるのですが、いいオチっていうのはこちらに思考を求めないというようなもの。って自分は考えています。
考えるってことは「素に帰っちゃう」ということで、没入観の対極にあると思うんですよm(_ _)m。
・笑える場面もあったのかもしれませんが(なかったのかな?)、ついていけず。要するに作品が芸術寄りで難しいということですが、芸術=複雑かつ難解なのかなと思うオイラです(TT)。
・宮澤氏は動画を見ていてとても知性を感じる人です。しっかり受け止め考えた上で切り返す。脚本の解釈をしっかり演技に反映させていると思います。三谷監督の作品にも常連となるぐらいにシリアスものもコメディもできることを示し、今回表現者としての幅をさらに広げられたと感じたので良いです。
・沼民として応援してきた(金はありません(._.))僕も偉い。
ということで締めさせていただきます。
いい作品です。それなのにレビュー、あまりよくまとめられなかったように感じますが、難しくてよく消化できなかったので仕方ないと思います。でもエンタメ作品でないからこれでいいと思っています。
芸術作品に出演でき、集客もできるということは素晴らしいことです。

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