【小説】蟻とバス(南後りむ)
午後四時を過ぎたころ、駅前のバス停には十名ほどの列ができていた。その最後尾に、学校帰りの男子高校生がスマホを片手に立っていた。その視線は当然ながらスマホの画面――会員制交流サイトとやらが表示されていた――にやられていた。その目は特に熱心になにかを見るというでもなく、気だるげだった。息をするように他人の投稿を眺め、特に何か思うということもなく、また息をするように――或いは食い物を咀嚼して、嚥下して、消化するように、画面をスクロールしてまた次の投稿を眺めていた。いや、彼にとって