死んだ犬のこと


去年の5月に、高2からずっと飼っていた犬が死んだ。
彼はゲンキンでたくましく、非常に人懐こい犬で家族は皆(こいつ野生では絶対に生きていけないだろうな…)と思っていた。

犬が死んで1年弱経つが、2ヶ月に1回はまだ彼が生きていた!良かった!みたいな夢を見て飛び起き、夢であることを認識してしょんぼりする朝がある。
彼は驚くほど性格が良くこだわりの少ない犬で、一番安いペットフードをモリモリ美味しそうに食べ、よその犬にギャンギャン吠えられても我関せずの様子だった。

我々人間は犬に対して多くの期待を寄せすぎていると思うが(余談だけれど私は動物番組のアテレコが大嫌い)、彼の示すラブは常に全身全霊で、犬人間間の絆が確かにあるような気がしてしまう。そして彼が死してなお彼の信頼や愛に報いる術を私はまだ知らない。

よくある話だが、やや潔癖気味で犬を飼うことに難色を示していた父をも故犬はトリコにし、その可愛さと愛すべきアホさ加減をもって、来て早々うちの家族の中心の座を掻っ攫った。

彼は保護犬で、ペットショップで売れ残ったところをボランティアの個人宅に引き取られ、そこからうちの家族の元へやってきた。その際の紹介文章曰く「ペットショップのケースに2年も入り、挙句放棄されたのに人間が大好きです。最近おもちゃで遊ぶことを覚えて大喜びの彼にもっと楽しいことを教えてあげてください。甘えん坊で抱っこが大好きです」とのこと。
相変わらず可愛い犬、そして愛のある文章!
これを見てたまらず犬を抱きしめると、キョトンとしながら訳もわからずゆるゆると尻尾を振っていた。

というようなことを色々なパスワードで使用されている彼の名前を打ち込みながら思い出した。彼の名前を入力するたびに、彼がわたしの膝に陣取って太ももにアゴを乗せた瞬間の満足げなため息を今も腿に感じる。本当に可愛くておりこうな犬だった。死後の世界があるのなら彼が今幸せであるといい。

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