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【ドラマを執筆する手順②】ドラマの「趣旨」を考える

自分の人生を語るうえで欠かせない「テーマ」を前回の記事【手順①】で選んでもらいました。
 
そこで本記事【手順②】では、選んだ「テーマ」を通して文章に起こしたい「エピソード」や「趣旨」について考えていきます。いわば、文章の方向性が決まる工程。
 
「テーマ」を通し、当時の自分が感じたことや考えたことを思い返すので、【手順①】ほどすんなりと進みません。ですが、新たに気が付けることもたくさんあるので、根気よく進めていきましょう。

1.「テーマ」を細かな「エピソード」に分解 

【手順①】でドラマの「テーマ」が選べました。そこでいきなりですが、ここで一度ドラマ文章の内容をイメージしてみましょう。
 
どうでしょうか?
 
実際にやってみるとわかりますが、選んだ「テーマ」に関する思い出がいくつか浮かび上がってくるばかりで、現時点で文章の方向性は曖昧だったと思います。
 
一度この状態を本記事で使用している例を使って説明してみます。
 
まず、本記事では「高校時代のフィリピン留学」をドラマ文章の「テーマ」に選んでいます(【手順①-2.】)。そして先ほどの読者の皆さんと同じように「高校時代のフィリピン留学」について文章を書くイメージを想像します。
 
すると、下のイラストのような感覚で、「高校時代のフィリピン留学」の思い出がさらに細かく分解されていきました。


<具体例>
1.)フィリピン留学中の天気はコロコロ変わり、慣れない環境で苦労した
2.)ホストファミリーとの別れ際に皆で涙を流した
3.)留学中にお世話になったホストファミリーの家はお風呂からお湯が出なかったものの、わざわざ自分のためにお湯を用意してくれた
4.)フィリピンの料理が美味しかった
5.)留学中に滞在したホストファミリーの家が小さいわりに、大人数での生活で大変だった



つまり、現時点の状況として、

「選んだ『テーマ』の内容がさらに細かな思い出(『エピソード』)へ分解できる状態にある。」と言えます。これでは文章の方向性が決まるはずがありません。

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もちろん、「テーマ」に関する複数の「エピソード」をいくつも記載し、大作ドラマとしてまとめていくことも可能です。ただし、この方法は執筆量が増えてしまい、はじめてのドラマ執筆が大変なものになります。
 
そこで、最初は細かな「エピソード」の一つに焦点を当てることをオススメしています。この方が「趣旨」も明確なドラマとなり、文章としてまとめやすくなります。 

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<※補足>なお、現時点ですでに細かな思い出(「エピソード」)まで落とし込めている読者もいるかもしれません。その場合、本章と次の2章は軽く目を通しつつ、3章へ進んでください。)

2. 分解した「エピソード」を思い返す

ところで、「『テーマ』が細かな思い出(『エピソード』)へ分解できていれば、どの『エピソード』をドラマに取り上げても良いのか?」と、疑問を抱いた読者もいるでしょう。
 
結論から言えば、書き出した「エピソード」を一つずつ思い返したとき、今でも思い(感情・考え)が強く反応するものこそ、自分の人生を語る上で重要なドラマになる可能性が高いでしょう。
 
ここで実際に読者のみなさんも進めていきましょう。
 
「テーマ」の範囲で当時を振り返り、印象に残った思い出(「エピソード」)を、印象に残っていると思う理由と合わせて箇条書きにしてみましょう(目標は5つ以上のエピソードを箇条書きにすることです!)
 
ちなみに、「エピソード」を通じて書き出した思い(感情・考え)を把握しておくことで、この後の工程が一気にわかりやすくなりますよ!(本記事の例では下線を引いています↓)


<具体例>
1.)フィリピン留学中の天気はコロコロ変わり、慣れない環境で苦労した
理由)日本にいたときには経験したことがない土砂降りの雨で、予定の場所にも行けないことは日常茶飯事だった。着るものも困ったな。当初の南国のイメージとは違い、自然の前での無力感は初めての体験だった。
 
2.)ホストファミリーとの別れ際に皆で涙を流した
理由)滞在先のホストファミリーには色々と気にかけてもらった。たった数ヶ月という短い留学期間であったものの、別れ際に涙が出てきて、信頼関係に気がついた。
 
3.)留学中にお世話になったホストファミリーの家はお風呂からお湯が出なかったものの、わざわざ自分のためにお湯をヤカンで何度も沸かして運んでくれた
理由)お湯を沸かして何度も運ぶというアイデア、そして「可能な限りのことを尽くそう」という、それまでは感じたことのなかった思いやりを体感した。
 
4.)フィリピンの料理が美味しかった
理由)留学前は食事が合うか心配だったものの、行ってみると日本食の甘辛の味付けに似ている料理も多く、意外と食べやすくて大満足だった。特にピーナッツバターを入れたカレーの味が忘れられない。
 
5.)留学中に滞在したホストファミリーの家が小さいわりに、大人数での生活で大変だった
理由)日本だと滞在中のお客さんは特別な扱いを受けるもので、それが普通だと思っていた。しかし、フィリピンではお客さんも家族と同じ扱いで、一人用のベッドに3人で寝ていた。異文化に触れて驚いた。



<※補足>すぐに思い出した「エピソード」、当時をじっくり振り返りながら蘇ってきた「エピソード」、共通の体験をした友人と当時を振り返ることで想起した「エピソード」など、余裕があれば、色んな方法で書き出していくことをオススメします!)

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ちなみに、「テーマ」内の思い出をどこまで細かな『エピソード』へ分解するか?」は個人差が生まれますので、気にし過ぎなくて大丈夫です。
 
最初はアークカイブにある他のドラマを参考にしながら、「この範囲の『エピソード』なら、ドラマ文章にちょうど良いだろう!」と感覚を頼りに進めていきましょう。
 
万が一、「エピソード」が細か過ぎた、あるいは大き過ぎた場合は、立ち返って調整すればOKです。

3. ドラマとして執筆する「エピソード」と「趣旨」を一つに絞る

実際に書き出せたところで、自分を語る上で大切にしている思い(感情・考え)を含んだ「エピソード」はどれだったでしょうか?「エピソード」を選んだ具体的な理由を添えて、一つ書き出してみましょう。
(本記事の例も載せていますので参考にしてみて下さい↓)


<具体例>
【エピソード】
なかなか迷うところだが、「3.のホストファミリーの家はお風呂からお湯が出なかったものの、わざわざ自分のためにお湯をヤカンで何度も沸かして運んでくれた」エピソードにしよう!
【選んだ理由】
思いやりを持って行動することの大切さを学べた思い出だった。人の力になるためにアイデアを駆使するところにも驚いたが、実際に行動する人を目の当たりにした衝撃は忘れられない。対人関係において、困っていたら可能な限り助けられるように行動しようという価値観が出来上がった気がする。

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このように、自分に大きな影響を与えた「エピソード」を一つ選べました。
 
(<※補足>今回外れた他の「エピソード」の候補ですが、ドラマの中に上手く絡める方法がありますので安心してください。また、別のドラマとして執筆する方法もありますので、気にし過ぎなくてOKです!)

4.ドラマの「趣旨」を一言に要約

また、すでに気が付いている読者もいるかもしれませんが、ここまでの過程を通し、「エピソード」を通じて自分が経験した大切な思い(感情・考え)も考えることができました。
 
これにより、ドラマ文章の「趣旨」が簡単に決まります。アークカイブでオススメしているのは次のフレームワーク。


『Aは、Bを通して、Cだ。』
 
A:自分(自身、の家族、の人生、の価値観、との関係、などの主語)
B:エピソード
C:思い(思ったこと、考えたこと、感じたこと、気がついたこと、など)



本記事の例をつかって「趣旨」を考えてみると、


<具体例>
A: 私は、
B: フィリピンでのやかんのお湯のエピソードを通して、
C: 困っている人がいたら可能な限りその人のために行動し、助けたいと思った



のようになります。
 
<※補足>このフレームワークを利用して書き出した「趣旨」は、【手順④】でドラマの「構成」を考える工程で再登場します。なので、頭の片隅にぜひ留めておいてください!)
 
選んだ『テーマ』の内容がさらに細かな思い出(『エピソード』)へ分解

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以上、今回の【手順②】から、ドラマとして執筆する「エピソード」や「趣旨」が明確になったかと思います。すでに文章に起こす準備の80%が完了したと言えるでしょう!
 
ここまで来ると、「構成」を考えはじめ、ドラマ文章の全体像をまとめたくなりますよね。もちろんそのような手法もあります。
 
ですが、その前に「エピソード」に関する記憶だけ掘り返す時間を取っておきましょう(【手順③】)。一見すると遠回りに見えますが、「構成」を固める上で迷いが一気に減ります。

【手順③】ドラマの「エピソード」に関する記憶を掘り返す

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