見出し画像

棚ぼた休み

6時半に電話が鳴った。歯科医師会の理事長からだ。絶対に寝起きなことはばれるだろうが、いかにも起きてました、という雰囲気を装って電話に出る。今日は強風で高松からの高速艇が欠航になったそう、なので今日の診察はおやすみですとの連絡。(やったー!!)喜びも声に出ないように冷静に、承知しました、患者さんにご連絡しておきます、と返事。7時半にセットしていたアラームを8時20分に変更してルンルンで二度寝した。

毎週木曜日は島の歯医者で受付のバイトをしている。週に一度、高松から先生と衛生士さんたちが来てくれる診療所で、もう10年以上やっているそうだ。わたしが働き始めてちょうど1年が経つ。前任の方から引き継いでもらえないかと声をかけられ、全く未経験分野だけれどやってみてもいいかも、と引き受けた。いちばんいいところは診療所がうちのすぐ近く、というところ。徒歩40秒。

バイト初日はぐったり疲れた。なんてこった、覚えなきゃいけないことがたくさんあるし、なーんにもわかんない歯科用語が飛び交う。しかし、2回目、3回目になって慣れてくると今度はお得意のうぬぼれが始まった。わたしってなんて優秀なんだろう。3回目でもうやることはわかっちゃったし、ちゃんと先生とも患者さんともコミュニケーションとって、衛生士さんにわからないことは教えてもらって、できることはお手伝いしちゃって、こんなにスムーズに動ける自分にびっくり〜。書類の整理、掲示物の整頓、パソコンで打ち込む日報のフォーマット作り。優秀。
そんなわけですっかり余裕も生まれ、楽しさややりがいを感じてもいるけれど、毎週、というのは徐々に重たくのしかかる。また木曜日がくる、歯医者か、、、

夢の中でも億劫だな、と思っていたところに早朝の電話。なんと、棚ぼたのお休み。
ギリギリまで寝て飛び起きたらスキップ(の気分で)診療所に向かい、今日診察にいらっしゃる予定だった患者さんに休診のご連絡をして、さて、今日はなにをしようか。三度寝しちゃおうかとも思ったけれど、もう着替えたからまた着替えるのも面倒で、のんびり朝食を食べる。マフィンとお茶。
せっかくだから、昨日の続きをしよう。

昨日は友人と畑をした。先日、お茶しに来たときにわたしがうちの庭はなんにも作物が育たない、見てこのひょろひょろ玉ねぎ、と相談をしたら、じゃあ一緒にやってみようか、となったのだ。苗を作ったらたくさんできて、もうちょっと畑が広かったらいいな、と思っていたところだったみたい。ありがたい。
まずは土がふかふかになってミミズが活発になるように拾ってきた落ち葉を庭の土に埋め込む。友人はミミズを見るたび、わ!ミミズ!と言って喜んでいる。と思えば、丸まった幼虫を土の中から見つけ出し、これは根を切るから、と言ってアスファルトの上にぽいっと放って、鳥さんどうぞ、と言っている。
野菜はアルカリ性の土が好きだそう。多分ここの土は酸性なんだと思う、ほら、どくだみがあるからきっとそうだ、と、石灰を多めに振る。陽当たり、水はけを考慮して、トマト、きゅうり、ズッキーニの苗を植えて、インゲンの種を蒔いた。支柱を立てて、風除けヨトウ虫避けにビニールをかぶせる。
準備した面積に対してズッキーニの苗があと3本余ってしまった。
それはわたしがまた後日、自分で耕して植えることにして、昨日はおしまいにしたのだ。
その苗たちが植わるところを作ろう。

耕して、落ち葉埋めて、石灰撒いて、苗植えた。
支柱が足りなくなったので、裏山の細い竹を切って使う。
作業していたら、律子さんが通りかかってビニールは上を折り返してやると雨が苗にちゃんと届くよ、と教えてくれる。丁寧にするなら下に切り込みをいれて土に埋めてやったらぴらぴらしないし風に強いけど、そこまでせんでもいいって。

よし、よし。今年はできる気がするぞ。どんな植物もみごとに世話してしまう緑の指の持ち主にはなれなくとも、畑してます、と言えるくらいにはなりたいもの。可愛がろう。お水をあげよう。草を刈ろう。土を寄せよう。

花文ちゃんは土に触れた方がいいよ。
身体を見てくれたことのある何人かに共通して言われていること。
きっとわたしも変わるんだろう。楽しみ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?