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前方後円墳に埋葬されたくて。真剣に計画を練ってみた(前編)

動機は何か


私には、憧れがある。
死してなお、世界を見たいのだ、あるいは、未来の人と交流したいのかもしれない。

前方後円墳に埋葬されたい。

それが私の願いである。

そもそも、あの画一的すぎる日本の墓が好きではない。
どうせ埋葬されるなら、もっと明るく、「あ、カモハイおばあちゃんの墓はこれ!」と子孫にも楽しんでもらえるようなものがいい。
しかし、あまりにも突拍子もない墓は墓荒らしに遭うかもしれない。
それは、永遠の眠りを妨げるものであってはならない。

結果として、日本古来の伝統様式を乗っ取ると同時に、わかりやすく(自己主張のできる)墓は何かと色々考えた結果、前方後円墳が宜かろうというわけだ。
オリジナリティがあって、日本らしくてなかななか良さそうに思えた。

そうはいかない、みんな考えている


もう考えてる奴が社会にはいた。


https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220416-OYT1T50057/
公益財団法人・新宮霊園(福岡県新宮町立花口)は、園内に前方後円墳型の墓を建設した=写真=。3100人分のスペースがあり、16日に販売を開始する。

 全長53メートル、高さ3・5メートルで、1人当たりのスペースは30センチ四方。生前に場所を選んで購入することができ、地下に遺骨を納める。1人分の価格は28万円で、埋葬時に5万5000円の永久管理費が必要。合わせて1620人分の樹木葬エリアも整備し、販売を始める。

 同霊園では「安らぎと格調のある、進化する霊園づくりを進めていきたい」としている。

 問い合わせは同霊園(092・963・0918)へ。






それもだ、前方後円墳の自分の石室以外を売り捌こうという私の一世一代のナイスアイデアさえもとっくに実現されていた。

今回の記事ではナイスアイデアとして、クラウドファウンディングで石室以外を売り捌き、永代供養代ももらい、それを資金のアテとして作るのはどうかということを意気揚々と書こうとしていたわけだ。

しかし、3100人分とは驚いたが。

いや、しかし私は諦めない。
自分だけの石室を持ちたいのだ。

実現可能なプランを考える


まず、古墳を建立するに当たって次の要素を考える必要がある。

1、行政の許可(建立の許可、埋葬の許可)
2、予算
3、土地
4、資金調達
5、1〜4を持って実現可能性の提示

一つずつ、解決していこう。

1、行政の許可(建立の許可、埋葬の許可)


行政に、前方後円墳作るんっすけど、って言っても絶対に相手にされない。
そして、結論から言うと「墓地以外のところに前方後円墳を作って埋葬する」ことはできない。
『埋葬等に関する原則』には以下のように示されている。

(1)  墓地外の埋葬等の禁止
・  埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に行ってはならない。火葬は、火葬場以外の施設で行ってはならない。

つまり、私有地での埋葬は難しい。墓地である必要がある。
「この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう。」と規定されており、実際に「墓地台帳」なる台帳も存在し、その土地が過去に遡って墓地であったかどうかまでわかる仕組みである。

しかし、この法律、実は抜け穴があるのだ。
ポイントは次の2つである。

1、「埋葬」つまり骨を埋めることに対しての規定であること
2、「埋葬」するのが土中、つまり室外とされていること。
3、過去に墓地であった地も「みなし墓地」として利用できる

この上2つのポイントが示すことは、「骨を埋めなければ」、「室内に安置すれば」法律違反にならないということである。3つ目は後ほど解説する。

どういうことか考えてみよう。
まず、埋葬するということは、下記にように記載されている
第2条 この法律で「埋葬」とは、死体(妊娠四箇月以上の死胎を含む。以下同じ。)を土中に葬ることをいう。

つまり「土中」に入れることが埋葬なのであって、それ以外は法的には、少なくとも埋葬ではない。
これは、よくよく考えてみれば当たり前で、火葬した後のお骨をしばらく仏壇の前に慣習的に安置されることがある。なんなら最近は骨をダイヤモンドに作り替えてアクセサリーにして持ち歩いたりされているし、これはもちろん法律違反にはならない。同様に、海に散骨するのも埋葬には当たらない。
本当にどうでもいいが、ちなみにうちの兄は父が亡くなったら宇宙葬(大気圏に骨を打ちあげる)にすると言い張っているが、これも埋葬には当たらない。

次のポイント、土中であり室外であることが埋葬にあたるため、室内に安置することは埋葬に当たらない。

つまり、この2つのポイントを掛け合わせると、
前方後円墳を作り、その周囲を建物で取り囲み、室内(土中にあらず)に遺骨を安置すれば、墓とは認められず、また埋葬とも認められず、永久に置いておくことができる

ので、ある。

さらに、3つ目のポイントについてはおまけだが、過去に墓地であった土地は「みなし墓地」として、周囲が墓地でない場合、すなわち人の家の庭に法律ができた昭和23年より前に遡ってあった場合に、継続的に墓地として使用することができるのだが、これを利用して他人の墓に合祀してもらう方法がある。その場合(その家人が許可して)、土地さえ買えばそこに前方後円墳を作って、言うところの埋葬までできるのだ。

というわけで、個人が墓地以外のところに前方後円墳を作りそれを墓として運用することは法的に可能そうである。
次の問題を見てみよう。

2、予算


何をするにも世の中、金である。資本主義社会を生きる私たちには重要なことだ。
まずは、前方後円墳を作るのにいくらくらいかかるか知っておかねばならない。

そして、世の中同じことを考える人たちがたくさんいるもので、すでに前方後円墳をもし今作ったら?と言う試算をした企業がある。大林組である。

現代技術と古代技術による仁徳天皇陵の建設

https://www.obayashi.co.jp/kikan_obayashi/upload/img/020_IDEA.pdf

URLをご覧いただけただろうか。
<総工費> 現代工法: 20億円/ 古代工法: 796億円(詳細の見積り表あり)

である。
もちろん、これは埴輪を含んだ仁徳天皇陵サイズを作る際の費用なので、個人の墳墓としてあまりに大きすぎる。
JRネットによると、全長486mの前方後円墳で、周囲の三重の濠を含めると面積は46万4000平方m余り。甲子園球場が12個入る大きさである

甲子園球場1個分でもちょっと個人の墓にしてはデカすぎるが、夢はでっかくそれくらいの大きさに設定すると、1.6億円である。何かで一山当てたら意外とすぐ建立できそうである。



しかし、そもそも後で述べる資金調達の問題が解決しない限りは甲子園球場1個分も厳しい。
ここはもっと現実的な大きさを検討していきたい。

後編へ続く

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