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理想の肉体美 仁王像

 2018年の夏に鴨ノスのツアーガイドになったtakeです。男ですから「遊郭」には興味はありましたが,ガイドになるまでは神社や寺院には行ったこともありません。そんな私がガイドする内容に真実味を持たせたくて,自分から寺社に行くようになりました。
 仏教には《すべてのもの(こと)は移ろいゆくのだから,執着するに値しない》という考えがありますが,その通り。人は変わります。寺社に行って写真を撮ったり,疑問が湧いたら質問したりするなんて,4年前までは夢にも思いませんでした。
 さて,ナイトツアーでご案内する,すすきの中央寺の仁王像。初めて見たときに強い衝撃を受けました。今でも見るたびに「理想の肉体だな」と感心します。仁王像は修学旅行で奈良の東大寺で見たくらいですから,珍しいものなのだろうと思い込んでいましたが,意外にも札幌とその近郊にいくつもの仁王像があることを知りました。最近は積極的に写真を撮りに行っています。今回はそのいくつかを紹介します。

中央寺 「あ」

中央寺の仁王像「阿形(あぎょう)」  息を吐いて敵を威嚇します

 まずは中央寺(曹洞宗)の仁王像。山崎長吉『さっぽろ 市電の旅』によると1991(平成3)年に仁王門とともに作られたそうです。像の表面がつやつやしています。
 仁王は2体が対なので二王=仁王と呼ばれるようになったそうですが,正式には金剛力士です。お釈迦様のもともとの教えには,人を超絶する存在は登場しません。ところが,インドの人々は古くから多くの神(あるいは神に類する人を超絶した存在)を信仰してきました。それらがいろいろな形で仏教の中に入ったのです。金剛力士もその1つで,仏教の教えを敵から守る存在です。そこでお寺の入り口にいるわけです。

日登寺 うん

日登寺の仁王像「吽形(うんぎょう)」  口を結び敵をにらみつけます

 私が住む札幌市西区にも仁王像があります。日登寺(日蓮宗)です。日登寺の起源は明治8年に琴似に作られたお堂ですから,札幌市ではたいへん古いお寺です。
 ところが,こちらの仁王像はもともとお寺のために作られたものではないとのことです。個人の芸術愛好家が自分の美術館のために作ってもらったもので,その美術館を閉館するときに,縁あって日登寺に譲られてきました。1966(昭和41)年のことです。日登寺に来てから赤く塗られたそうです。高さはおよそ4.5メートルあります。
 檀家ではありませんが日登寺の境内には何度か訪れています。あるとき庭の除草をしている方に話かけたら,その方が住職さんでした。いくつか質問をしたら「先代の住職が書いた『日登寺百年史』があるから,貸しますよ」と貴重な本を快く貸していただきました。地域の歴史を知るのに大変参考になりました。この場を借りてお礼を申し上げます。

大覚寺 うん

大覚寺の仁王像「吽形」

 次は苗穂の大覚寺(曹洞宗)です。こちらは仁王門が北海道最大級とのことです(タイトルの写真をご覧ください)。仁王像について詳しいことは調べておりませんが,朱色が印象的です。また境内には豊川稲荷もあり,さらに調べてみたいお寺です。

祥龍寺 あ

祥龍寺の仁王像「阿形」

 2020年は鴨ノスのガイドツアーがありませんので,休日に歴史の痕跡を探すべく健康維持を兼ねて散歩をしています。手稲区の国道5号線の旧道を歩いていて偶然出会ったのが祥龍寺(曹洞宗)の仁王像です。仁王門のそばにあった説明によると作られたのは2003(平成15)年。その割には古く見えます。ガラスに守られていないので,風雪にさらされているからでしょうか。

 現実世界の男に飽きてしまった貴女。理想の男を探しにお寺に行ってみませんか。仁王像はお寺ごとに表情,筋肉,色などが少しずつ違っていて,《理想の肉体美》の見本市のようです。           (文 take)

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