僕らの求める孤独の話をしよう

 独りになりたい、と最近すごい思う。

 誰とも接せず、誰とも話さず、コンビニとスーパーにしか行かない生活。スイッチやプレステを飽きるまでやって、疲れたら寝てしまう。それができたらどれだけいいか。

 しかし、現実はそうはいかない。

 僕らはどうしても社会で生きているから。なかなか独りで好きなことをやりつづけるのは難しいものだ。

 カクヨムから書籍化されたSFに、『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』という作品がある。

『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』

 僕らが生きてる時代よりも少し先の未来のゲームについてレビューするブログ形式の作品だ。作者の既存のゲームクロニクルと技術を基に描かれる未来はとてもリアリティがあり、本当にこんなゲームがあるかもしれないと思わせる。

 本作の魅力は、架空のゲームを中心とした連作短編でありながら、ブログを書いている主人公の人生を描いたものであることだ。

 さまざまなゲームと関わりながらも主人公の人生は進んでいく。読み進めていくと、彼は幼少期からゲームが好きで、だからこそ大人になるにつれて孤独になっていってることがわかる。

 もちろん、彼にもゲームでつながる仲間がいたんだけども。それらは過去のことだったり、その仲間が心理的成長の結果、ゲームから離れたり、仲間だと思っていたものが虚構であったと思い知らされてしまう。

 本作の短編集はなにかしらの主人公の喪失を描いているんです。

 そして、クライマックスで主人公はある危機に遭遇するんですが。ここで彼が孤独であるがゆえに誰とも相談できず、だからこそ彼のアイデンティティさえも奪われかねない事態となる。はたして、彼の運命やいかに。

 好きなものを突き詰めようとすると孤独にいきつく。これはよくあることだ。同じくVRゲームを題材にしたライトノベルではよくあることだ。『オーバーロード』の主人公は序盤はオンラインゲームの最期を一人で過ごすことがはじまりだ。『ソードアートオンライン』のキリトくんも強さゆえにソロプレイヤーをやっていた。

オーバーロード』
『ソードアートオンライン』

 孤独である、という境遇からの共感を得た上で、そんな彼にも仲間ができるという喜劇がはじまる。

 ちなみに、『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』を読んだ後は『モノクロームサイダー』がオススメです。こちらもゲームを題材にしたカクヨムで連載されていた作品だ。なんとこっちの主人公には可愛い彼女がいる。

『モノクロームサイダー』

 読み比べると性格も似ててさ。だからこそ、彼女との間である事件が起きてしまう。しかし、二人は結婚することは物語の最初で明かされてるんですよね。レトロゲームを題材にした面白い作品です。

 ようは同じものを好きでいる人で一緒になれたら幸せだけど。じっさいは細かいとこで違ったりする。そういうとこも理解しあいましょうみたいなはなしでさ。青春が描けてるんだね。

 ただ、そうもいかないからさ。好きでい続けるって難しいんだよね。

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