死ぬ前のセミの鳴き声は美しかったか
夏の夜空、星はまだだ。
夕焼けと夜が混ざり合った。
何かをした帰り道。
自転車を走らせ家に着いた。
団地の中に入り、郵便受けを確認して、3階の自分の家まで帰ろうとした直後。階段のそばに横たわったセミの死骸。
ああ、もう夏が終わるんだなと思いながら、その死骸を通り過ぎれば、背に放たれたジリジリという鳴き声。
生きていたのか、という驚きで振り返るも。彼はすぐに鳴きやんだ。
セミは3日で死ぬ。話によると、それは嘘で。
人間につかまり、観察されると、そのストレスで三日で死んでしまうというのが真実らしい。ただ、そうはいってもセミが短い寿命をもった生物であることは確かなのだけれども。
セミは夏の風物詩だ。日本ではどこもかしこも夏になれば鳴いている。
そして夏とともに消えていく。
そのことを疑問に思うことはあまりないし。僕らは毎日気にもとめたりしない。べつに命のはかなさを語りわけじゃない。そういうものだという話だ。
セミの鳴き声とはセミの鳴き声以外の何物でもない。どんな時にどんな場面であっても。それは当たり前のことだ。
彼らはなぜ鳴くか。それは交尾のためらしい。セミは繁殖のために雄が雌を呼ぶために鳴いている。そこに寂莫感や情緒があるかは疑問だ。
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