異世界転生ものを読んで思うこと。ブレない者に対する魅力

 今日は朝からずっと本を読んでいた。

 とは言ったものの、難しい本を読んでいたわけではない。
 主に読んでいたのはライトノベルの類だ。 

 『スライム倒して300年』『私、能力は平均値でって言ったよね』『佐々木とピーちゃん』。

 いわゆる異世界ものだ。

 主な展開は普通の人間がある日、特殊な能力をもって異世界に転生、あるいは転移する。こうした作品は主人公が以上に強い力で他者を圧倒する「俺TUEE」が物語として単調なんじゃないかと揶揄されることが多い。

 ただ、実際にいろいろ読んでみると「俺TUEE」と一口に言ってもいろいろある。主人公の身体能力が高いとか、魔法が使えるとかあるわけなのだが。そのうえで彼らに対立する障害や敵は、そのうえで主人公より強い能力を持つものもいれば、戦いよりも複雑な問題に立ち向かわなければいけないものもいる。

 単純に全能感に満たされるようなドラック的なストーリではない。むしろ、全能感に溺れているものほど痛い目を見ることを強調した展開もしばしばある。

 戦いにおいて勝利を収められるからこそ。また戦闘とは別種の課題が立ちはだかる。それをどう乗り越えるのか。主人公の選択や決断が気になってページをめくることがしばしばだ。

 そして、こうした作品は総じて長い。中には20巻以上超えている作品もある。同じような作品を自分が書くとするとどこまで書けるだろうと気が遠くなる。

 自分は今書いているエデンプロジェクトが10万文字を超えているが。それが書店で並んでいる作品からしたら1巻分の要領でしかないという事実に愕然することがある。しかも、アニメ化が決まった『私、能力は平均値でって言ったよね』のFUNAさんや『スライム倒して300年』の森田季節さんは週1のペースで小説家になろうで連載している。

 しかもそれが一部の作家の話じゃない。何百という作家が、毎週、あるいは毎日物語を執筆して更新しているんだ。正気の沙汰じゃない。

 こうした作品たちのなかで、ランキングの上位にのぼったものが書籍化までこぎつける。書籍化される作品をいくつか読んでいて思うのが主人公のブレなさだろう。

 当たり前の話ではあるけども、主人公の目的がブレない作品はわかりやすいうえに面白い。

 異世界ものというのは、ただ主人公を活躍させればいいというものではない。主人公には目的があり、その目的は何度も読者の前に提示される。

 主人公はこんな過去がある、こういう性格であるというのを何度も重ねたうえで、だからこそこうしたいという目標というのを定期的に読者にわかるようにしている。

 それは仲間に向って言うこともあれば、心理描写という形で描かれる。そのうえで、その目標に到達する。あるいは近づいて行っている。

 これを何十万文字も重ねていく。

 これがなかなかできないよな~、と思いながら読み進めていた。

 目標に一歩ずつ近づき、最後にはそこに到達する。
 映画やドラマでは、よっぽど複雑なものでない限りその形がとられる。  
 しかし、実際問題はなかなか初志貫徹ができる人間はなかなかいない。

 大体の場合、どこかでブレる。不意のアクシデントだったり、気持ち次第で。そして、本人は目的がブレたことに気づかなかったりする。

 ブレず、芯がしっかりとした人間というのはどんな時でも読んでいて面白いものだと思う。フィクションであれ、現実であれ。


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