vinyl letter




お元気ですか、と書き出せない理由が、僕があなたから見放された理由なのかもしれません

あなたは僕を見放したとは思っていないだろうし
僕も頭ではそんな風に思っていません

でも、心ではそう思ってしまうのです


リュックサックにカーネーションを刺した男の人を眺めあなたのことを思い出して泣いた


しばらく涙を流していなかった

自分をみつめることをやめたのではなく
離陸すべき地のない風の中では飛ぶことができないから
だけど凪にしずかな海面のわずか1cm下はどろどろと赤く、変わらず赤く染まっています

今の僕をあなたが見たら、なんて言うのですか

水の中に手を入れずとも、あのときみたいに僕を見抜いてくれますか?

でもあなたが僕に言ったように、あなたはスーパーマンではなかったし、あたりまえに区切られた生活があって、あなたは、あなたでした

僕はそういうあまりにも、あまりにも初歩的なことがわからなくなるくらい、
あなたのことを、お母さんと思ってた

とても深いところで、ほんとうに、そう思いこんでいた

これを読んでいるのなら電話して欲しい

一瞬でいいから不安から逃れて、嘘でいいからやさしさに包まれて、泥のように眠りたい

心からそうねがうのです





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