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15年かかりました。

(2024/04/16記)

 来月、再来月と叢書の新刊が続く。15年かかったが、ついに10冊を迎えることになる。

 学生時代から恋い焦がれ、目指し続けた中央公論社の「叢書国際環境」に冊数で並ぶ。

 水本義彦、多湖淳、待鳥聡史、春名展生、白鳥潤一郎、若月秀和、高橋和宏、東島雅昌…。よくぞこれほどの書き手が筆を寄せてくれたものだと思う。

 いまだにどれを読んでも面白い。編集者冥利に尽きる。

 今でも君塚直隆さんがゲスト講師を務めた細谷雄一さんの学部ゼミの懇親会で若月さんに執筆依頼をした時のことや、

 水本さんに叢書のタイトルが「21世紀の国際環境と日本」であることを伝えたら「私の研究は21世紀でも日本でもありませんけど!」と驚かれたことをありありと思い出す。

 最初のコンセプトを固めるときに相談したのは、細谷さんと宮城大蔵さん。あれはかずさアカデミアアークの国際政治学会だったから、2006年か…。

 その後、奈良岡聰智さんも交えて謀議をめぐらしたが、その会場となった丸の内の店はコロナのあいだになくなってしまった。

 人の世に何があろうと、橋の下を水は流れるのだ。

 中国の政治体制について執筆していただくことになったのが加茂具樹さん、アメリカ政治について執筆をお願いしていたのが中山俊宏さん。

 中山さん亡きあと、まったく別の切り口でアメリカを描いていただこうと思っているのはTさん。

 海の中国を書いてほしくて、叢書初の女性筆者を期待しているMさんとは、このところご無沙汰だが、けして忘れることはない。

 来月は尾身悠一郎さんの『国際経済と冷戦の変容――カーター政権と危機の1979年』、再来月は鶴岡路人さんの『模索するNATO――米欧同盟の実像』をお届けする。

 まったく偶然なのだが、尾身作品は白鳥作品、高橋作品と、鶴岡作品は水本作品、多湖作品と強く響きあう。

 歴史は並べて読むと味わいを増すことが多い。

 たとえば私がお手伝いした作品だと、石田憲さん『ファシストの戦争』、三宅正樹さん『近代ユーラシア外交史論集』、田嶋信雄さん『ドイツ外交と東アジア』、服部聡さん『松岡外交』を一緒に読むのはとても楽しい。

 その意味で、本叢書は読書の玄人に喜んでもらえるラインナップになったと自信を持って言える。

 私の編集者人生にとってもエポックとなるだろう。

 ただ、その瞬間を、五百旗頭真さんに見届けていただけないことだけは無念でならない。

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