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読みたい論文、読めない論文

(2018/02/14記)

 有難いことに、読んで欲しいと原稿や論文を送っていただくことが増えた。一〇年前なら考えられないことだ。最近では抜き刷りが減り、メールに添付でデータが送られてくるケースが多い。

 刊行予定が立て込み、何本もゲラが併走すると、申し訳ないが不急の原稿読みは後まわしになる。なかなか手が回らず、半年以上お待たせしまうことも少なくない。心苦しいが浅学非才の上、身体は一つ。今のところは状況の改善は見込めない。重ねてお詫びする。

 公募の〆切が迫っているのだろうか。業績に挙げたいので一週間以内に結論が欲しい、出来れば刊行証明も、などとせっつかれることもあり、そう言われると、厳しい就活事情を思ってこちらまで焦ってしまう。

 そんなときは、二股でも三股でもいいから、他社にも話をするよう勧める。実際、他社で決まりました、といわれたことは何度もあって、寂しい気持ちにはなるが、それで有為の研究者が世に現れるきっかけを得られるなら仕方のないことだ。もちろん千倉書房には千倉書房の企画決定ルールがあって、それを曲げるわけにはいかないという事情もある。

 いや、話題がそれた。論文を送っていただく話をしていたのだった。

 さて、それは有難いのだが、最近、送られてきたファイルに鍵がかかっていることがあって閉口する。このところやたらと増えた気がする。

 未定稿だから、という気持ちはお察しするが、ご丁寧に「パスワードは次のメールで」などと書かれると、編集者に読ませるのに、そこまで警戒する理由は何だろうかと訝しく思ってしまう。

 編集者からどこかよそに、自分だけの画期的なアイデアが漏れると思うのだろうか。大した自負心だが、そんなことはあり得ない。はっきり言うが「人に読んでもらう気があるのか」と思う。

 あれもこれも読まなければならないとき、いただいたメールから添付ファイルだけPCのデスクトップにコピーしておき、ちょっとしたブレイクの折、そうだ、読んでみよう、と勢い込んでクリックしたらパスワードの入力を求められる。想像しただけでガックリこないだろうか。

 そんなに暇じゃないぞ、編集者。

 わざわざ勢いを付けて立ち上がろうとした頭をいきなりパチンとひっぱたかれた感じになる。残念だが、そのあと私はパスワードの記されたメールを探す気持ちにならない。

 そんなこんなで、もう数日デスクトップに置きっぱなしの論文があるのだが、さてさて、どうしたモノやら(苦笑)。

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