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2022年の総括

(2022/12/30記)

 2022年、販売額、販売冊数いずれも前年度を上まわる成績だった当社も、取次通し、つまり一般市場での売上金額では久々のマイナスを記録してしまいました。

 コロナ禍に入っても、全ての数字で前年度比プラスを続けていただけに、ちょっと全身から力が抜けるような無念さ、敗北感があります。

 正直、数字上は秋口から危機感がありました。しかし、刊行点数が落ちているわけでも、重版がかからないわけでも、広告や販売展開に遺漏があるわけでもなく、ただただ書店の店頭で本が売れないだけなので、急な対処が出来なかったというのが正直な印象です。

 これまでと何が違うわけではない、これまでと同じように努力を重ねてきた、それでこのマイナスという成績には危機感がつのります。

 斯界の友人たちに話を聞いても、各社同じような傾向、下げ幅で、これまでと同じことをやっているだけではダメだ、というのが共通認識です。

 先だって、当社の編集会議でも日販の店頭売り上げ前年比の話になって、前年より売上が10%ダウンする市場って何だよ、という軽いパニックに。

 11月に日経新聞に出たトーハンの4~9月期連結決算の記事には「売上高は10%減」「書籍、雑誌など全商品種別で減収」「コミックの売上高は……前年同期間から12%減」といった文言が並び、コミックが12%なら学術書は何%減だったんだ!? と仲間ウチで話題になりました。

 おおよそ2022年は2021年よりも10%書籍の実売が落ちたという認識だったので、先日出た『出版月報』(出版科学研究所、2022年12月号)が雑誌と書籍の合計ながら、前年比約6.6%減と推計していたのはどう捉えたモノか判断に迷います。

 しばらく前にも書いたように、大学生協での教科書販売は完全に元の木阿弥状態です。春採用では180冊送って152冊返品、秋学期も15冊送って12冊返品などという学校が散見されました。

 各大学とも徐々に対面授業に復し、リモートについても自宅で独習する緊張感が薄れたことで、ここ二年の堅調な教科書販売を下支えした「教科書がないと不安」という心理が働かなくなりました。

 もう一つ。今の大学生は当人も親も極めて可処分所得が小さくなっています。教科書を買うゆとりすらない学生の増加が無視できなくなってきました。

 シラバスに「プリントを配布するので教科書不要」と書いてある講義を選んで取る学生がいる、というツイートを見て私も取材しましたが、かなりシリアスな問題だと感じています。

 先ほど取り上げた『出版月報』では「電子出版市場も伸び率が鈍化傾向にあり、紙と電子を合計した市場でもマイナス」といった指摘もされており、電子化も先々の明るい対応策という訳ではなさそうです。

 ネットニュースが表題を「巣ごもり需要の終息をどう乗り越えるか?」としたのは、やや問題を狭く捉えているきらいがあって、実際問題、コロナにインフレが加わって俄然苦しくなった日常生活のなかに、再び教養書・学術書を呼び戻すのは容易なことではなさそうな気がしています。

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