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第10回神谷学芸賞発表

(2022/11/20記)

1 口上

 本来、第10回神谷学芸賞は今年(2022年)7月に発表されているはずのものです。しかし2021年の後半に本格化した父の介護は非常に辛く厳しいもので、全般的な読書量の低下と選評などの執筆に時間を割くことが難しい状況を招来しました。

 今までも「管見の及ぶ範囲」「見落としの多い」と言い訳ばかりしてきました。とはいえ、あまりにも遺漏が多いようでは著者や読者に失礼です。遊びだからこそ、しっかり読んでしっかり書きたい、そうあるべきだと考えてきましたので、もうアップは止め、フェードアウトするつもりでした。

 ところが恐ろしいことに、「今年はどうなっている」とお声がけくださる方がいるのです。数は多くありませんが後を絶ちませんでした。言葉を濁し、ムニャムニャと問答を逃れた私が、ようやくそれを忘れた頃、別の刺客が突然目の前に現れて「賞はどうなっている」と刃を突きつけるのです(苦笑)。

 簡単な読書メモはあります。だから書籍を並べることは出来ます。でも今年は選評めいたことは基本的にナシです。そこまできちんと読めている自信がありません。その点、ご寛恕を乞います。

2 政治・経済部門

◆候補作品

 諸橋英一『第一次世界大戦と日本の総力戦政策』(慶應義塾大学出版会)2021/05

 内田康文『医事法と患者・医療従事者の権利』(みすず書房)2021/06

 及川智洋『戦後日本の「革新」勢力』(ミネルヴァ書房)2021/06

 高橋伸夫『中国共産党の歴史』(慶應義塾大学出版会)2021/07

 毛里和子『現代中国 内政と外交』(名古屋大学出版会)2021/08

 岩間陽子『核の一九六八年体制と西ドイツ』(有斐閣)2021/08

 吉留公太『ドイツ統一とアメリカ外交』(晃洋書房)2021/08

 寺地功次『アメリカの挫折』(めこん)2021/08

 櫻田大造『対米同盟とは何か』(勁草書房)2021/08

 福嶋亮大『ハロー、ユーラシア』(講談社)2021/09

 上野友也『膨張する安全保障』(明石書店)2021/10

 山口信治『毛沢東の強国化戦略』(慶應義塾大学出版会)2021/10

 佐々木勝『経済学者が語るスポーツの力』(有斐閣)2021/10

 黒田賢治『戦争の記憶と国家』(社会思想社)2021/10

 善教将大『大阪の選択』(有斐閣)2021/11

 小林悠太『分散化時代の政策調整』(大阪大学出版会)2021/11

 持永大『デジタルシルクロード』(日本経済新聞出版)2022/01

 川越修『アンゲラ・メルケルの東ドイツ』(ナカニシヤ出版)2022/01

 渡辺努『物価とは何か』(講談社選書メチエ)2022/01

 渡邊駿『現代アラブ君主制の支配ネットワークと資源分配』(ナカニシヤ出版)2022/02

 加藤絢子『帝国法制秩序と樺太先住民』(九州大学出版会)2022/03

3 社会・風俗部門

◆候補作品

 佐藤彰宣『<趣味>としての戦争』(創元社)2021/06

 野間秀樹『言語 この希望に満ちたもの』(北海道大学出版会)2021/06

 小川公代『ケアの倫理とエンパワメント』(講談社)2021/08

 與那覇潤『平成史』(文藝春秋)2021/08

 雪朱里『「書体」が生まれる』(三省堂)2021/08

 藤本大士『医学とキリスト教』(法政大学出版局)2021/08

 樋口喜昭『日本ローカル放送史』(青弓社)2010/08

 鈴木正崇『女人禁制の人類学』(法蔵館)2021/08

 大川内直子『アイデア資本主義』(実業之日本社)2021/09

 木下浩一『テレビから学んだ時代』(世界思想社)2021/10

 阪井裕一郎『仲人の近代』(青弓社)2021/10

 高橋勅徳『婚活戦略』(中央経済社)2021/10

 君島彩子『観音像とは何か』(青弓社)2021/10

 黒田翔大『電話と文学』(七月社)2021/10

 辻大介『ネット社会と民主主義』(有斐閣)2021/11

 松村一志『エビデンスの社会学』(青土社)2021/11

 小松原織香『当事者は嘘をつく』(筑摩書房)2022/01

 赤羽由起夫『少年犯罪報道と心理主義化の社会学』(晃洋書房)2022/01

 青山太郎『中動態の映像学』(堀之内出版)2022/02

 縄田健吾『暴力と紛争の集団心理』(ちとせプレス)2022/02

 坂口毅『流れゆく者たちのコミュニティ』(ナカニシヤ出版)2022/03

 大尾侑子『地下出版のメディア史』(慶應義塾大学出版会)2022/03

 井谷聡子『<体育会系女子>のポリティクス』(関西大学出版部)2022/03
 

4 歴史・思想部門

◆候補作品

 小野圭司『日本 戦争経済史』(日本経済新聞社)2021/05

 洪郁如『誰の日本時代』(法政大学出版会)2021/06

 広井良典『無と意識の人類史』(東洋経済新報社)2021/06

 渡辺浩『明治革命・性・文明』(東京大学出版会)2021/06

 高村聰史『〈軍港都市〉横須賀』(吉川弘文館)2021/07

 吉永進一『神智学と仏教』(法蔵館)2021/07

 五味文彦『「一遍聖絵」の世界』(吉川弘文館)2021/07

 江川隆男『残酷と無能力』(月曜社)2021/08

 板垣竜太『北に渡った言語学者』(人文書院)2021/07

 渡辺浩平『第七師団と戦争の記憶』(白水社)2021/08

 池田勇太『武士の時代はどのようにして終わったのか』(清水書院)2021/08

 松原正毅『遊牧の人類史』(岩波書店)2021/08

 宮宅潔『ある地方官吏の生涯』(臨川書店)2021/08

 菅野賢治『「命のヴィザ」言説の虚構』(共和国)2021/08

 森正人『文化地理学講義』(新曜社)2021/09

 岩間一弘『中国料理の世界史』(慶應義塾大学出版会)2021/09

 外岡秀俊『価値変容する世界』(朝日新聞出版)2021/09

 山本志乃『団体旅行の文化史』(創元社)2021/09

 桑野隆『生きることとしてのダイアローグ』(岩波書店)2021/09

 原田昌博『政治的暴力の共和国』(名古屋大学出版会)2021/09

 岩本馨『明暦の大火』(吉川弘文館)2021/09

 田中希生『存在の歴史学』(有志舎)2021/12

 佐々木雄一『リーダーたちの日清戦争』(吉川弘文館)2022/01

 西崎史子『アメリカ外交史』(東京大学出版会)2022/03

 井上正夫『東アジア国際通貨と中世日本』(名古屋大学出版会)2022/03

 松沢裕作『日本近代村落の起源』(岩波書店)2022/05

5 自然・科学部門

◆候補作品

 実重重実『感覚が生物を進化させた』(新曜社)2021/07

 田島木綿子『海獣学者、クジラを解剖する』(山と溪谷社)2021/07

 椿玲未『カイメン』(岩波書店)2021/08

 小谷真吾『自給自足の生態学』(京都大学学術出版会)2021/08

 山本健人『すばらしい人体』(ダイヤモンド社)2021/09

 赤坂甲治『進化生物学』(裳華房)2021/10

 川端裕人『ドードーをめぐる堂々めぐり』(岩波書店)2021/11

 砂川玄志郎『人類冬眠計画』(岩波書店)2022/04

6 文芸・芸術部門

◆候補作品

 林央子『つくる理由』(DU BOOKS)2021/06

 鄭子路『幽玄の美学』(美学出版)2021/08

 大串尚代『立ちどまらない少女たち』(松柏社)2021/09

 澤田精一『光吉夏弥』(岩波書店)2021/10

 本田晃子『都市を上映せよ』(東京大学出版会)2022/01

7 総括

 では、各賞・部門賞を発表します。どれも素晴らしい作品です。未読の方はぜひ折を見て手に取ってみてください。

◆金の神谷賞

 原田昌博『政治的暴力の共和国』(名古屋大学出版会)

◆銀の神谷賞

 小野圭司『日本 戦争経済史』(日本経済新聞社)

◆鋼の神谷賞

 岩間一弘『中国料理の世界史』(慶應義塾大学出版会)

◆政治・経済部門

 諸橋英一『第一次世界大戦と日本の総力戦政策』(慶應義塾大学出版会)
 岩間陽子『核の一九六八年体制と西ドイツ』(有斐閣)
 小林悠太『分散化時代の政策調整』(大阪大学出版会)
 加藤絢子『帝国法制秩序と樺太先住民』(九州大学出版会)

◆社会・風俗部門

 小川公代『ケアの倫理とエンパワメント』(講談社)
 青山太郎『中動態の映像学』(堀之内出版)

◆歴史・思想部門

 板垣竜太『北に渡った言語学者』(人文書院)
 外岡秀俊『価値変容する世界』(朝日新聞出版)
 松沢裕作『日本近代村落の起源』(岩波書店)

◆自然・科学部門

 田島木綿子『海獣学者、クジラを解剖する』(山と溪谷社)
 小谷真吾『自給自足の生態学』(京都大学学術出版会)

 ◆文芸・芸術部門

 林央子『つくる理由』(DU BOOKS)
 本田晃子『都市を上映せよ』(東京大学出版会)

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