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微妙な散財(苦笑)

(2020/11/30記)

 伊藤之雄さんの新著をお手伝いしている。東久邇宮稔彦の評伝である。しかも前半生! じつに渋い(笑)。

 今回の評伝では、なるべく本文中に写真を入れて欲しいとオーダーがあり、ネット古書店を通じて全国から東久邇宮関連の写真資料を集めている。

 すでにかなりの数に上るのだが「これは!」と思って入手した和歌山懸師範學校附屬小學校編『東久邇宮殿下御台臨記念 光榮の日を偲びて』(非売品)と、金沢第二警防団の「昭和十七年五月二十九日 東久邇宮殿下御台覧記念写真」にはすっかり騙された。

 前者は、学校関係者の寄稿もあるものの、基本的には小学生の作文集で、この時期、宮が訪問した各地の記念誌と全く異なり、ただの一枚も写真が入っていなかった(当日の写真が入っていない記念文集はかなり珍しい)。

 付言すると、和歌山懸師範學校附屬小學校とは、後の和歌山大学教育学部附属小学校であり、名字と地番を見ると、明らかに私の高校時代の先輩、同級、後輩たちのご係累、ご縁戚と思われる方たちが登場していて、別の意味で読みごたえがある。

 それだけに写真がないのが残念だ。まさか心のホームタウン和歌山に裏切られるとは(笑)。

 後者は、本当に宮さまが消防訓練をご覧になった後の記念写真だった。

 宮さまどころか背広姿の人物さえ写っておらず、消防車と纏の前で、諸肌脱ぐか警防団の名入り法被を着た、二〇人ほどのあんちゃんたちが腕を組んだり肩を組んだりしながらカメラを見据えている。

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 おそらく一世一代の晴れ舞台だったのだろう。緊張感から解放され、ものすごくやり遂げた感のあるドヤ顔が腹立たしい(笑)。折角の機会なんだから宮と一緒に撮ってもらえよ!

 ともあれ、すったもんだの末、長いパリ遊学から帰国し、その後は皇族として陸軍軍人として割とこまめに全国をまわるようになり、この時期にしては写真を撮られる機会に恵まれていた宮だけに、よもやちっとも宮の姿がない資料に当たってしまうとは思わなかった。

 現物を手にして買うわけではないのでネット古書店の宿命としか言い様がないが、文集には(写真なし)、写真には(宮さまは写っていません)と注意書きがあったらなぁ、と思わなくもない。

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