浅はかなもの

「ははは、突っ込み過ぎだ、バカな奴」

レーダーを確認する。
僚機だと思われる迎撃型の機体を振り切って引き離し、青頭の機体一機だけと対峙する形まで持ち込んだ。ここまで離れてしまえばミサイルを使おうがすぐには反撃が来ない。
そもそも、迎撃型はこちらが手をださなければ殆ど攻撃出来ないのだから振りきるのは容易いのだ。
自分に追いすがって来た青頭はそこそこに高速機だが、その高速がこの場では仇になる。
逃げながら粒子爆雷を落とす――海に落ちたそれは爆発し飛沫と粒子が追いすがってきた青頭を捉える。予測しきれていなかっただろう爆風と粒子混じりの飛沫に機体の動きが鈍くなったのを見計らって、エレクトロフィールドを射出する。辺り一帯に電磁の網が広がるのを確認しながら、鈍くなった青頭に一気に迫る――!

「いただきだァ!」

視認出来る程に接近をすれば機体の腕を振り下ろし、青頭の操縦棺のハッチを掴んで引き剥がす。

バキッ、メキメキッ……!

鹵獲する中でもテイマーの顔を拝めるこの瞬間が好きでたまらない。今度のテイマーはどんな顔をしているのだろうか。
自らのハッチを開き、その顔を拝もうとする――

「あ?」

――が、その瞬間に目の前がひび割れた。正確には、ヘルメットのバイザー部にに銃弾がめり込んでいる。

パァン!

しかし、それを認識するよりもはやく続けざまに放たれた銃弾がハイザーを砕いて、顔面に穴をあける。
そして、痛みに苦しむまま粉塵を吸い込み程なくして絶命した。
ハッチが半分ほど剥がされた操縦棺には、銃を構えている青頭のテイマー――ネグロの姿があった。

「見え見えなんだよ。……昔に、よくやってたからな」

倒れた相手テイマーを一瞥してネグロは手にしていた銃をグローブボックスに放り込んだ。

『――ネグロさん、大丈夫?』
「今終わった。すぐ戻る」

僚機の呼び掛けに答えると、組み付いたまま動かなくなった相手の機体を引き剥がす。
一瞬、船に持ち帰ろうかと思ったが使えそうなパーツも見当たらないので、そのまま海へと投げ捨てる。
不自然な動きをしてきた機体が、鹵獲を目的としているのは明白だった。
わかりやすく動きに乗ってやった事にすら気が付かなかったあのテイマーは、どのみち長生きは出来なかっただろう。

「バカな奴」

青頭の機体は、ゆっくりとその海域から離脱した。

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