かっこいい大人の“月9”が帰ってきた! 着こなし術も見事な「SUITS/スーツ」



“月9”「SUITS/スーツ」(フジテレビ系 月曜よる9時~)は人気の海外ドラマが原作。舞台は、日本の四大弁護士事務所に数えられる〈幸村・上杉法律事務所〉。そこに所属する敏腕弁護士・甲斐(織田裕二)と天才的頭脳を持つ若者・大輔(中島裕翔)がひょんなことからバディを組むことに。

勝つためには手段を選ばない甲斐の傍若無人な仕事ぶりに大輔は翻弄されながらも持ち前の頭の良さで切り抜けていく。第4話が終わった時点で意外といい関係性に見えてきている。

■織田裕二×中島裕翔の化学反応

織田裕二は元来ツンデレな役が似合うのだが、彼の代表作「踊る大捜査線」シリーズ(1995年~/フジテレビ系)では血気盛んな若手刑事で、モーガン・フリーマンみたいないかりや長介演じるベテラン刑事から多くのことを学びながら成長していったことを思うと、今回、織田が得意なツンデレキャラのうえ、若い弁護士をからかいながら、そのつもりがあるのかないのか結果的に育てていくことになり、さらには、そのつもりなく若い青年の影響も受けていくというような役を演じることには感慨深いものがある。


「SUITS/スーツ」は、法律に関するリアリティーに重きを置いたものというよりは、異なる価値観をもったふたりの人間のいわゆる化学反応のおもしろさのほうを優先しているドラマだと感じさせ、世代の違う織田裕二と中島裕翔のコンビネーションは制作意図によくハマっている。

ふたりは仕立てのいいスーツを着て(第1話で甲斐に紹介された店で大輔はスーツを作る)、こわだりの時計(第3話に登場したマニファクチュアを誇る老舗メーカーのもの)をはめるなど、なんだかゴージャス。そこも目に楽しく、物を通して、交流していくところもいい。第4話でも高級時計のエピソードが出てきた。

最近、時代に合わせて、ファストファッションのドラマが増えた。そういう身の丈にあった現代日本へのまなざしにあふれたドラマもいいけれど、手に入らないキラキラしたセレブな生活を見せてもらえるのもいいものだ。昔のドラマはそうだった。それこそ「踊る大捜査線」はこだわりのコートや時計を真似して買う人がたくさんいた。

■フジテレビが描くゴージャスな世界

「SUITS/スーツ」のロケ地も銀座や大手町あたりの近年再開発されて巨大なビルが建ってニューヨーク感のある場所を選んでいるようで、スケール感がある。摩天楼の夜景のキラキラ感も「コンフィデンスマンJP」(2018年/フジテレビ系)の頃から意識的に撮影しているように思える。さすがはバブル時代に贅の限りを番組に注いできたフジテレビ。やっぱり得意なところで勝負すると生きる。庶民のドラマはカンテレに任せて、フジテレビはゴージャス、ファット(PHAT)な世界を追求したほうがいい。


現代日本は格差が激しい。ないとこにはないが、あるとこにはあり、IT長者をはじめとしてセレブな人はわんさかいる。小栗旬、石原さとみ主演の「リッチマン、プアウーマン」(2012年/フジテレビ系)などはそこにアプローチして成功した例だ。

織田裕二は最近少なくなった、スケール感にみごとに立ち向かえる俳優のひとりである。中島裕翔がスラッと知性的でそこに追随していく若手感を出していることにも期待値が上がった。彼が演じる大輔が、本来は庶民で、家族の介護資金を得るために、名前の似た弁護士になりすましているという設定も、そこは元祖を踏襲しているとはいえ、親しみがもてる部分となっている。

■憧れるような“かっこよさ”とは?

さて。もうひとり、スケールの大きさに寄与している人物がいる。

「コンフィデンスマンJP」で一躍注目された小手伸也……ではない。彼は彼で作品に寄与しているがここでは置く。

鈴木保奈美だ。

彼女が抜群にかっこいい。


織田裕二との共演で伝説になったドラマ「東京ラブストーリー」(1991年/フジテレビ系)の頃から、彼女は男女雇用機会均等法の時代のアイコンのごとく燦然と孤高の人だった。やや三白眼で鷲鼻の、いわゆるたぬき顔系の愛され女優タイプではないにもかかわらず彼女は高い支持を得た。

「東京ラブストーリー」、「愛という名のもとに」(1992年/フジテレビ系)と、彼女はいつも、男に依存せず、自分で人生を切り拓く役をやっていた。長らく結婚子育てで仕事を控えていたが、近年、じわじわと復活してきて、NHKの「足尾から来た女」(2014年)の社会主義運動家だとか、現在放送中の「主婦カツ!」などの活動的な主婦など、やっぱり強くて、周囲を引っ張っていく女性の役が多い。

「SUITS/スーツ」で演じている弁護士事務所の代表弁護士・チカは最たるもの。ウエーブのかかったショートヘアで、高価そうなファッションに身を包み、堂々としている。

弁護士事務所の代表弁護士とはいえ、カチッとしていず、あえてフェミニンな柔らかさを感じる素材のブラウスを着て、しかも袖がシースルーで、二の腕をむき出しではなく、さりげに見せる技あり感。とにかくどこから見ても余裕を感じる。チカは、マイペースな甲斐に手を焼きつつ泳がしている、そこも懐が深い。

第4話で、背の高いビル群を背景に、甲斐演じる織田裕二と並んで話をしている場面は、かっこよかった。衣裳も小物も素敵で。ミステリアスな私生活は、バツイチ(相手はかなり大物)であったことが第4話でわかる。


“かっこいい大人に憧れる”ことは大事である。悩める若者を演じてスターになった織田裕二も鈴木保奈美も、歳月を経てかっこいい大人になった。彼らと同じ世代にとっては彼らが現役でキラキラ堂々としていることが嬉しい。そして、中島裕翔のような若い世代も彼らにきっと憧れる。

出演者に憧れるドラマが帰って来た。

dmenuTV2018年10月30日公開


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