“占い”で喝! 痛快ドラマ「ハケン占い師アタル」



木曜よる9時、「ハケン占い師アタル」(テレビ朝日)が痛快だ。タイトルを見れば、占いが関係する話だとすぐわかるが、アタル(杉咲花)は、いわゆる「今日のラッキーカラーはこれ」、「ラッキーアイテムはこれ」というような占いは一切言わない。

アタルはふだん、イベント会社、シンシアイベンツのDチームで派遣社員として働いていて、占いができることは伏せているが、同僚が抱える問題が大きくなると、「わかりました。あなたを見ます」と言って占ってくれる。アタルの占いは、居合抜きのように鋭く、ごちゃごちゃ言わない。一言で本質を言い当てるのだ。さらに、本人が抱える悩みの根本をアタルは突き止め、良い方向へと導いていく。

第1話から本作は、口当たりのいい占いによって救われる話ではなく、耳の痛いことを指摘され、変わる努力をしなければ現状打破できないことを描いていた。そう言った部分から「爽快」や「愉快」というよりも、「痛快」という言葉がピッタリなドラマだ。痛みを伴いつつも、気持ちよさを感じるアタルの言葉に視聴者も救われているのだろう。

■「アタル」のおもしろさとは?

第1話では、パワーストーンを身につけ、日々、占いにしばられ、自分に自信のない神田(志田未来)がアタルの洗礼を受けた。占いに頼らず、自身を深く見つめ直し、人生の問題を解決するきっかけを得た神田に続き、アタルの同僚、目黒(間宮祥太朗)、品川(志尊淳)、田端(野波麻帆)が次々とアタルの言葉に救われていく。パワハラまがいで誰にでも厳しい上司、上野(小澤征悦)もじつは悩みを抱えていて、アタルに救われた一人だ。それぞれが問題を解決していくことで、チームの結束も強まっていく。登場人物たちは視聴者の分身ともいえ、抱えている悩みは身近に感じられるように思う。

仕事やプライベートのなかにある彼らの悩みは、とても一般的で誰もが思い当たるものとして描かれる。日々のルーチンワークのなかでは穏やかで可愛らしいアタルだが、占いのときだけそんな悩みの本質をずばずばと厳しい口調で突いていく。そんな個性豊かなキャラクターも魅力やおもしろさのひとつだ。

■アタルVS母

杉咲花が、アタルのギャップをうまく演じている。とても小柄な彼女ながら、ただ者じゃない感を漂わせ、相手の生き方に意見するときの、言葉がひとつひとつ粒立ってよくわかる。映画『十二人の死にたい子どもたち』で演じた弁の立つ少女も見事だった。


2月21日に放送された第6話は、Dチームの課長、大崎(板谷由夏)にフィーチャー。彼女は、上司と部下の間で悩む、いわば中間管理職的立場。部下のリストラを命じられて思い悩み、自殺しようとした矢先、キズナ(若村麻由美)の言葉に救われたと思っていた大崎だったが、アタルにキズナが語ったことを言い当てられ、これが弱者からお金を稼ぐ方法なのだと、その真相を聞かされる。そして、このキズナこそ、アタルの母親であることが明かされた。

“誰にでも当てはまることを言ってお金を稼ぐ”。認めたくないことではあるが、占いにはよくあることだ。

占いに限らず、世の中にはこういうことがよくあるもの。すっきり解決、ほっこりあたたかいドラマも、要は同じことだったりする。そんなことはわかっているけれどドラマなのだから、という人もいるだろうし、ドラマも現実も境界が淡くなっていく人もいるだろう。そもそも、そんなことはわかったうえで、このドラマを観て、「うん、うん我が意を得たり」と楽しんでいる人も。占いっぽく言えば、みなさんは、どのタイプですか?

■現実に立ち向かわせる脚本

「家政婦のミタ」(2011年/日本テレビ)で、日常に、ふと現れた異物のような人間によって、それまで信じていた価値観を揺さぶる構造の物語を大ヒットさせた脚本家、遊川和彦が本作を手掛け、連続ドラマの演出も初めて担当している。「家政婦のミタ」の後は、NHK連続テレビ小説「純と愛」(2012〜2013年)で厳しい現実を突きつけ、大きな話題を呼んだ。

以降は、現実社会の問題をとりあげながらも、塩梅に気を遣っているような気がする。とりわけ「アタル」は、ここ数年の、現実の厳しさからは逃げず、かつ現代の傷つきやすい視聴者とどうしたら切り結べるか、試行錯誤した末の、ある種の到達点のようにも思える。


第7話では、パワハラまがいの部長、代々木(及川光博)が出世の道を閉ざされ、窮地に立たされる。さらに、ついにアタルの居場所を突き止めたキズナ(若村)が動き始め、今後描かれるであろう周囲を救ってきたアタル(杉咲)と、アタルを取り戻そうとするキズナの母娘対決に期待が高まる。

dmenuTV 2019年2月27日公開

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