「家売るオンナの逆襲」が高視聴率な3つのポイント
水曜よる10時、「家売るオンナの逆襲」(日本テレビ)が人気だ。視聴率も安定している。
人気のポイントは、まず設定。敏腕・不動産業者のサンチーこと三軒家万智(北川景子)が、どんなに売りにくい物件も、あわゆる手を使い、鮮やかに売る様を、おもしろおかしく描いている。キメ台詞は「私に売れない家はない」。家には家、住む人には住む人の個性があって、それぞれにいいところがあることが、誰にでもひっかかりなく伝わってきて楽しめる。
2016年に放送された「家売るオンナ」が好評で実現した第2シリーズでは、さらに安定感が増した。この安定感は、人気のポイントのふたつめでもあり、それはひとえにヒロイン・三軒家万智のキャラクターにある。彼女がとても魅力的だ。
■サンチーのキャラ化とライバル・留守堂の謎
万智は、なんでも徹底的にやる仕事人間。家を売るとき、かなりの美談を語るのだが、それは売るための詭弁であることも少なくなく、さんざん迷ったお客さんが買う気になった瞬間、「落ちた」と心のなかでつぶやくことも心をくすぐる。そう、現代では、美談だけでは物足りない。それには裏があることを、みんなで、うんうんと共有したいのだ。
なんといっても、自分に厳しい彼女は、他人にも厳しく、「GO!」と部下をけしかける。このとき、風がぶわっと吹いて、三軒家万智の髪がなびくのがお約束。北川景子が、この場面ではとりわけそうだが、たいていいつでも、瞬きをせず、常に顔に力を漲らせている。このキャラ造形が見事だ。
第2シリーズで万智は、不動産会社の上司・屋代大(仲村トオル)と結婚していて、妻としての一面が加わり(家事も徹底的にこなし、凝った料理も作るが、仕事を優先して、夫ひとりに食事をさせることも多い)、笑える側面が増えた。第1シリーズは、万智の暗い過去が物語を引っ張っていたが、今回は完全に三軒家万智はキャラクター化し、一話完結ものとして気楽に見られる。
その分、万智を執拗にライバル視するフリーの不動産業者・留守堂謙治(松田翔太)が登場し、その謎で興味を引っ張ったが、第5話で早くも彼の秘密が明かされ、以後は、三軒家万智とゆかいな仲間たちによる一話完結ドラマとして、展開していく。秘密を長く引っ張らなかった潔さも功を奏したといえるだろう。
留守堂の謎は、小学生時代の万智の同級生で、整形、改名して接近していたというもの。これは、その回の家売る問題ともリンクしていた。メイクの盛り過ぎで婚約者の素顔が別人過ぎたことから、お客さんが結婚をためらい、検討していた家が売れなくなりそうで万智が奮闘する。
と思ったら、2月27日放送の第八話で、いったん落ち着いたように見えた留守堂が再び動き出して、びっくり。小学校のときの想い人・万智をやっぱりあきらめきれず愛憎を燃やすところで、《続く》。
確かに、松田翔太を起用しながら、このまま済むわけもなかった。物語の波の付け方、技ありである。
■さまざまな問題を描く脚本力
「家売るオンナの逆襲」の魅力のみっつめは、お客様のそれぞれの問題にある。毎回、とてもビビッドで現代的なテーマが語られる。メイク盛り過ぎ問題をはじめとして、LGBTカップル、ワンオペ育児に悩む妻、ダブル不倫の夫婦、SNSで話題になる問題が、各方面に配慮されて、誰もいやな気持にならないように取り上げられている。その筆のうまさは、昨年、若年性アルツハイマーの主人公と彼女を支える男との感動譚「大恋愛〜僕を忘れる君と」(TBS)を大成功させた。さすがの大石静だ。
ケッサクだったのは、第2話。ネットカフェに暮らす人達をターゲットに家を売る作戦の回で、泉ピン子に、 家のない人間たちの吹き溜まりが必要なのだと語らせる。昭和の時代にはあったコミュニティーが、現代でどのように変わりつつあるか、どちらのやり方がいい悪いではなく、お互いの言い分を吸い上げた秀作。昭和のドラマ、庶民の声代表だった泉ピン子というキャスティングが最高だった。
■AI活用!ゆかいな仲間たちの楽しいサービス
ゆかいな仲間たちは、人の好い・夫の屋代、真面目が取り柄の庭野聖司(工藤阿須加)、ちゃっかりした白洲美加(イモトアヤコ)、イケメン・足立聡(千葉雄大)などなど、好感度の高い人たちばかり。第1シリーズでは、万智にしごかれる白洲美加が人気だったが、第2シリーズでは、留守堂のことを気にする足立がなんだか可愛らしい。
公式LINEではAIを使って、ユーザーがなにか書き込むと、万智、屋代、庭野、足立などが応えてくれるサービスが行われていて、これも人気。AIをSNS に使用するサービスは、「過保護のカホコ」(2017年)の宣伝で、はじめて日テレで行われた。このときは、主人公のみが応答していたが、今回は、複数キャラが応答してきて、楽しい。
なにぶん、開発途上のAIなので、会話がズレているが、放送中に話しかけると、「ドラマ終わるまで待っていてくれないか」というような回答があって面白かった。インスタグラムでは、「白洲美加の逆襲」として白洲美加が63.6千人のフォロワーを誇っている。最近の人気ドラマの傾向としては、キャラ立ちした登場人物がSNSのアカウントを持って情報発信することなので、三軒家万智、白洲美加などは、現代のニーズにふさわしい。
以上、ストーリー、キャラクター、SNS連動、3つがうまく重なり合った結果、「家売るオンナの逆襲」はみごとに成功したのだ。
dmenuTV 2019年2月25日公開
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