平成最後の秋ドラマ総括 ホンモノの熱情と一途さに視聴熱集中!
2018年10月~12月、平成最後の秋ドラマを振り返ると、恋愛ものの復活と「今日から俺は!!」(日本テレビ系)の意外な健闘だったといえる。このふたつ、まったく違う潮流のようで、共通点が見つかった。それは後述するとして、まず、恋愛ものを総括しよう。
■キーマンは男性キャスト!? 恋愛もの復活!
恋愛ものが多いシーズンだった。
若者向けには、十歳差の学生と教師の禁断の恋を描いた漫画を原作にした「中学聖日記」(TBS系)、煮えきらない関係にモヤモヤしている男女を描いたオリジナル「獣になれない私たち」(日本テレビ系)。
大人向けとしては、熟年夫婦がそれぞれ行う不倫の恋を描いた漫画原作の「黄昏流星群~人生折返し、恋をした~」(フジテレビ系)、若年性アルツハイマーにかかった主人公と小説家のオリジナル恋物語「大恋愛~僕を忘れる君と~」(TBS系)など、よりどりみどり。
朝ドラ「まんぷく」(NHK 月~土曜あさ8時~)も主人公夫婦がラブラブである。「獣になれない私たち」は“ラブかもしれないストーリー”というキャッチコピーだったが最終的にちゃんとラブだった。
中でも抜きん出たのは「中学聖日記」と「大恋愛」。視聴率的にはそれほど高くないが、SNSや録画、配信視聴などが活気づき視聴熱は高かった。
「中学聖日記」は最初、中学生(岡田健史)と教師(有村架純)の恋愛なんて見るに堪えないという声が出たが、考えてみたら年齢的に10歳差はそれほどでもない。単に中学生と教師という立場の問題で、中学生が高校生になるとだいぶ嫌悪感も消えていった。なんといっても、中学生役に今回大抜擢された新人・岡田健史の一途さにほだされてしまう視聴者が続出。最終的に、年齢も立場も気にしないピュアな感情は美しいものとなった。
一等盛り上がったのは「大恋愛」。過去、さんざん制作された難病+恋ものだったが、戸田恵梨香演じる、病気に罹った主人公がやたらと野性的でバイタリティーがあり、生と愛を諦めない姿を応援したくなるものだった。
また、なんといっても、相手役のムロツヨシ。「優しくて面白い」という女子が求める彼氏像をみごとに体現し、イケメン王子じゃなくてもいいのだということを見せつけてくれた。
後半戦、同じく若年性アルツハイマーにかかった男性がふたりの仲を邪魔するという趣向もあり、演じる小池徹平が怪しい男を熱演して、ドラマを面白くした。さらに、主人公の母親(草刈民代)と主人公の元婚約者(松岡昌宏)が年の差・結婚してしまうというサプライズ展開まで。病気を決して軽んじているわけではないが、難病ドラマにいろいろ工夫を凝らし、新鮮にアップデートして、毎週、どうなるの~と気になるドラマになった。幸福と悲しみがないまぜの濃密なドラマだった。
■役者が魅せた!おとぎ話的ななかの本物の熱量
こうして見ると、結局、恋愛ものの相手役(男性)がどれだけ女性の心をくすぐるかが最重要ポイントで、どれだけヒロインを好きでいてくれるか、寄り添ってくれるか、その熱量が大事だと感じる。視聴率が毎週20%以上をずっとキープし続けている朝ドラ「まんぷく」も夫・萬平(長谷川博己)はとっても偏屈なのだが、なぜか妻・福子(安藤サクラ)のことを無条件で愛している。夜、並んで寝ているとき、福ちゃんと手をつないだり、優しくしてくれる場面もお楽しみのひとつになっている。いまは、現実と距離をとったおとぎ話的なものが好まれているように、10月期の傾向を見ると思う。
その点「今日から俺は!!」はある意味ファンタジーだ。小学生からバブル世代まで幅広い層の心をつかみ、最終回の視聴率は12%を越え、大河ドラマに接近したこのドラマ、80年代のヤンキー(ツッパリ)を主人公にした人気漫画を、「銀魂」映画化などを手がける福田雄一がドラマ化したもので、ギャグ漫画のとんでもない動きや表情を俳優に肉薄させる福田演出を存分に炸裂、主人公の賀来賢人や伊藤健太郎がとことんおバカを演じてみせた。
3、40年近く前のカルチャーが描かれているのでもはやリアルではなく、男子のあのツンツンした頭、女子のクルクル外に巻いた聖子ちゃんカットは時代劇やSF、ファンタジーの世界と言っていい。でもその髪型が男にとっても女にとっても気合の印、アイデンティティ、主題歌じゃないが「勲章」のようなもので、そういうことにこだわるシンプルな熱さが強烈な求心力だ。そして、漫画キャラの喧嘩や恋に対するこだわりと、俳優たちが漫画になりきろうとするこだわりの熱量がリンクしてスパークした。つまり、舞台や衣裳はおとぎ話だが、気持ちは本物。福田雄一の巧さはここだ。
そう、10月期のキーワードは「熱」「一途」。恋も喧嘩もなんでもひたすらに一途。しかもそれが、現実とはかけ離れた世界を描くテレビドラマを見ている瞬間だけでもホンモノに思える魔法。そういうドラマが人気だった。ドラマ10「昭和元禄落語心中」(NHK)も落語や愛や友情に一途で熱かった。「僕らは奇跡でできている」(カンテレ)もフィールドワークやピリ辛きゅうりに主人公(高橋一生)が熱かった。
「草食系」とか「さとり世代」とか、ドラマのタイトルを借りたら“獣になれない”、そんな日本人が増えているように言われていたが、そろそろ内なるホンモノの熱情が外に出たがっているのではないか。そんなことを思う、平成最後の秋ドラマだった。
dmenuTV2018年12月18日公開
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?