2019.8.14

吉田恭大『光と私語』を読んだ。

アマゾンで腐葉土買えばしばらくは腐葉土の広告のある日々

恋人がすごくはためく服を着て海へ 海へと向かう 電車で

「白いのがひかり、明るいのがさむさ、寒いからもう電車で行くね」

電車は否応なしに人間を目的地へ運んでいく。事故にあったり、不審者にあったり、止まってしまうことはあるけれど、よほどのことがない限り乗客を降ろすことはない。昔なにかの小説で、山手線に乗って一日中本を読む、という場面があって憧れたのだけど、それは特殊な例であって、この歌集ではみんな電車で「行く」し「向かう」。さながら時間の流れのように、明確な意志がなければ降りることのできない電車で人間たちかどこかへ行く。なぜだろう、そこにぼくは乗っていない。銀河鉄道はカムパネルラだけを連れて去っていく。

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