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カミシモ決戦前夜編観劇

芝居、漫才、ライブの総合舞台エンターテイメントである『あいつが上手で下手が僕で決戦前夜編』を見た。

結論は、「アァーッ!コンビソロ公演いくから息長く育てて!!」
(今回は敬称略で失礼します。追記でネタ2本のあらすじ書いておきます。)

Ⅰ陣内が偉すぎる

本シリーズは、荒牧慶彦、和田雅成を軸に、2.5次元俳優(の中でも喋りと笑いを得意とした奇人)を漫才コンビとして配置し、売れない板付き芸人から成功する過程を描かせるもの。
今作ではシーズン1より、天野守(梅津瑞樹)と現多英一(陣内将)のアマゲン、シーズン2より、東雲嵩紀(溝口琢矢)と狭間くらげ(大平峻也)のノノクラゲ、黒旗晩(中尾暢樹、通称バンバン)と千波未明(木津つばさ)のねあんでるの3組で構成。

(著者の偏愛が入るが)荒牧や染谷、トリッピー(?)等の飛び道具がいない中、梅津への負担が大きいのかしら…と業界初心者が勝手に心配していたが、全くそんなことはなかった。バランスもテンポもよく、ドラマ性もある素敵な舞台すぎたので、会場キャパと動員には結果的には疑問符を感じ得ない良品だった。(むしろ集中して見れry)

とりわけ、このようなある種「主役不在」のごった煮ステージでかつ、梅津が演じるのはトリッキーな静かな破天荒な役のため(素の梅津に近いらしいが)、舞台回しにおける陣内の細かな所作がこそ舞台の命運を分けた。
見事にさばききった、だけでなく自身も楽しそうであるのがとても爽やかでよかった。

ストーリー全体から言うと、ねあんでるは、雑誌で言うとジャンプのように熱くある意味固い直線的な役柄であり、ハンドルというよりはガソリンである。
そして前作もだが、ノノクラゲの役は少年サンデーみたいな感じであくまで役としては、二人の相互依存関係がフィーチャーされるべきなため、他の役と絡めにくい。点が線になるための仕掛けが必要だと思った。

そんな中で、陣内の細かな所作は思い出せるだけでも以下があった。
・最初の「配慮」のメタ的説明の際にテンポよく語る梅津の間を埋める(これはあくまでメタなので相手が上手いほど難しいはず)
・実家の紹介の説明的台詞では滑らかに動きながらトーンを落とし説明に徹する
・学生時代の写真が暴露される
・「エッチのストック…!」
・寝かしつけのところでテンポをよくするために何故か木津を優しく速く倒す(逆に木津の良さが出る)

とにかく舞台全体を上から見ているような余裕から、縦横無尽に足りてない要素(テンポ、感情、動き)を埋めていっていた。物語から灰汁を抜き、観客はストーリーに集中しつつも、細かなアドリブに集中できる。


そして何より最後のダンスでは体幹素晴らしく踊りきっていた。先輩としてやるせなさを出してもいいところを何よりフレッシュに踊りきったのだ。

(と思ってゲネプロ動画を見たら、陣内まともに踊ってないぞ…?笑)


ロジカルで無駄のないセリフを好演する梅津相手に、芯の優しさと心の熱さで最後は締めくくる素晴らしい演技だったと思う。


長くなるが、私はハイブリッドイマーシブシアター「同窓会」で陣内を見ている。
劇の特殊性もあるが、今回のような優しく周りが見えてます、みたいな振る舞いじゃなく、理知的に見えて誰よりも実は翻弄されている悲劇的な役目をクールに決めていた。


私は髪型のように陣内の奥深さに「♡」と、感嘆したのであった。


Ⅱ木津は賢いル〇ア


そして目を引いたのが木津つばさである。
これも体験で恐縮だが、仁義なき幕末のときは見事にチンピラを演じており、軽めの役なら最適解であることは理解している。もちろんジャンプ系の主役を張っているのも存じ上げているが、主役系は縛りも多く、直線的な演技以外にもかなりのスキルが求められるだろうし、臨む役者人生を歩めるのか勝手に思案していた。


シーズン2ではそめ…等半端ないパイセンたちが暴れまくっていた中で存在感を残していたが、今回はその演技を軽く超えてきた。上記は外野私の勝手な杞憂であり、非礼を詫びたい(謝罪の角度は90度)。

①客席を見た演技
本舞台での木津の客の感情とリンクしてるのかってくらい客の温度に合わせて舞台上の温度を調節していた。グラブルのル〇アのようにリンクしてるのかって思った。

②緩急のあるツッコミ
漫才はさらによくなっており、巨体でロマンチックなボケに対してギアを切り替え続けながらちゃんと笑いでヒートアップさせていく。また、速度のあるツッコミと、バンバンのドラマへノリツッコミする際には見事に不貞な夫を演じていて、緩急がよかった。

(↑ええ…?笑)

③脚本上の制限
ねあんでるはあまり脚本的に捏ねられてない。コンビ間の課題として、YouTuberから芸人に転身したことによるカルチャーギャップや、群衆に求められていることととやりたいことの乖離、コンビ間のやりたいことの違いくらいである。なかなか、クソデカ感情を放出するプロットは書きにくい。

このままなんか行けちゃう感じ?
ねあんでる ねんあんでる
炎上さえ承知の上マーケティング

シーズン2ねあんでるキャラソン『bememe+81』 この曲いい曲すぎてよければ拙記事


だからこそ、純粋な演技が求められると今作を見て勉強になった。単純なもつれ→解消ではなく、より現実味を帯びた、いわばその辺でも起こりうる人と人の葛藤が短い尺の中で与えられているため、木津と中尾の二人だからこそ演じられる強い役である。(なんかそんな台詞、じいさんが言ってたかしら←)

④熱気の操作
さらにこの舞台では芝居とダンスの間の漫才での熱気の切り替えが総合評価を左右するため、木津の心配りがとても映える。
やりきったダンスではキレキレの動きをしつつ、アドリブでちゃんと他の役に絡むし客降りで客の目を見てポーズする。

ねあんでるの二人ダンスの時も、相手の動きをめちゃくちゃ見ていた。もっと座長をしているのを見たい。できればジャンプじゃなく、ちょっと悲劇性のあるものを。それができれば木津は一人芝居グランブルーファンタジーができる、いやそんなんいい、今後の業界を支える人材となるだろう。

Ⅲトータルバランス

とりわけこの二人は過去を知るが故、取り上げさせていただいたが、この舞台はそれぞれが、「まずキャラがあり、そこに自分のスキルを足している」ような形で、とても演技がよかった。陣内の祖父母役の廣田高志と石井麗子も出るところは出て、とても愛情ある感じだった。(出すぎる人もそれはそれでよい)
だからこそ生きる座長であり、だからこそ生きる木津つばさである。

次回以降、他の方々の好演も書きたいと思う。
「ノノクラゲはラストワルツの芸風に影響を受けているのか!?」とか書きたい。

てか、今日で千秋楽したら大阪2dayなのか…?もっとなんとかできたのじゃないかと思う節もある。皆さまお忙しいのは理解しつつ…
最後に以下を感じぜひ次回に向けてということを書きたい。
(ちょっとネタバレあるので注意です。)

・アミューズのおしゃべりくそやろう
溝口さんもっと本気出していいですよ!!コンビ格差逆転の気遣い側は確かに二番手だと演じにくいですが…キレキレのダンスありがとうございました。


・脚本
じじいが遭難した時に未来とリンクさせて内示書き換えさせる、みたいな展開はどうでしょう。あの伏線ぽく梅津とじいさんが語ったのがちょっとノイズだったかもです。

・未来人!?!
(※私すいません、シーズン2からなもので、梅津さんの”配慮”がありがたかったです)

・音響
会場がそういう作りではないんだと思いますが、歌が潰れてました。その中で歌詞をちゃんと届けてた役者は偉いが、大平と梅津の歌詞は、残念ながら客席では解読できなかったです。

逆にすげえな、聴き取れた人達。

・歌詞
ちょっと当て書きすぎたもしくは当て書きの精度が悪いのか、1曲まるまるやられると間延びしていたように聞こえます。

…あれ、私、シーズン2のこと好きすぎて、なんか美化かつ期待押し付けている!?

ドラマを挟んだがために世間のあのカミシモ熱は少し冷めつつある。
否!だからこそ各コンビのソロ公演を繋ぎながら、大団円に向けて俺たちに課金させてください!!!
この世界観と彼らは舞台でこそ!!!

よろしくお願いします!!東京千秋楽お疲れ様でした!センキュッ


追記 ネタ

別日に見に行った妻と完全にネタが分かれていたので、以下にネタパートのあらすじ載せます。

・ねあんでる
①10回クイズ
バンバンの小学校では変な10回クイズが流行っており…プリンって10回言って「あなたが別の女の下へ行って…」「不倫…」?
②〇〇してみた
バンバンのYoutuber時代のチャレンジを小ボケたっぷりに繰り広げる!

・ノノクラゲ
①落ちるためのバイト面接
くらげがバイトの面接を片方受かってしまった。絶対に落ちる面接をやろうと東雲が言い出した…!やばすぎるコンビニバイト面接が繰り広げられる。
②転校生
転校生に仲良くするのがうまいという東雲がくらげに吹き込むが…?くらげも天然さく裂しながら…

・アマゲン
①無限ピザ地獄
テイクアウトピザ1枚サービス、にさらにピザがサービスされ…?
②GTG(Great Teacher Gen)
先生になりたい現多だが、天野が繰り出す生徒役が手がかかる…!


PS 雅成氏は詳しくない私でも後ろの客席からでも分かるくらい、キャストに絡まれたら前髪をかき上げ続けていて、「うぬぼれてる、あれは雅成のうぬぼれのかきあげ!」とカリスマ性がありました。 キャストが愛している作品というのは一層末永く続いて欲しいものです。


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