脇の2人 カミシモ2考④
ドラマ制作頑張ってチョ〜ダイ!
ということで舞台カミシモ2にはまり思い出してレビュー、あのコンビの前に脇役の2人を推す。髙木俊氏と吉田ウーロン太氏だ。
いい舞台には脇を絞める名優が必要であり、ヒールにも狂言回しにもなった2人こそMVPかもしれない。
ええ声トリックスター 髙木俊
「ようこそー!崖っぷち芸人の諸君!」
髙木俊氏
1981年3月17日(41歳)、シカゴ出生。フリー。
毎朝「おはよー●」(●は任意の絵文字)とツイートしている。宮野真守氏とは旧知の仲のようでラジオ出演や宮野真守氏の宣伝もしている。
今回は無人島ロケのMCの田尾役。アー写も含め、基本的に口が開いている形で写真を投稿している。本役は崖っぷち芸人をテレビ出演と偽って無人島ロケに連れて行くヒールとして描かれる。芸人がビッグになろうとするというストーリーにおいてそこにドッキリを仕掛け、過酷なロケをしかけるというわけで、髙木氏の悪者っぷりが目立てば目立つほど、役者の成長が焦点化されるという凸レンズみたいな役割である。何より、転換のときには録画映像でこの後の展開をアナウンスするところがあるが、間、表情、体の使い方の芸が細かい。まるで客は飽きないのはこの人の怪演が大きいだろう。
「変わった役をやることが多い」ということだが、それだけ演技の幅が広く、舞台上も広く使えるし、余計なことをしないスマートさもあり安定感は凄まじい。
東京で2回みた時は本当にミスがなかったのだが、私の大阪公演でなぜか「髙木呪いの回」があり、あらゆるキャストよりぐだぐだで見るに堪えなかったが、それすらも芸に昇華する経験値があり、後述のプロデューサー役とともにしっかりと完走した。(この日、関係者っぽい野郎複数が客席中央に複数いた。意識したのかは詮索しないでチョ〜ダイ!)
回収できないアドリブはないおじさん 吉田ウーロン太
「いやー、あるんですよ、バラエティへのあこがれってのがねぇ」
(木津つばさ氏との長回し寸劇、円盤に入れてヨォ!)
吉田ウーロン太氏
1978年2月9日(44歳)、東京出身。エフ・エム・ジー所属。コントユニット・フラミンゴでボケを担当。キングオブコントで3度準決勝進出している。
本作では崖っぷち芸人のネタに見惚れてなんとか地上波デビューさせたいと駆け回るディレクター・坂本ただし役を演じる。
こちらは田尾に比べて芸人たちのケアをしており、柔と剛、天使と悪魔のように描かれている。
ベテラン芸人ともあって、ダチョウ倶楽部はじめ笑いの発明への造詣が深く、あらゆるアドリブをこなす。脱線しそうになったらストーリーに引き戻すようにアドリブも改変するということで、フカフカの緩衝材のような立ち回りだ。
また、例えばロケ番組に出ている一応知名度の高い狭間くらげには、丁寧に楽屋まで誘導し、その道すがらにいる売れないエクソダスへの扱いは雑など、登場人物のキャラ設定を登場人物にかわってコミカルに演出している。主人公の母親が急病で倒れたことを伝えられた主人公が無理をして意識不明になったり、熱中症で倒れたりというところではかなり狼狽えて心配を見せる。観客を取り残さない狂言回しにおける細やかな演技が大変ブラボーでした。
そして上述した通り、キングオブコントで3回の準決勝まで。これはおそらく重なるものがあるだろう。「売れない芸人」という役に対して細部に愛が宿っていた。
2人のアドリブ
上記脇をしめる立ち回りだが、髙木氏は用意されたセリフが多く、それをタイミングうまく投下する。ロン太氏はト書きはほとんどないのではというくらいその場その場で言い方や動作を変えていた。
アドリブ① 楽屋前の攻防
上記偽ネタ番組の楽屋前で他コンビと邂逅して因縁を語る荒牧慶彦氏と大阪代表のエクソダスに対して、舞台転換のために楽屋に入れ!というシーン。
エクソダスの知名度が低いというところで、エクソダスのコンビ名を言い間違える。私の3回は
①メクソダス→大阪代表が目くそをとばすフリ
②エロ男爵→誰がヤァ!
③エグザイル→ここでエクソダスの二人がEXILEを踊り出したのだが、荒牧慶彦氏はEXILEではなく3代目ジェイソウルブラザーズの動きをする天然を炸裂させ、その後いろいろなところで流星のダンスが繰り出されいじられ続けていた。
このシーンは役者らが細かにアドリブを入れており、割とストーリー進行が散りがちになるがロン太氏がエクソダスを楽屋にぶち込んで強制転換させる。
アドリブ② 野生の坂本さん
無人島ロケ3発目の企画、滝から流れてくるソーメンをキャッチするナイアガラシソーメン。冴えない芸人と思いきや、入水するやいなやソーメンではなく、ウナギ(染谷俊之氏)、巨大ウナギ(溝口琢矢氏)をとる芸人たち。ここで大阪代表が続いて捕獲するのが2パターンあり、一つは巨大チンアナゴで、もう一つが吉田ウーロン太である。
このシーンは舞台の客席側に水色の布を引っ張りだして、水の演出をしており、上記の小物をその内側に仕込める。…とはいいながらも客席からは透けててシルエットは丸見えなのだが、巨大な黒い影がよくわからんタイミングで動いてて何をする気かと思ったらロン太氏が出てくるということで、クソ笑った。「野生の坂本さん」と「養殖の坂本さん」という2パターンあるらしい。ここはお別れのシーンまでしっかりと演技しておりとてもよい。
ちなみにここは実は大きなフラグになっており、一番こうした企画が得意そうなYouTuber芸人はミッションに気を取られボケない。ここでの他3コンビの飽くなきボケへの姿勢がYouTuber芸人覚醒のフラグとなっているため、ここはテンポよく楽しくいく必要がある。
(というかこのウナギ騒動だけで改心するのピュアすぎる)
もしかしたらウナギノボリのゲン担ぎ的な感じかもしれませんね。
アドリブ③ 洞窟の呪い
髙木氏は毎回芸人を翻弄し、企画参加を芸人に強制する役なので基本的に自由度は少ない。一方、4つめの洞窟に隠された宝箱を見つける、洞窟の中身はなんでしょね〜のルール説明時に「洞窟の呪い」をアドリブで繰り出す。私の3回は
①肩が痛くなった
②顎が伸びた
③説明を最後まで言えなくなった
①②は大阪代表らが突っ込んでいたと思うが、③は上記髙木呪いの回だ。髙木氏はここまでのほとんど全てのセリフを噛み散らかしていたがここでそれらは呪いのせいにしてリカバリーした。素晴らしい回復ポイントである。
2人のキャラソン 『這い上がれ Cho-Die!!』
そんなものはありません。すいません。
2人の舞台回復能力
このように彼らはいろいろが起こるショーマストゴーオンにおいて様々なリカバリー行為を行なっている。
とてもよかった回があった。無人島感の演出のために植え込みの小道具がある。その植え込みをかきわけて坂本と田尾が出てきて演者を驚かせるシーンで使われる。
その後、いろいろあって田尾が演者にドッキリ等を謝罪し、ネタ番組でのネタ披露を告げる大団円のシーンで、「許せねー」と田尾が担ぎ上げられるシーンがある。確か1回目はもみくちゃにされた後なぜか胴上げされていた。
一方確か2回目見たときは、その茂みに連行されるのだが、そこで、誰かが植え込みの一部を倒してしまい、ハリボテ感が出る。ペーパーマリオRPGかよ!?と思っていたのだが、この場を収めるロン太が
「ああ!!!本物の茂みが、偽物みたいに倒れてる!!」
と放ったのにまじで感激したのだった。
累々話してきたが、特に少人数の素晴らしい舞台にはこうした回す人が必要であり、それはアドリブ要素が増えれば増えるほど重宝される。
私にはタイトルの横に「あいつが上手で下手が僕で おじさんがいて」が見える。能のワキ方であり漫画版ナウシカの道化師である。
休憩時間のない一本の公演で、着替え時間を生み出すだけの存在では決してなかった。なんなら髙木氏はキャストよりも着替えているのではないか。
そして自身のSNSでも、自分だけでなく、役者の裏側を伝えて付加価値を高めている。立ち回りが素晴らしい。
私は今作の配役含め、舞台全体に対して非常にクオリティの高さを感じた。飽きのない、ずっと惹きつけられる公演だった。
二人のドラマでの活躍に期待したい。というか二人の何かを企んでいる悪そうな笑顔から幕開けてほしい。キャラソンも出してほしいし、ダンスも踊ってほしい。なんなら二人でネタも披露してほしい。
二人も、這い上がろうぜ!!!