AI絵師問題について
いま世間をにぎわせている「AI絵師」の問題についてまとめてみました。
最初に書いておきますが、私個人はどこの立場にも属しておりません。
AI絵師とは?
AIを使ってイラストを作る人のこと。
今やAI技術が発達し、キーワードを入力したらプロ級のイラストが数秒で作れてしまう世の中。
一見、これってものすごい事、すごくいいこと、のように見えますが、その実態は問題だらけなんです。
何が問題なの?
1.既存のイラストをもとにしている
AIがイラストを生成できるのは、AIにイラストを学習させているからです。
例えば、Aさんというイラストレーターがいるとして、その人のイラストをAIに学習させます。すると、AIはAさんの画風のイラストを生成する事ができるようになるわけです。
実は、これがAIイラストの仕組み。AIで生成されたイラストは、元々誰かの画風を学習してできたもの、なんですね。
これの一番の問題は、学習元のイラストを描いた人に許可を取っていないこと。つまり、無断で既存の絵を拝借してAIに学習させているわけです。
2.AIイラストを生成させた人が「絵師」を名乗っている
AIイラストは、フォームにキーワードを入れるだけでイラストが自動生成されるというものです。AIイラストを公開している人は、ワードを入力して出力させているだけ。描いているのはAIであって、操作している人ではないのですね。
そんな人が、絵師を名乗っているわけです。自分で時間をかけて勉強し時間をかけて自分の手で絵をかいている人が絵師を名乗るものですから、絵をAIに描かせている人が絵師を名乗るのはおかしい、というわけです。
3.AIイラストを利用して収益を得ている
1の問題が解決していない以上、著作権の侵害にもなりかねません。そんなものを使ってグッズを作って販売したり、ファンサイトで支援を募ったりするのは、違法行為と言われかねません。
pixivfanboxなどは、AIでイラストを生成する作業やそれらを販売する行為は、独自性のあるクリエイティブな活動に該当しない(自社の理念に反する)として、AIイラストの販売、支援、投稿をとりあえず全面禁止としました。
AIの著作権は生成した人にありますし、アプリによっては商用利用も許可されていますから、AI生成物を販売する行為自体に違法性はありません。しかし、その性質上、元になる既存のイラストや生成という行為に関して違法性や違反性を免れる事はできそうにありません。ゆえに、現時点ではAIで収益を得るのは、違法行為であるとみる傾向が強いです。
4.生成したイラストが誰かのイラストに「似る」可能性がある
これは非常に議論するのが難しい問題で、手描きでも起こりうる話です。
AIイラストはその性質から、元となるイラストが存在し、当然ながらそれと似る(どころか同じ画風になる)ことでしょう。しかし世の中には、自分の作風と非常によく似ている、と名乗りを挙げる人がいくらか出てくるものです。それが偶然であれ意図的であれ、AI生成されたイラストは誰かのイラストに似てしまうという問題があります。
この問題の何が難しいって、AIイラストはもとになるイラストがあるわけです。その元になるイラストは、誰かが描いた手描きのイラストです。人の手で描かれたものですから、どこかの誰かに画風が似てしまう事はあり得ます。つまり、「誰かに画風が似てしまう可能性のあるイラスト、これを学習してできるAIイラスト」を生成することになるので、当たり前ですが、手描きイラストと同じ問題を抱える事になります。AIが既存のイラストや画風を学習している以上、この問題は避けられません。
AIは学習元のイラストを参考にしてしか生成ができないので他に似る事はないという意見もありましたが、これは学習元のイラストが100%他の誰にも似る事がないもの、でなければ成立しません。学習元になるイラストが手描きであり、手描きは誰かに似てしまう可能性がある以上、AIも同様なのです。
特に1,2については大きく取り沙汰され、いま世間をにぎわせています。
アンケートを取りました
人望()が少ないので票数少ないですが(ご協力いただいた方には感謝いたします)
これら問題に対し、「じゃあ学習元から許可が出ていて、使う人が絵師を名乗らないのなら問題ないのでは?」という疑問が浮かびました。
世間が問題にしている中で感情的で個人的な問題を除けば上記4点でしょうから、それらが解決できるのであれば、問題はないのではないかと考えたのです。
そこでとったアンケートの結果が、上記です。
答えてくれた人がどんな立ち位置にいるかわからないので偏りがあるかもしれませんが、2の「学習元に許可を得て絵師を名乗らなければOK」が一番多かったです。問題が解決できるならAIはアリ、と考えている人が多いということですね。
オールオッケーは、たぶんAI絵師を名乗る方でしょう。おそらくは、人が描く絵も誰かの絵を参考にしていたり真似たりしながら出来上がっているものなのだからAIもそれと同じである、という意見ではないでしょうか。言われてみれば、納得できそうな意見です。例えば好きなイラストレーターさんがいてその人の画風が好きだから自分もその方の真似をして絵の勉強をしてイラストを描くようになった……この場合、おそらくその人の絵は好きなイラストレーターさんに似る事が多いのかもしれません。ただAIは一瞬でそれを機械的にしてしまうため、トレスやコピーのように見られてしまうということなのでしょう。
問答無用でアウトの意見もそこそこあります。学習元が必要な時点でナシ、やってる事はトレスと同じ、心が無い、様々意見はあると思います。こういった問題が解決できない限りは世に出るべきではないという見方もあるでしょう。
意外と少なかったのが、許可があっても似てるだけでダメ。問答無用でアウトの中に含まれる内容ですが、問題点を絞ってあります。つまりこの意見の人は「許可があって絵師を名乗らなくて、かつ似る事がなければOK」という意見。上記4の可能性を考えると、不可能に近い問題ではあるのですけど。
ほんの少数の結果ですが、沢山のツイートなどを見てみる限り、問題点が解決できるのならAIは別にいいんじゃない、という考えの方が多いような気はします。
勿論問題はこれらだけではなくて、時間をかけて苦労してきたものを一瞬でこなすのはいかがなものか、AIが認められるなら本職はどうなるんだ、などなど、様々思いがあります。
確かに、AIがこのまま認められてしまうと、イラストレーター達は「AIの学習のためのイラストを描く人」になりかねません。AIの是非は別にして、個人的に、絵師さんたちは絵師さんであってこそですし、AIイラストとは全く別のありがたい存在と思っています。AIはAIの使い方を、本職は本職の活躍を望んでいますね。「この人の絵がいい、この人にお願いしたい」というのはたとえAIが台頭してきたからといって、変わるわけではありません。A
ちなみに、文章の世界では
ちなみにAIにはノベルAIやチャットGPTなど、文字の分野にも進出しています。チャットGPTなどはテレビでもよく出てきますし有名ですね。
これらも本来はAIイラストと同様の問題を抱えているはずなのですが、なぜかこれらは気にされず別にいいんじゃないって見方が多い(というか気にされすらしていない)ですね。それもおかしな話だと思いますが。
でも、人間がノベルAIに負ける事はありえないですね。物書きは自分の脳内が世界一だと思っている生き物で、それを直に再現できる可能性があるのが自分しかいない以上、AIに負ける可能性は0なんです。
例えAIが自分のスワンプマン(全く同じ人間)になったとしても、スワンプマンは10秒後の自分に勝つことはできません。文章のずるいところは、1行1冊程度で世界観が語りつくせるわけではなく、様々な繋がりがあり物語があり、それら全てが脳という無限に想像を作り出せるものに管理されている、こういう性質を持つところです。既存の物からしか生成ができないAIでは100%後手にしか回れず、永遠に書き手を超える事ができません。ただその自分という存在が、様々な事情あり体調ありで100%の力を出せないため、可能性を秘めている時点で勝っている、という言い方しかできないのが難点! それゆえ、単純な表現力とかは普通に負けるかも(白目)。けど更に更に言えば、そんな100%の力が出せない人間という存在からしか学べないのがAIなわけですから、もはや文章の分野ではアシストみたいな存在を目指せる程度なのかも。
また、文章の世界では作風が似るなんてことはごまんとあります。文章の世界で「似る」ということは、登場人物や世界観が同じ、など手書きでも絶対に許されないレベルでしか起きない事ばかりですので、AIだろうと手書きだろうと、即アウトなんです。偶然がほぼ存在しない世界ですからね。
例えば、「吸血鬼の姉妹がいて姉は500歳で城主で、妹は495歳で地下に幽閉されてて、姉の友人に魔法使いがいて100歳以上で本ばかり読んでて、メイドがいるんだけど人間で瀟洒で、中国っぽい門番がいていつも居眠りしてて、魔法使いには使い魔がいて…………」いやどう考えても紅魔館(東方プロジェクト)ですやん。これが偶然できるなんてことはあり得ないです。サルが適当に文字を打ったらシェークスピアになったってくらい、あり得ない確率でしか起きません。多少設定が違っていても、完全にそれとわかるので即アウトです。単純に、文章は誰にでも書く事自体はできるので、似るというのはすなわちパクりでしかありません。超絶偶然に似たり同じになったりしたなら、後に出たものは即アウト判定になってしまいます。これは偶然であろうと仕方がないこと。
じゃあ書き方が似ている場合はというと、正直文章の書き方なんてそんな沢山ないですから、似るも何もないです。例えば私は「、」を使って一文挟むという英語的文章の書き方をたまにするのですが、これさえやってる人はプロアマ関係なくごまんといます。でも、誰が誰かをパクったわけでもないのです。表現の仕方や漢字のひらき具合、句読点の使い方など、挙げればキリがないですが、どれもこの人しかない、なんて事はありません。誰かが同じような書き方をしています。そもそも教本などで勉強してしまうと、そうなってしまいます。なので、文章では書き方が似ているからといって何ということはないです。
文章の世界では偶然が成り立たない事が多く、似ている部分も手書きでは当たり前に起きまくっていることばかりですので、AIは流行らない、もしくは流行ってもイラスト程の問題にはならない、のかもしれません。
(でも、都合や環境、時間、体調などにとらわれず書けるのはうらやましいなと思ったり)
まぁ文章のAIの世界でもいろんな意見がありいろんな事を思う人がいるでしょう。進化していくと、私もころっと意見を翻すかもしれませんしね……
問題点のおさらい
「既存のイラストをもとにしており、無断使用されていることが多い」
「自分の手で創作していないのに、絵師を名乗っている」
「違法性が疑われるもので収益を上げている」
「誰かのイラストに『似る』可能性がある」
SNSなどを見ていると、個人的なもの感情的なものを除くと、おおよそこのような問題が見受けられました。
これらに対し「許可された学習元で絵師を名乗らずに生成するなら、AIも良いのではないか」という一つの解決の道が見えた気がします。
他にも問題はあるでしょうから、それらの調整も今後行われていくでしょう。政府の発表もあるようですし、AIの台頭に揺れる現状、うまく付き合っていきたいものです。
けどもし、AIが学習したことをもとに独自に考え答えを出し始めたら……人間は完全にとってかわられてしまうのかもしれません。
チャットGPTをドールに搭載して会話したら、もはや友達も恋人も婚約者もいらないのでは……?
AIなだけに「愛」が欲しいところにゃ。
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