「おもしろい!」の作り方2 『シニフィエとリフレイン』
こんにちは、神岡です。
しばらく更新が止まっておりました。「おもしろい!」の作り方の第二回です。
今回は例として、私の一番好きな作品である「翠星のガルガンティア」を取り上げますので、是非見てください!
それでは、始めていきます。
概要
この記事では以下のことについて書いていきます。
・リフレインは、密度の濃いシニフィエを伝えられる手段である。
まずは、「シニフィエ」と「リフレイン」という言葉の説明から始めていきます。
シニフィエとシニフィアン
無声映画や台詞無しマンガのような作品を除き、物語を紡ぐには言葉が必要です。
巧みな心理描写に「あるある~」と共感したり、コミカルなキャラクターのやり取りに思わず笑ってしまったりと、言葉は私たちの心に作用し、感動を促します。
そんな言葉ですが、大きく分けて二つの要素に分けられます。
それが、シニフィアン(記号表現)とシニフィエ(記号内容)です。
シニフィアンとは「意味しているもの」という意味で、
言葉の要素で言うと外側=「文字の形」や「言葉の響き」にあたります。
それに対しシニフィエとは「意味されるもの」という意味で、
言葉の要素で言うと内側=「イメージ」や「概念」にあたります。
図にするとこんな感じ。
つまり、シニフィアンとは言葉の内容を入れた箱で、
シニフィエはその中身(言葉の内容)に例えることが出来ます。
【例】
紙の本に染み込んだインクの並び(文字列)はシニフィアン。
それを私たちが読み取り、イメージするのがシニフィエ。
役者の声帯から響く音の振動(台詞)がシニフィアン。
それを私たちが聞き取り、イメージするのがシニフィエ。
リフレイン
続いて「リフレイン」ですが、これは物語で以前出てきた台詞を後で再度言わせるという手法です。
リフレインの最たる例は「決め台詞」です。
半沢直樹の「倍返しだ!」
仮面ライダーWの「さぁ、お前の罪を数えろ!」
名探偵コナンの「真実は、いつも一つ!」
……などなど、色々ありますね。
決め台詞には、物語に固有の色を与えたり、構造上オチをつけやすいという利点があります。
しかし、ここでは上記のような「決め台詞」ではない、リフレインの効果について説明させてください。
リフレインの例
そんなわけで、今回取り上げる作品は「翠星のガルガンティア」です。
(あらすじ)
遠い未来、遥か銀河の果て。
人類は、異形の怪生命体ヒディアーズと種の存続を賭けた戦いを続けていた。
激しい戦いの最中、少年兵レドは乗機である人型機動兵器チェインバーとともに時空のひずみへと呑み込まれる。
人工冬眠から目覚めたレドは、忘れられた辺境の惑星・地球へと漂着したことを知る。
表面のほぼすべてを海に覆われた地球で、人々は巨大な船団を組み、旧文明の遺物を海底からサルベージすることで、つつましくも生き生きと暮らしていた。
ここはそんな船団の一つ、ガルガンティア。
言葉も通じない、文化も習慣も異なる未知の環境に戸惑うレド。
やむをえず、少女・エイミーらガルガンティアの人々との共生を模索し始めるのだが、それは戦うこと以外の生き方を知らないレドにとって驚きに満ちた日々の始まりだった。(公式サイトより)
いや、もうあらすじ読んだだけでとんでもなく面白そうですよね!!!
もちろん、内容も全編通して面白いです!!!
とにかく見てください!!!
………………閑話休題。
この作品では、最終回の決戦において「ブリキ野郎」という言葉が非常に効果的にリフレインされています。
この「ブリキ野郎」という言葉は、もともと主人公のロボット=チェインバーに対する呼び方でした。
もちろんロボットらしいメタリックなフォルムだからという意味もあるのでしょうが、「心の無い機械」というニュアンスもあったと思われます。
そんな風に呼ばれていたチェインバーがですよ!
最終決戦で敵対したロボットに「くたばれ、ブリキ野郎!」と放つんです!
もう、それまでの物語が走馬灯みたいに頭の中を駆け抜けていって、心の無かった機械が心を持った瞬間に見えて、自分は泣きました。
チェインバ―――――!!!!
リフレインの効果
………………閑話休題。
今まで散々熱く語ってきましたが、結局何を言いたいかというと、
リフレインを使えば、たったの数文字(シニフィアン)に、これだけの意味(シニフィエ)をねじ込めるということです。
名言にはそれだけである程度、心揺さぶるものもあります。
ですが、やはりそのシニフィアンが内包するシニフィエ以上のものは、受け手に伝えることが出来ません。
その点リフレインという手法は、受け手にこれまで培ってきた物語の内容を必ず思い出させる性質を持っています。
結果として、単純なシニフィアン以上のシニフィエを受け手にぶつけることができ、「エモさ」を引き出すことができるのです。
まとめ
・リフレインを使えばこれまでの物語が想起され、字面以上の意味を伝えることができる。
感動して泣きそうになる感覚は、ゆっくりやって来るものではなく、一気にせりあがってくるものです。それを誘発するためには、できるだけ短い言葉で、膨大な意味をぶつける必要があります。
そのための一つの手段として、リフレインは有効だと考えられます。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます
ではでは、次回もお楽しみに。
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今回の記事が缶コーヒー程度には役立ったなと思われたら、是非読んでいただけると幸いです。
感謝です!