●タイトル「そろそろ40だから親が就職しろと言ってうるさいが俺は脳内嫁の相手で忙しいとどなりかえしてみたところある夜とうとう親が金属バット持って枕元にたっているんだがどうしよう?(仮)」
※数年前に「一般向けにこういうのはどうだろう」と提出した物の流石にどこも引き取らなかったプロットです。
エンディングが二種類あったのは「どっちがいいでしょうか」と聞くためでしたがどうもそれ以前の物になり果てておりました(笑)
☆ストーリー
第1巻
俺、タナカトシアキは39歳。10年前までとある会社のSEをやってたが、根性の悪いOLにハメられて痴漢容疑をかけられ、会社をクビに。
以後、この大不況の中、どうしても再就職にありつけず(この業界は狭いので悪い噂はあっという間に広まる)、やる気も失っていた俺は失業保険と貯金で食いつないできたが、ここ五年ほどは両親のスネをかじって、自分の部屋という世界だけで生活してる。
最初は同情的だった両親も、最近はめっきり冷たい目を向けるようになった。
そんなある日、俺は等々市役所の課長であるオヤジに仏間でこんこんと説教をされた。
だが、俺はもう働く気は無い、と答えてやった。
その夜。眠っている俺の枕元に、オヤジが古く、さびた金属バットを持っていた。
動きたいが動けない……しまった、今日のハンバーガーに薬が!
「トシアキ、父さんも母さんももう限界だ」
いあやの、オヤジマテ、いや、舞ってください、いえ、待ってくださいお父さん!
オヤジは悲しげな目をした……つまり本気の顔で、古びた金属バットを両手で握りしめ、構える。
「お前に、叔父さんが居たという話はしたか? 今から二十年前、表向きは失踪したことになってるが、本当はこのバットでこの世から居なくなったんだ。お前はしらんかもしれんな……そこでな、父さん、母さんとこの一週間ずっと話し合ってたんだ」
知らなかった。
いや、俺にオジサンがいたことも、両親が話し合っていたことも。
だってこのところ、「れぐあい・ろまんず」の攻略が佳境で……。
「母さんにだってこのバットのことは言わなかった。信じてもらえないと思って」
そりゃ信じないだろう、自分の長年連れ添った夫が、自分の兄を金属バットで「始末」したなんて。
「父さん、これまでお前に何度も何度も話そうとしたけど、お前は耳をかさんかった。就職の努力もこの一年ぐらいもうあきらめている。このままでは父さんたちはお前に食いつぶされて死ぬ。それは構わない。だがお前は父さんたちが死んだらどうなる? 家庭も無い、仕事も無いのは、もう40になったら……いや、20を超えたら赦されることでは無いんだよ。そして、お前はもう、その社会、世間様と戦う力が無い」
いえ、つけます、明日、いえ今日から、今すぐから頑張ります、心も入れ替えます、職業訓練学校に行って電気工事の資格を取ります、手に色を、いえ職をつけて頑張ります。
だからオヤジ、いえお父さん、パパ、どうかその金属バットをしまってください、いい子になります、なります、いえ、立派な社会人になりますから!
「お前はもう、この世界に居場所が無いんだと思っているんだろう?」
いえ、違います、僕が見つけようとしなかっただけです、自分探しの旅なんて嘘です、何となく倦怠感を誤魔化すためです、今理解しました気づきましたがんばりマすガン張ります頑張りますから努力しますので精一杯可及的速やかに!
俺が祈るように必死になっているのは残念ながら眼球以外に表示されることはなかった。
何しろ筋弛緩剤というぐらいだから、顔もだらりとして、指一本どころか、舌さえ動いてくれない。
オヤジははらはらと涙を流しながら、薄暗い俺の部屋の中、かるくバットをこっちのこめかみに当てた
ひい。
それからゆっくりとふりかぶり、またゆっくりとふりおろす。
どうやらバットの軌道が俺の部屋の本棚や荷物に邪魔されないか確認しているらしい。
しまった、どうして俺はホットトイズのアイアンモンガーとバットモービル(バートン版、ノーラン版)を注文しなかったのか。
あの箱三つがあればきっと何とかなったはずだ。
だが、オヤジはすっかりバットの軌道を確保したらしく、目を閉じて、何事か呟いた。
聞き取りづらかったが、どうやら誰かに謝っているような、頼んでいるような内容だった。
いかん、本気で来る。
金属バットが振り下ろされる。
「母さん、やるぞ!」
そう宣言すると、階下から急にお袋のでかい念仏の声が聞こえ始めた。
いかん、夫婦共犯!覚悟決め手やがる!
背中の体温がすうっと下がり、オヤジの金属バットが、今度は速い動きで振り上げられるのを、俺は逆にスローモーションを見ているようにはっきり見ていた。
「いってこい、としあき!」
フルスイングで、金属バットが振り下ろされた。
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