見出し画像

今までで一番美味しかった料理は何?

美味しい料理というものには、今まで数限りなく出会ってきた。
どれもそれぞれ違った良さがあるので、一番を決めるのは困難である。
シチュエーション、値段、軽食かガッツリか、どこでも手軽に食べられるものか、滅多に食べられないものか。
それでも今までで一番美味しかった料理は何と聞かれた時には、私はきっとこう答えてしまうだろう。
「北京ダック!」

北京で食べる北京ダックは本当に美味しい。
中華料理の王と言っても過言ではないのではないだろうか。
北京料理自体は全く好きではないが、北京ダックだけは別格!

あなたは北京ダックを食べたことがあるだろうか。
その時身震いするほど美味しかっただろうか?

日本で食べるダックも美味しいのはあるかもしれないが、でも北京で食べる北京ダックは絶対的に段違いに美味しい。
中国の他の地域で食べる北京ダックも悪くはないが、やはり北京のあの埃っぽく乾燥した気候の中で食べるのがベストだと思う。技術もやはり北京が良いだろう。

羽をもぎ、頭と足を落としたダックを、職人がじっくりと焼いていく。
本当に絶妙な焼き加減だ。
あとほんの少し焼いたら焦げ付いてしまうんじゃないかと心配になるほどの、ギリギリの塩梅。
もう少し焼いたら脂が落ちてしまうんじゃないかというギリギリの塩梅である。

そうして焼き上げられたダックは、カラメルを纏ったようにテラテラと光り輝く、パツンパツンに皮を膨らました状態で客に提供される。

私たち客は、温かいまま目の前で切り分けられた鴨をそのままいただく。
温かいまま食べることが大事なのだ。
冷めてしまうとパリパリも無くなるし脂も美味しく無くなってしまう。
切り分けられたものをすぐ食べるのが大事なのだ。

切り分けられた皮のかけらは、わずか数ミリのあつさで、持っても全く重さを感じない。
ちっぽけなスナック菓子のようにしか思えない。
その小さなかけらを、まずはそのままぽいと口の中に放り込むと、ふわりと良い香りがする。でもまだよくわからない。
それを思い切り歯で噛み締めるのだ。
サクッとした歯ごたえ。
その瞬間、ジュワッと脂が溢れ出す。
じわじわと炙られて、毛穴の中にたっぷりと溜まって、今にも弾けそうになっていた脂が、溢れ出すのだ。
その濃厚さと言ったら。
この僅か数グラムの重さの食べ物の中に、こんなすざまじく強い香りが詰まっていたなんて!
そのかけら一つで、口の中から鼻腔まで、華やかな香りに満たされる。こんなに幸せなことはない!
でもカケラ単体で幸せなのはその瞬間まで。
飽きてしまうのだ、濃厚すぎて。脂っこすぎて。もういいかなという気持ちになってしまう。

そのためにあるのだ、鴨を巻くための蒸し立ての薄い皮、付け合わせの野菜が。
一口味わったら、蒸したてで湯気が上がる白くて薄い皮に、ダックと野菜とタレをいれて、どんどん巻いて食べていくのだ。
これが本当に美味しい。鴨の香りと脂を楽しみつつ、さっぱりと食べられる。
北京は小麦文化なので、小麦で作られたこの皮も当然美味しい。幸せの味がする。

北京ダックは、皮と肉だけではない。
他にも鴨のいろんな箇所をいろんな調理法で味わえる。北京ダック専門店は、鴨調理のエキスパートなのだ。
鴨はなんでも美味しい。
腸の炒め物は歯ごたえが楽しいし、水かきを茹でて切り込みを入れてワサビあえにしたものも美味しい、首もおやつ代わりに食べるし、蟹を食べるように頭を食べるのも、骨の出汁をとったスープも美味しい。最高だ。

北京に行ったらぜひ北京ダックを食べてほしい。
北京あの雰囲気、あの気候にマッチした、あそこでしか食べられない最高の高級料理だ。

とは言え、もう食べられないのである。
しばらくはずっと食べられないだろう。
中国にはしばらくは行けないし、行けるようになってもやや躊躇する。

でももう書いてたら食べたくなって仕方がない。
もうジェネリック北京ダックでもいいからたべなきゃ!
台湾で姉が有名な北京ダック店を予約してくれたので、めちゃくちゃ楽しみにしてる。
本場じゃないけど中華民族のダックだから日本より幾分良いやろ!
あ〜楽しみ〜〜〜

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?