朱色の子守唄②
心臓の弱い方、お一人で読まれる方は、ご遠慮下さい...。
子供の頃、いつも酷い目に遭っていた。意味もなくイジメを受け、いつも一人だった。両親も学校も取り合ってすらくれなかった。生まれつき霊感みたいなものがあって、それがイジメの原因だった。別に持ちたくて持ったわけではない。こんな理不尽が世の中に転がっている。よく死んだばあさんが
「お前は狼に選ばれた子なんだよ」
そう言っていたが、狼ってなんだよ。そいつが守ってくれたっていうのかよ。なまじ変な感が働いたり霊現象が起きるせいで、悪いことは全部俺のせいにされてしまう。クソが!なんなんだよ!
「おい!カメヤ!起きろ!」
頭にグーパンが入って俺は飛び起きた。編集長がニヤニヤしながら俺をみている。
「何か良いネタつかんだ!?」
編集長は目を見開いて笑顔を作って聞いて来た。それに対し俺は頭を押さえながら
「いや...あるわけないでしょうが。3時間前っすよ!?我が社でも「月刊Oh!カルト!」みたいな雑誌を出そう!ってなったの!」
編集長は、だから?みたいな顔をしながら
「カメちゃんさ、3時間前って言ったら記事くらい一本できるっしょ!?」
なんて力技が好きな男だ。
「とりあえず来週早々にここ取材行って来て!」
扇子を仰ぎながら編集長が俺に投げたのは、昨日の夕刊であった。新聞にはこう書かれている。
「狼男か!?謎の犬の頭部の怪物現る」
なんて見出しだ...。子供向けのホラー本だってもうちょいまともなもん書くぞ...?
俺の名前は狼谷京太郎。苗字は「おおかみだに」ではなく「かめや」と読む。俺は京都の生まれで、京都の古い方言で狼を「オオカメ」や「カメ」と呼んでいたのだという。その名残で苗字は狼谷で「かめや」と読むのだ。実際、京都には“大亀”とつく地名がある。一見、大きな亀がいたと誤解するが、実際には“大亀”でなく“狼”と書くのが正しいと死んだ婆さんから聞かされた。
仕事を定時で終え、俺は腹が減ったな〜と思いながら新橋駅の前につくと
「あれ!?狼谷くん!?」
どこかで聞いた声に驚いて振り返る。
「おまっ...篠宮?」
そこにいたのは、篠宮水無月であった。
「なーにしけた面してんのよぉ!」
いつ見ても屈託にない笑顔だ。彼女とは大学の同窓生であった。確か九州のすごい神社の娘とかで学生時代から数々の霊絡みの事件に関わっていた。そのくせ人当たりがよく、敵ばかりの俺とは大違いだった。
今はなんでも、とんでもないカルト教団の撲滅キャンペーンのために動いているのだという。そういえば最近、妙な宗教団体が企業を脅してなんて記事を読んだな。まさか篠宮がその先導をしているとは。その後、俺は2、3会話をして篠宮と分かれた。今にして思えば、篠宮に今回のことを相談するべきだったんじゃないかと思ってしまう。
やがて世界中で新型ウイルスのコロナが蔓延し始めた。それはジワジワと世界を飲み込み、長きに渡りコロナ禍という状況を作り出した。新聞や週刊誌、テレビではそれは中国のとある地方都市から発生したものであると言われているようだ。だが、これには裏があった。到底、人に言って理解してもらえるような内容ではない。このコロナというウイルス...いやコロナという名の“呪い”の影響は5年近くにわたって世界中を震撼させたのである。
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