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朱色の子守唄⑧

「夜分遅くごめんなさいね。私、篠宮水無月の母の皐月と申します」

俺は思わず

「篠宮の!あ、いや失礼...篠宮さんのお母様ですか?」

皐月さんはクスッと笑いながら、篠宮から助言してやって欲しいと頼まれ電話をくれたのだった。

「まず今、世界的に流行っているコロナウイルス...これは病原体ではありません。呪いです。信じられないと思いますが」

第三者からコロナは病気ではないと聞いたとき俺の疑問は確証に変わった。

「おそらく、これは犬神憑きの呪いです。こちらにも同じ呪いが存在しますが、これはおそらく本場とされる徳島のものだと思います。本来、使役する人間がいるはずだけど...あまりをそれを感じないの。犬神というのは人間の恨みや妬みが生み出したもので大変危険な存在なのね。これを終わらせる術はない...と言ってしまうと嘘になる。一つだけあります」

俺は思わず大きな声で

「なんなんですか!?」

その瞬間、背筋が凍りついた。そして背後に奇妙な圧迫感が生じ、耳元で

「狼ノセイデ取ッテ食エン...怖イ怖イ」

薄気味悪い女の声が聞こえたと思うと篠宮皐月さんは大丈夫?と声をかけてきた。

「ごめんなさいね。いまうちに来ている神様が良かれと思って教えてくれたみたい」

今度は安堵できる声に俺の心臓は少し大人しさを取り戻した。

「タラチ姫様にも困ったものね。。
ごめんなさい。話が逸れたわね。狼谷君、犬神を抑えられるのは大口真神様だけなの。大口真神様は、あなたの名前の中にもいるし、ずっとあなたの後ろにいるのよ」

俺は振り返って虚空の背後を見つめた。すると薄らと白い霞のようなものが見えた。犬?...いや、あの鋭い眼光は狼?
そのあと篠宮皐月さんは、犬神憑きが行動するときには特有の童歌もしくは子守唄に似た歌が聞こえるはずだとアドバイスをくれた。確かに編集長が死ぬ間際にそんな歌を聞いた気がした。ますます俺の中で確信が深まっていった。

俺、狼谷は一人の男の身辺を聞き込んでいた。篠宮のお母さんからの助言をもらって半年が経過していた。

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