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かみむら文庫、北海道へ行く

かみむら文庫、北海道へ行く。

数年前に出演した『未来の記録』という映画の上演イベントのゲストとして呼んでいただいたのだけど、「せっかく北海道にいくなら、関連イベントとしてかみむら文庫も上演してみては?」と、映画監督で、イベントの主催者でもあった岸建太朗さんからご提案いただき『「桃仙人」考』を上演させてもらえることになった。初の遠征。いろんな場所でやりたいとおもっていたけれど、こんなにも早く実現するとは思ってもみなかった。岸さん、ありがとうございます。

演出の山本健介くんは主宰する「ジエン社」の公演があり同行できないので、毎日ひとりでぶつぶついいながら思い出し稽古。一度だけ稽古場をとり、音響オペを引き受けてくれたコースケくんに付き合ってもらう。久しぶりに人前で演じた。

『路地と人』での公演から日が経っていなかったことも幸いし、変なことにはならなさそうだったが、とはいえ、場所が変わればいろんなことが変わるのが芝居なので安心できない。今までキャスター付きの椅子を使っていたが、東京から持っていくのは大変すぎる。椅子は現地調達だ。音響設備も不明で、簡易スピーカーを持ち込んだ方がいいのか? 衣装は半袖だが、寒くないのか? そもそも、観に来てくれるひとはいるのか? いちいち不安。不安なまま飛行機に乗り、不安なまま北海道に降り立った。

前乗りしていたコースケくんと、映画の音楽を担当していた大杉くんが駅まで迎えにきてくれた。北海道に移住した大杉くんとは数年ぶりで、今回、彼が運営に関わっているイベントスペースでの催しだったのだが、とにかくお互い相変わらずで、会えてなかった数年の、お互いの話をして盛り上がった。不安は消え、はやく観て欲しいとすら思った。なつかしい顔を見て、すっかり和んだ。

20分ほどして、会場である恵庭市のイベントスペース「ジャンクション」に着いた。この日はトークイベント。車を降りてからも話は止まらず、スープカレーをいただきながらまだ喋り、そのまま映画上映イベントがはじまった。リピーターが多いということもあり、映画の上映中にコメントしたり(ビデオコメンタリー的な?)、気になったら止めて、撮影時のことを話すという、ちょっと変わった上映会になった。久しぶりに観てみて、恥ずかしかったり、誇らしかったり。まぶしい映画だった。

トークイベントを終え、明日の確認をし、宿に。
まだまだ話し足りなかったが、おとなしく寝た。北海道のさすがの寒さに震えながら、今村夏子さんのエッセイを、わらいながら読みつつ。声でた。

朝、リハーサルをさせていただけるとのことで、早めに会場入り。演出をいくつか変えたのを、コースケくんに見てもらう。納得いくまで何度もかえさせてもらう。その後、ゲネプロ。
「ジャンクション」は音楽イベントが主で、演劇は初とのこと。ギターやドラムセットに囲まれた、歌でもうたいだしそうな位置に、お借りした背もたれの高い木の椅子を置く。その上に小道具の文庫本をのせて、はじまるのを待つ。

人が集まり、開演。

はじまれば、あっという間だ。いつもどおり。一瞬で終わってしまうかんじがする。

大杉くんは、あたたかい感想とともに、「いろんな場所でやってみたらどうですか」と言ってくれた。「最近、100回やってみたら何かわかることもあるのかもなって思ってるんだよね」と応えると、「ああ、いいじゃないですか。ブルーハーブ(北海道のヒップホップグループ)みたいに、すべての都道府県にいけるんじゃないですか」と言った。うんそうだね、たしかに。なにしろわたしは身軽だ。

その後も、大杉くんが打った蕎麦(うまかった。奥さんが揚げてくれた天麩羅も最高にうまかった。ごちそうさまでした)を啜りながら話し、夜更けまで続く。これまでのこと、これからのこと。最後に「またなにか一緒にやりましょう」と、よくある社交辞令みたいな感じじゃなく言い合った。

寝るまえに、メガネがないことに気づいた。
きっと「ジャンクション」のトイレだろう、着替えたときに置きっぱなしにしちゃったんだ。なんとなく心当たりがあったので、明日、寄ってもらうことにして寝た。

朝はやく目が覚めたので、近所を散歩。雪の上を歩く。照り返しがすごくて目が開けられない。自販機もなくコンビニもない。ふらっと外に出ても、買えるものはなにもない。なにもないから買わなくていいや、となる。いいなと思った。普段、そこまで欲しくないものをなんとなく買ってるんだということがよくわかる。

朝ご飯をいただき、「ジャンクション」へ。
昨晩、しっかり挨拶をしたのだけれど、「改めて、昨日は本当にありがとうございました! 観ていただけて本当にうれしかったです! あ、トイレにメガネをわすれてしまいまして。ええ。取りにきてしまいました。えへへ。すいません。」とかいいながら、トイレに。しかし、ない。メガネがない。落とし物として届いてもいない。しかしいや、絶対ここにあるはず。だって、外してそのあと使ってないのだからここにしかないはず!絶対ここにある!と、強い気持ちが出てきて、「では、万が一見つかったらお手数ですが教えてください。あ、高いものではないので、無くなっちゃったとしても問題ないです。ご心配なく。」と、強い気持ちのまま言って、外に出た。

「まだ時間があるので、いろいろ案内します。ゆっくり空港に向かいましょう」

と、大杉くんは言い、彼が今やっている様々な事業の関連施設を紹介してくれた。それぞれ興味深かったが、みんなで作ったという馬場には特に惹かれた。
「今度、あそこで『「桃仙人」考』やらせてもらえないかな」とわたしが言うと、「いいですね。初っ端、馬に乗って登場したらいいんじゃないですか」と、ノッてくれた。

空港でお別れ。
また連絡するねと言って別れたあと、すぐにLINEで朗読の音源を送る。さっきも話したけど今こんなことをしたいので一緒にやってみないですか、と誘う。さっそく返信があり、アイデアをもらう。そんな感じで、断続的ではあるけど、大杉くんとのコミュケーションがまたはじまった。

気がつけば大晦日。
その後、メガネは発見された。
メガネを取りにまた北海道にうかがいたい。

来月は奈良へ。
奈良でもかみむら文庫をします。2回目の遠征。詳しくは改めてこちらでお知らせします。

今年からスタートしたかみむら文庫。
来年も隙あらばやりたいとおもいます。




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