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青くても信じてはいけない号

自転車とワタシ。

青信号はワタシたちを少し見逃しかけたようだ。

赤よりもコワイのは青。

ふとそんな言葉が浮かんだ。「安心して進め」の青ではない。「安全を確認して進め」の青だ。勘違いしちゃいけない。

そしてこの日それを猛烈に実感した。

深夜二時に近くのコンビニへとホテルの前の大通りを歩いてみた。あまり綺麗ではない街だから、こんな時間に出歩く自分もこんな時間でも荒い呼吸を続けている街もきらいになった。

ただ、ミントチョコレート味のアイスクリームが食べたかっただけなのに、甘ったるいのに刺激的な味を誇張するみたいにどんよりとした気分だ。

青信号だ。

しばらく経った赤信号の前は私のためだけに開かれて、ミントチョコレート味のアイスクリームのための時間を保証してくれていた。だけど、そんなに甘くはなかった。右からわたしの視界を乱すように自転車が近づいてきた。思わず立ち止まったけれど、横断歩道の白線に沿って目の前を風を切るように通り抜けた。

なにが青信号だ。

信じ切っていたら、ミントチョコレート味のアイスクリームは潰れていたじゃないか。冷たいままの美味しい時間を奪ったわりには、安全はおろか食べる時間までも保証なんてしてくれない。

青くても信じてはいけない号

信号を信じずになにを信じたら良いのだろう。少なくとも、あの自転車が走る世界では青信号なんてなんの効力も持たない。信じられていないのだから。いや、他に信じるものがあるのだろう。自分の目とか、鼻とか、そんなところだ。

悲しかった。自分の目を信じてミントチョコレート味のアイスクリームの時間を守ったワタシ、自分の目を信じてミントチョコレート味のアイスクリームの時間を食べた自転車が両方存在した。だれも信号を信じていないんだ。信号を信じたいワタシも信号を信じなかった。それが悲しかった。

青くても信じてはいけない号
もうあなたを心待ちにするのはやめにしよう