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HAMLET 2 #013 Once upon a time in America

■ベイ型補助揚陸艦 RFA Cardigan Bayの甲板にて

●去りゆくイギリスの大地を見守るジム

■ジムの回想。ベースの無線室での、ジュネーブ側との会話

「ジム・ビリントン君、blue stateを代表して、謝罪を申し上げる」
「謝罪なんて、要りません。生き残れたのは、ただの偶然ですし」
「本来なら、米国で君の身柄を保護すべきなのだが。知っての通り、米国は分断されて久しい」
「今はもう、何処もゾンビに制圧されているんじゃないですか?」
「だから我々はジュネーブに暫定政府を立ち上げた。国連を巻き込んでね」
「イギリスに居ても、じり貧になるだけです。妙案はないですか?」
「今、一番安全な場所は、人間の住んでいない場所になるだろう。
禁足地か、緩衝地帯だ」
「つまり……日本ですか?」
「そう。ロシアとの緩衝地帯内であれば、我々も、支援物資を投下できる」
「ちょうど、戦争博物館でホテル代わりに使われていた揚陸艦があります。
それで海に出ます」
「温暖化の影響で、今の季節なら、北極海回りの航路が使える。
きっと、たどり着けるだろう」
「ありがとうございます。頑張ります!」

※回想を打ち破る感じで、フランシスの嘔吐の音を被せて

「ヴヴっ~!!……げふっ、げふっ!!」

■けろけろと吐くフランシス。ケロッとしているメアリー。

「うわっ、きったなーい!
お姉ちゃんが、そんなに船酔いするなんて、あたし、思ってもみなかった」
「うぅ……なんで、あなたは、そんなに平気なのよぅ……ヴ、ううっ」

■フランシスの背中をさするジム。それが気に入らないメアリー

「フランシスさん、無理して喋らない。
ほら、全部出しちゃえば、楽になりますから」
「ぁ……ありがと……ぅ、ヴうっ」
「なっさけないなぁ。学者なら、自分で酔い止めくらい、調合すれば??」

●ブレスレットの中のAIが、強い口調のメアリーを、たしなめる。

「メアリー、弱っている相手に、そんなふうに言うもんじゃないですよ」
「うるさいわね、KID!」

●今度はジムが、荒い口調のメアリーを、たしなめる。

「あのさ。勝手に俺のコールサインをAIに付けるの、止めてくれない?」
「なによぅ、どうせ使っていないんだから、いいじゃない」
「いや、それは、そうなんだけど……」(頭をかく)

●AIが、助け船を出す。

「メアリーは寂しかったんです。わかってあげてください。
ベースでは、ずっと私を話し相手にしていたんですから」
「そうよ。KIDのほうが、ジムよりも話しやすくて、親切で、一緒にアニメ見てくれて、解説してくれて、とっても頼りになるんだから」(すねてる)
「おかげでメアリーが元気だったのは嬉しいけど、最近、俺に対する当たりが強くない??」
「それは、自分の胸に手を当てて、よーく考えてみなさいよ!」
「……」(胸に手を当てて、考えるポーズをするジム)
「もうっ!馬鹿にしないで!!」

●メアリー、船室に帰っていく。

「あっちゃー、こじらせちゃったかな……」
「……い、今のは、ジムくんが悪いわよぅ、ヴ、ぅ……ぅ、ううっ」

■メアリーが去っていった先にズーム。廃墟と化したイギリス。
■廃墟の一角に、ジム達が作った、簡素な墓碑がある。
■墓碑に掛けられた、イギリスと日本の国旗。

※日英の国旗が、モーフィングしてアメリカ合衆国の国旗へ変化(イメージ)

■「Once upon a time in America」のタイトル表記。

■2024年、米国大統領選挙の討論会の様子へ。

●テレビ中継。民主党と共和党の、両候補が討論をしている様子。

「本当に、そんなやり方が通用するとお思いですか?」
「思っているとも。問題は簡単だ。税収に対する、政府債務の多寡だ。
私と、私のブレーンは、それを帳消しにできると思っている」
「馬鹿げています!債務を引き受けるところが、あるというのですか?」
「ある!……正確に言えば、これから作る。これから作らせる。私がね」
「大言壮語が過ぎます。あまりに有権者を愚弄している!」
「どうやら、blue stateの君たちには、大きなビジョンが無いようだ。
マネーの問題は、ビジネスだ。ディールだよ。壮大なディールだ。
私には、類まれなビジネスの経験がある。
それを活かして、再びアメリカを偉大にする!」
「あなたの4年間で、どれだけ、この国が痛んだか!?」
「国を痛めたのは、君たちのほうだ!私の票を盗み、改革を止めた!」
「いまだに、当時の罪をお認めにならないのですね?」

●共和党の候補、カメラ目線で問いかける。

「愛する米国の同志よ、よく考えてみてくれ。
我が国が、こんなに借金を抱えた、我が国が、わざわざ世界に出て行って、保安官の真似をする必要が、何処にある??
なぜ、我々が、他国を、わざわざ守ってやらねば、ならんのだ!?
なぜ、他国の為に、尊い米国民の血が流れなければ、ならないのか!?
私は……」

bang! bang! bang!


●突然、銃声が響く。混乱する場内。駆け寄るSP。
●血の流れる耳をおさえ、立ち上がって、拳を突き上げる共和党の候補。

■共和党候補の、「星条旗と拳」の写真、雑誌の表紙を飾る。

※雑誌の表紙がめくられるイメージ。

■共和党出身の大統領の、一般教書演説のシーン

●税制の抜本的改革と、設立される巨大企業への債務移管が発表される

※同時通訳のイメージで。

「親愛なる米国民の皆さん。本日は、歴史に残る1日となるでしょう。
米国は、まさしく生まれ変わります。
米国民の、米国民による、米国民のための国家。
それが今日、生まれるのです。

米国民が担うべきは、米国民の未来のみです。
米国民が果たすのは、米国民への、義務のみです。
米国民が担う税は、消費税。そして、相続税のみです。
死後の相続税は100%。全ては、米国民の為に使われる。

それは何故か? 神の思し召しだからです。
金持ちは天国の門を、くぐれない。
ならば、全て差し出されるべきです。米国民の為に。
それが嫌なら、生きている間に使うべきだ。米国の為に、米国民の為に。
それが、それこそが経済の循環なのです。税源となるのです。

そして、その税金で、私はこの国に、地上の楽園を作ってみせます!

信奉する絶対唯一の神のもと、我々米国民は、平等であるべきだ。
信心深いものは、共に、神の楽園に戻るべきである。
そして、その楽園は、この地に作られるべきであります。

米国には、力がある。その力を結集して、世界最大の企業群を作る。
その企業が、米国の、過去全ての債務を引き受けるのです。
その企業は、間違いなく、過去を清算するでしょう。
そして、国家の無借金経営が、ここに実現します。
それこそが、現代の楽園です。

楽園建設の為に、米国は、世界の警察を辞めます。
世界の為の、世界最大の米軍は、無くなります。
同盟国は、自分で自分を守ればいい。
州軍は、国民を守るものとして、存続します。皆さんと共に。

経済同盟は必要だ。しかし、軍事同盟は、もう不要だ。
強大な軍隊は、世界に平和をもたらしたか? 否だ。
我が国は、既に多くの犠牲を払った。もう、こりごりだ。

ドルは、第一に、米国民の為に使われることになるだろう。
だから、米国民が、社会保障の薄さに、嘆くことは、もうない。
だから、米国民が、薄給で嘆くことは、もうない。
だから、米国民が、日々の暮らしで汲々とすることは、もうない。

米国民の皆さん、その米国企業に、金を使いましょう。
その米国企業で、働きましょう。
その米国企業の、商品を買いましょう。
その米国企業の、サービスを使いましょう。
それこそが、トリクルダウンです。米国民を、真に幸福にするのです。

私は、私の任期のうちに、必ず、実現してみせます!

そう、ここに誓います!

そう、ここに誓います!

そう、ここに誓います!

同じ神を信じる、愛する全ての米国民の為に、私は働きます!私は働きます!私は働きます!
神のご加護を!」


※熱狂する米国民の声。

--フェードアウト。

※ナレーション(ナカモトの声で)

「こうして、米国の巨大企業群、A TAX Factoriesが設立されたのだった。
『国に代わって借金を返す』という名目で、独占も寡占も推奨された。
この企業には、米国の過去の債務を返す間、絶大な権力が与えられた。
競争が減り、技術の進歩は停滞したが、多くの米国民は状況に満足した。
この企業群は、のちにA-MAX FACTORIESと改称され、やがて、日本の国難の後、廃炉と国土保全の全てを担う契約を、日米合同委員会のもとに締結。在日米軍基地を接収し、企業として初めて核兵器を保有する事になる--」

#013  Once upon a time in America、了。

この画像は、本編の内容とは一切関係ありません。

※本作品について(再掲)
本作は、1993年にPC-98版ゲームソフトとして販売された『HAMLET』および移植版の『SPACE GRIFFON VF-9』の続編となるストーリーで、西暦2149年を舞台としたSF作品です。登場人物や組織などは、実在するものとは、一切関係がありません。前作は、wikiやプレイ動画等でご確認ください。
なお、筆者は当該タイトルの原作と脚本を担当した張本人ではありますが、現在は、いち個人で執筆しており、HAMLET2の権利は筆者に帰属します。
しかしながら筆者は、この作品の二次創作・三次創作を制限するものではありません。どなたか奇特な方がキャラ絵を描いてくれると嬉しいです。


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