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HAMLET 2 #001 帰還

小羊が第七の封印を解いた時、半刻ばかり天に静けさがあった。
それから私は、神の御前に立っている七人の御使を見た。
七つのラッパが彼らに与えられた。
別の御使いがきて、金の香炉を手に持ち、祭壇の前に立った。
たくさんの香が彼に与えられていたが、これらは、すべての聖徒の祈りに加え、金の祭壇の上に捧げるためのものである。
香の煙は、御使いの手から聖徒の祈りと共に、神の御前に立ちのぼった。
御使いは、その香炉を取り、祭壇の火を満たして、地に投げつけた。
すると、多くの雷鳴と、もろもろの声と、いなずまと、地震とが起った。
続いて、七つのラッパを持つ七人の御使いが、それを吹く用意をした。

ヨハネの黙示録 第八章より

※以上、ナレーションまたは文字画面スクロールなど。
-場面転換。

■大気圏上空

●大気圏上空のシャトル。照明色は青。
 機内、サイレントモードでスクリーンに状況表示がされている。
 (以下、状況表示と機内アナウンスは、全て英文)

・地球圏の識別コードを確認
・大気圏侵入角、調整
・出力調整、出力調整
・大気圏侵入、大気圏侵入
・本船は電離層下にあります。本船は電離層下にあります。

●眠っているジムとメアリー。安心した感じ。
 スクリーンにアラート表記。
・トランスポンダより受信中…トランスポンダより受信中

●サイレントモード解除。シャトル内に突如、警告が鳴り響く。
照明色は赤に。機内アナウンス
・警告!緊急事態条項 第369項が発現中の為、本船はターゲット0へ向かいます。
・警告!緊急事態条項 第369項が発現中の為、本船はターゲット0へ向かいます。

●ジムが慌てて目を覚ます。

「!!……クソ!……なんだよ、いきなり……??」

立ち上がろうとするも、意識がハッキリせず、体がふらつく。
地球の重力に体が慣れていず、シートに倒れこむようになる。

モニター内、状況表示
・目標補正:ターゲット0 目標補正:ターゲット0
・アイハブコントロール アイハブコントロール
 機内アナウンス
・警告!緊急事態条項 第369項が発現中の為、本船はターゲット0へ向かいます。
・警告!緊急事態条項 第369項が発現中の為、本船はターゲット0へ向かいます。

「このままじゃ……A-MAX FACTORIESに連れていかれちまう……」

モニター内、状況表示
・突入角補正 突入角補正 ローンチ on ローンチ on

●ジム、音声コマンドで目標変更を試みる。

「コンピュータ、自動操縦解除」
「緊急事態条項 第369項が発現中の為、自動操縦は解除できません」

「コンピュータ、外交特権コード入力」
「外交特権コードを指定してください」
「外交特権コード、アルファ・タンゴ・コードワン・ワンエー・ツービー」
「外交特権コードの付与元を提示してください」
「マイケル・ビリントン、英国・保守党議員」
「照会中……(NG音)……外交特権コード、使用却下」

「親父の奴、やっぱり塞いでたか……じゃあ、証人保護プログラムでの目標変更を申請する」
「WITSEC申請要件を提示してください」
「ジム・ビリントン、A-MAX CLEANER所属。HAMLETでの事件を議会証言する為、保護を申請する」
「A-MAX CLEANERの社員コードを発話してください」
「社員コード、AYU-5QWKPS」

「照会中……(OK音)……証人保護プログラム許可。貴方は米国連邦議会により保護されます。
参加中のミッションは、終了扱いとなります。A-MAX CLEANERより、貴方に英国国籍が返還されました」
「……ふぅっ。A-MAX FACTORIESとアメリカの繋がりが切れてなくて、助かった……」

●ジムは安堵。汗が額を流れる。

「本船は、米国連邦議会の権限により、証人保護プログラムのもと、船籍をA-MAX FACTORIESから離脱。自動操縦は、解除されました」
「コンピュータ、目的地を再設定。進路をイギリスへ」
「本船を、何処に着陸させますか?」
「一番早く、着陸できる場所は何処?」
「検索……(OK音)……サフォーク州、ウッドブリッジ飛行場」
「そこへ進路を。自動で着陸して」
(OK音)。警報解除。
-場面転換。

■英国領空

●やがてシャトルは英国の領空へ。
英国空軍の戦闘機が、一定間隔をとって随伴飛行している。

■国防会議

●イギリス国防会議、数名が対策会議中。
「例のシャトルが、我が国の領空に入りました」
「A-MAX FACTORIESか。いち企業が、舐めた真似をしてくれる」
「随伴機からは、いつでも迎撃が可能!」
「認識コードが、米国のものに変わったそうです!」
「外交問題にするつもりだな。この面倒な時に」
「ウッドブリッジに向かっているのは、確実なのか?」
「軌道からは」
「そこは、もともと軍事基地だ。何かしらの謀略を感じる」
「我が国を巻き込むつもりなのだろう」
「そういう訳には、いきませんな」
「これは好機ですぞ。我が国の立場を、はっきり見せつけましょう」

■再び英国領空

●英国空軍の戦闘機が、離れていく。
●シャトル内に警告が鳴り響く。照明色は黄に。機内アナウンス
・Attention、レーダー照射を検知。スキャンされています。
・Attention、レーダー照射を検知。スキャンされています。

■シャトル内

●あたりを見渡すジム。メアリーの弱弱しい声に、やっと気がつく。
「ジム……どうしたの……」
「大丈夫だよ。メアリー、調子悪いのかい?……大丈夫??」
「カラダがね……すごく重いの……動けない……」
「きっと、地球の重力に慣れていないんだよ。
しばらくすれば、きっと良くなる」
「ぅん……わかった……」

●シャトル内に警告が鳴り響く。照明色は赤に。機内アナウンス
・警告!ロックオンされました。
・警告!ロックオンされました。

●ジム、焦り顔に。心配したメアリーが声をかける。
「ジム……大丈夫……??」
「ああ、心配しないで!二人は絶対に守る!」

●ジム、メアリーとフランシスの寝るシート脇のスイッチを押す。
●メアリーとフランシスの寝るシートが、救急救命ポッドに変形する。
●シャトル内に警告が鳴り響く。照明色は黒の明滅。機内アナウンス
・警告!熱源感知。警告!熱源感知。
・接近中!接近中!

●接近警報アラームが鳴り響く。
「クソ!…間に合えッ!!」

●ジムはグリフォンに乗り込む。

■外部から見たシャトル、グリフォンが飛び出す

●アサルトモードのグリフォン、両脇に救急救命ポッドを抱え、シャトルデッキから飛び出す。
●上空で、シャトルはミサイルにより迎撃され、空中爆発。
●救命ポッドを抱えたグリフォンは、レンデルシャムの森に墜落していく。スラスター全開で衝突回避を試みる。

■レンデルシャムの森

●救命ポッドを守る為、反転し、背面から森に墜ちていくグリフォン。
森の木々をクッションに滑走して減速。機体は数度横転。
●グリフォンは損壊し、前のめりに機種をめり込ませるようにして停止。
●コクピットハッチが衝撃で自然に開く。ジムは怪我をして流血している。
幸い、救命ポッドは無傷で無事。
-場面転換。

■レンデルシャムの森の奥。墜落したグリフォン

●森の中、異常を感じた飼い犬が、飼い主の老人を振り切ってグリフォンのほうへ、吠え、走っていく。
「おーい、何処へ行くんだ、マックス」
「ワンワン!ワンワン!」

●グリフォンのコクピットハッチの前で吠えている犬。
何かと対峙し、直後に警戒した様子を見せる。
「ウー!!……キャイン、キャイン、キャイン!」
●犬に、何やら赤い塊のようなものが飛びつく。
叫び声をあげて、犬は絶命。

●そこに飼い主がやってきて、ケガをしたジムに気づく。
「あ!!……おい、あんた、大丈夫か!?……おい、しっかりしろ!」

●犬から変化した怪物、背後から飼い主を襲う
「グルルルル……」
「??…う、うわぁぁああ!!」

●茂みの中に引きずられていく飼い主。怪物と化した犬に食われる。
●森の中に響く、怪物の叫びと咀嚼音。

-フェードアウト

#001 帰還、了。

■登場人物紹介
●ジム・ビリントン
20歳。前作にて、A-MAX CLEANER(巨大企業群AMFの私設軍隊)に所属して、HAMLET突入作戦に参加。テストタイプの新型機VF-9に搭乗して見事に戦い抜き、今作で地球に帰還した。英国人。

●メアリー・レイクウッド
月面生まれの18歳の少女。後述のフランシスとは異母姉妹である。HAMLETの第三世代で、月で生まれ、月でしか暮した事がなく、自らを月人と称していた。

●フランシス・レイクウッド
HAMLETで細菌の研究をしていた科学者でメアリーの姉。27歳。元々は地球で暮らしていた。前作でケガを負うも、シャトルの救護カプセルへと運ばれ、今作で地球にたどり着いている。

※本作品について
本作は、1993年にPC-98版ゲームソフトとして販売された『HAMLET』および移植版の『SPACE GRIFFON VF-9』の続編となるストーリーで、西暦2149年を舞台としたSF作品です。登場人物や組織などは、実在するものとは、一切関係がありません。前作は、wikiやプレイ動画等でご確認ください。
なお、筆者は当該タイトルの原作と脚本を担当した張本人ではありますが、現在は、いち個人で執筆しており、HAMLET2の権利は筆者に帰属します。
しかしながら筆者は、この作品の二次創作・三次創作を制限するものではありません。どなたか奇特な方がキャラ絵を描いてくれると嬉しいです。

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