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影響力の武器を読んでみた

影響力の武器

ロバート・B・チャルディーニ著
〜なぜ人は動かされれるのか

セールスや交渉の様々な場面でよく使われている承諾誘導テクニックの基本となる人の行動をつかさどる原理について書かれたとても有名な書。
この本に書かれているポイントをまとめまてみました。

はじめに

根拠もないのに人はAが起こるとBという反応してしまうケースがしばしばあります。
これを本書でカチッ・サーの法則としていくつかの例で説明しています。

七面鳥の母鳥はピーピーと鳴くヒナをとても大切にめんどうを見ます。
ところがヒナ鳥が鳴かないと面倒を見ないばかりか殺してしまうこともあるそうです。
そこで行った実験で、七面鳥の天敵である毛長イタチのはく製を親鳥に近づけます。
すると当然母鳥はイタチに猛攻撃をします。
そこで今度はイタチのはく製にテープレコーダーを仕込み、ひな鳥のピーピーという鳴き声を流してみたところ、なんと母鳥は自分の羽で包み込んでしまったというのです。

これは動物の話ですが、人間でもこのような例があります。
オフィスでコピーを取ろうとしたときすでに誰かがコピー機を使っていました。
そこで後から来た人がすでにコピー機を使っている人にこう言います。
「コピーを取らなくてはいけないので、先に使わせてもらえませんか?」と、このコピーを取らないといけない”ので”という理由は全く理由になっていません。
これは実験で、ただ単にコピーを取らせてくださいとお願いしたよりも、
語尾に意味不明な”ので”を付けたほうが高い確率でコピー機を譲ってくれたそうです。

<人の行動をつかさどる基本的な心理学の原理がある。>

六つの原理

1.返報性
親切や贈り物を受け取ると、お返しせずにはいられない心理。

・試供品を配ったり、グッズや小物のプレゼントをする日常的によく見かける販売手法。

・一度拒否させた後に譲歩して頼みごとを承諾たせてしまう方法。

・ハードルの高いお願い事の後に、より容易なお願いをして要求を通しやすくする方法。

・逆により小さな要求から始めて、さらなる要求を相手にのませる手法もよくみられる。

このように決定のプロセスを伴うと相手に満足感を与える効果もある。
自分の交渉、選択がうまく行ったという満足感があるので、その後も要求をのみやすくなる。

2.コミットと一貫性
人はひとたび決定を下したり、ある立場をとるとその決定、立場と一貫した行動をとりやすくなる。

・人は他者から一貫している人だと見てほしい。そうのほうが信頼を得ることが出来る。

・思考の近道。複雑な現代生活の中で生じる問題について真剣に考える必要を無くするために、
テンプレートのように一貫した立場を取りやすくなる。

・理路整然と考えると、望んでいない答えが出てしまい、面倒が増えることの回避。

コミットメントがより効果的に影響を及ぼすために3つのポイント。
①.公表されること ②.努力を要すること ③.自分の意志で選ぶこと

これらが複合して働いて効果を出している例

・行動の持つ力:行動が自己イメージや将来の行動にじわじわ影響を与える。
 ~「ボランティアに参加する」という用紙に記入させたグループと、何も書かせなかったグループの比較実験。
  用紙に記入したグループのほうが数日後実際に参加する率が高かった。
  ほんの些細なコミットメントが、らさなる一貫した行動を生み出す。

・公衆の目:意見を書くといくコミットメント
 ~他人に見えるような形で自分の立場を明確にすると、一貫した人間に見られたいばかりにその立場を維持しようとする。
  目標を設定し、紙に書くことで実現可能性が高まる。

・努力の後に続くもの:コミットメントに労力が投入されればそれだけ強化される。
 ~コンサートチケットの値段を購入電話をかけた時に知らせるようにしたことで、
  事前に知っていた時よりもチケットを買う気になりやすい。
  何度も電話をかけ、時間と手間をかけたことが買うという決断を強化している。

・自分で決めた:人は外部からの圧力なしに、ある行為をする選択を行ったと考えると、
  その行為の責任が自分にあると認めるようになる。
 ~子供をしつけるとき、単に罰を与えるというと親がいるときや、見つかると思う時は効果があるが
  隠れて悪いことをしたり、ずるをしたりする可能性が高くなる。
  なぜいけないことなのか理由を飲みこめるように話してあげると効果がある。

 ~自動車販売店で、法外に安い値段で買う決心をさせる。そして1日乗車を勧め購入者に買うことの正当性を強化。
  その後計算上のミスが見つかり、¥40000上乗せになるが、
  その時はすでに買う気持ちが強化されているのでキャンセルになる確率は低い。

3.社会的証明
サクラはなぜ効果をあげるのか。
テレビ番組で演出として使われる笑い声:
視聴者の多くはインチキで見え透いたやり方とわかっているのになぜか影響されてしまう。

・他社がもたらす力:人は他の人たちが何を正しいと考えているかかを基準にして物事を判断する。
 ~BARなどで募金箱に前もってお金を入れておくことで、その後続いて入れる人が多くなる。

 ~セールスマンはすでにその製品を買った人たちのことを織り交ぜて話をするよう教えられる。

社会的証明の原理が最も効果的に働く条件
 ①.自分自身に確信が持てないとき
 ②.状況の意味が不明確あるいは曖昧なとき
 ③.不確かさが蔓延しているとき
⇒これらの時他者の行動を正しいものと期待し、それを受け入れてしまう。

注意:「集団的無知」
   曖昧な状況では特に皆が周囲の人たちの反応を知ろうとしているという誰も確証のない状態であるということ。
 ~実験者が1人、あるいは数人の前でてんかんの発作に見舞われるふりをする。
  居合わせた人が1人のとき⇒援助をした確率は85%
  居合わせたひとが数人のとき⇒援助をした確率は31%

援助の確立が下がった要因は、ほかの傍観者の存在。
  人が複数いる場合、行動する責任が自分にあるのかどうか確信がもてない。

<自分が犠牲者にならないために>
群衆から1人を分離して、その人に対して行動する必要性を伝える。
その人だけを見つめてまっすぐに指を差し、「助けてください!救急車を呼んでください」と援助を求める。

・類似性←社会的証明の原理が強まる条件。
他の人と自分が似ていると感じる部分がある場合、人は自分と似た人の行動をまねる。

ウェルテル効果:若きウェルテルの悩みの主人公、ウェルテルをまねた自殺が相次いだ。
  また、新聞で自殺が報じられたり、自動車事故、航空機事故が報じられると同様な事後が増加する。

注:誤った社会的証明に影響されないために。
①.類似した他者の行動の中に明らかに偽りの根拠がないか探す。
②.類似した他者の行動だけを決定の基礎としない。

4.好意
一般に私たちが最も頼みごとを聞いてあげたいと思うのは、相手をよく知っていて、しかも好意を持っている場合。

~タッパウエア・パーティーではすべての影響力の武器が用意されている。
  返報性:最初にゲームをやり、勝った人に景品をあげる。ダメだったとしても何かしらの品物をあげる。
  コミットメント:参加者はこれでのタッパウエアーを使った経験から、その便利さや新しい使い方を皆の前で話す。
  社会的証明:購買者は販売が始まると、自分と似た人びとがこの品物をほしがっているのだからよい物と判断する。

そして、本当の力の源は「好意」のルール。
  実際に品物を買ってくださいと言うのは、語り口が面白く説得力のある販売員ではなく友人。

もともと友人でない人とどうやって友人になるか。
⇒自分の全体的魅力を高めるような要因を強調する。

・外見の魅力:ある人が望ましい特徴を1つ持っていることで、その人への見方が大きく影響を受ける(ハロー効果)
  なかでも身体的魅力は生じさせ、才能、親切さ、知性に関する評価を高める。

・類似性:好意と承認に影響する要因。
  自分と似た人に好意を持つ。
  意見、性格特性、経歴、ライフスタイル、服装。

・お世辞:自分が相手に好意を持っていると伝える。

・接触と共同:馴染みのあるものに好意を感じる。
 ~選挙で投票するとき、ただ名前に聞き覚えがあるというだけで表を入れてしまう。

ポイントは、不快な環境ではなく、快適な環境のなかで接触があると好意を促進する。
例えばスポーツファンなど。

5.権威
人は権威者の命令にはとかく従おうとする。

・専門家 この権威者の圧力が明白で強力なのが医師。
     この領域で膨大な知識と影響力を持つ医師は尊敬されるべき権威を持つ。

  問題点:医師が明らかに間違っていても、その医師より低い地位の人は誰も医師の判断に疑問を持たない。

・肩書の力 最も簡単に偽装できるシンボル。ラベル付するだけで相手から承諾を自動的に得ることが出来る。
      大学教授、俳優、政治家、医師。

・服装 これも手っ取り早く偽造可能なシンボル。
  実験:普通のカジュアルな服を着ている人よりも、警備員の服を着ている方が多くの人に頼みを聞いてもらえた。

・装飾品 宝石、自動車
  例:高級車に乗っている人に対して特別な敬意が払われることが多い。

6.希少性
手に入りにくいものや、機会が少ないものの方がより貴重なものに感じる原理。

・数量限定戦術
  例:販売店で、「このエンジンを搭載したオープンカーは国内に5台と残っていません」と言われるとなぜかたまらなく欲しくなる。

・時間の制限 最終期限戦術
  例:映画の宣伝キーワード ~独占、特別・公開、終了・間近!

・心理的リアクタンス 希少性の原理にある力の源。
  何かを手に入れる機会が減少するとき、より価値あるものとみなすようになる。
  その時の自由を失うような感覚。
  すでに持っている自由を失う時、人はどうにも我慢できない気持ちになる。
 →心理的リアクタンス

・検閲 禁じられたもの、制限されたのもが欲しくなる。
  例:スーパーや小売店の仕入れ係に、牛肉の仕入れにかんして標準的な販売プレゼンテーションに加え、
    今後牛肉の供給が減るという情報を与え、更にこの情報はまだ一般に知られていない情報で、独自の情報網からのものだと伝えると、
    通常の2倍も買い入れた。
    
    商品と、それに関するニュースも制限されていることで二つの希少性の原理が働いている。

・最適の条件 他の場合よりも強く効果を発揮できる条件。
  ①.自分の意志で選ぶことある品が新たに希少なものとなった場合、最初から少なかった場合より、多かったものが少なくなった場合のほうが貴重と感じる。
  ②.他人と競い合っている場合、より貴重に感じる。
    少ない資源を求めて競いあっているという感覚は人々を強力に動機付ける。
 例:ライバルが現れた途端、冷えた恋人の心に情熱が渦巻くようになる。
 例:デパートの特売コーナーで商品を奪い合って求めている。

7.手っ取り早い影響力
人や物について何かを決定する時、人は利用可能な全ての情報を使ったりせず、全体を代表するたった一つの情報だけをあつかう。
問題点:明らかに愚かな間違いをしでかす危険性がある。

現代を表すキーワード:新奇性、一過性、多様性、加速性、情報量の増大、選択のの拡大、テクノロジーの進化

人は、現代の生活の特徴でもある変化を選択と課題が溢れかえった状況を扱いきれない。

情報が多すぎて何も決められない状態の時、ある単一の、たいていは信頼できるであろう特徴に注目するようになり、
手っ取り早い意思決定を行う機会が増えている。

よって、承諾誘導の専門家はますます成功しやすくなる。

注意点:私たちは思考の近道によって不利益をこうむらないために、承諾誘導側による意図が搾取的でないことと、
承諾を引き出すきっかけが捏造されたものでないことを見極める必要がある。

感想
この本を読み終えて、私たちが決断、行動するときに無意識のうちに様々な自動操縦が働いていることがわかりました。
そして、これらの原理を整理できたことで社会で使われている様々な承諾誘導の手法がどう働いているかわかり、不要な選択をしないための防御として、自分が発信する際の手法の基礎として活用できると思います。

興味のある方はぜひこの本を読んでみてください。



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