いま何か悩みを持っている方へ

私が中学生くらいの頃の話だ。
日々何かに悩んでいた。
進路とか友達関係とか部活とかだと思う。
普通の中学生である。

ある日、その時もその時で考えても解決しようも無い悩みで自宅でウジウジしていたら、目の前に父がいた。リビングのソファに座り新聞を読んでいる。そういえばこの人が困ったり悩んだりしているの見たことないな。

話せば面白いことを言うのに普段は無口でいつも新聞を読んでいる。

「お父さん。こんな時どうする。」
詳細を全く思い出せないが、珍しく父に相談と言うか悩みの内容を伝えたのだと思う。
悩みの内容が思い出せないのは、その後の父の回答が見事に私の悩みを解決したからだ。

父は新聞を置いていつも通りの悪人ヅラでこっちを見てきた。
「ぴーちゃん(あだ名)」
本名と一切関係ない謎のあだ名で呼ばれていた。
「宇宙。宇宙知ってる?」
う…?
「宇宙?し、しってる…けど、そんなに知らん」
父が夜空を見上げて星に思いを馳せてる姿なんか見たことないし、むしろ父の方こそ宇宙に興味ないだろ、と思って驚いた。父は続けた。
「広いのよ、とにかく。すっごい広いの。端っこないくらい。それで、その宇宙に地球が砂っぶより小さいレベルであるわけ。で、その小さい地球にわずかーにある陸地、その中でも極小の日本の点みたいなところに、さらにちっこい点であんたがいるわけよ。」
「ま、まぁ、そうだね…」
「その宇宙から見たら超ミクロなあんたのその悩み、宇宙から見たらどうだと思う?」
「見えない……」
「そう。あんたの悩みは宇宙から見たら無なの。無いの。はい。」
父は視線を新聞に戻しその話は終わった。

今では何を悩んでいたのかも思い出せない。
そして、35歳になった今も、考えても答えの出ない悩みが発生すると意識を宇宙に飛ばし、宇宙から自分の悩みを見下ろす事にしている。
もうそこには何も無くなっている。

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