大人なゲーム
プレステとは大人である。
発売当時10歳だった私はプレステは大人なゲーム機だと思っていた。
大人の、ではなく、大人な、だ、
濃いめのグレーの本体にくびれの強いちょっと尖ったデザインのコントローラー。
そしてソフトはディスクタイプで、セーブは別の媒体を使うらしい。
アダルトなデザインに複雑なシステム。
『さて初めてゲーム機を買ってもらおうかね』となる10歳女子がプレステを選ぶにはそれはあまりにも大人の雰囲気を醸し出していた。
プレステ。
それは大人の証明である。
そして、私とプレステの邂逅はその後、20年持ち越される。
32歳で結婚して、夫がゲーム好きと知った。
夫はPS2を持っていた。
世は大PS4時代である。
そして、夫が欲しいタイトルの新作が発売されると聞き、ついにPS4が我が家に来た。
本体、超アダルト。
ディスクどこから入れるの?電源ボタンどこ?え、コントローラーにコードないじゃん!てゆーか私が本体は白ってリクエストしたけどマジ真っ白じゃん!
なにどう置くのこれ!どこが底面なの?
うわぁ!電源入れたら何か未来の音がした!まだソフト入れてないのに何か選べる画面!
だ、ダウンロードできるの?ゲーム?ネットワークつなげるのね!?
ソフト買わないの?あ、ディスクソフトを買うこともできるのね、あ、そう。
プレステの最終実績がいわゆるプレステ1なので、驚きが隠せない。そして上がり続ける興奮度。
企業勤めなのでPCも電子機器も毎日見てる筈なのに、何もかもが新鮮に感じる。
『俺の兄貴、プレステ持ってるんだぜ!』と言われ、友達のお兄ちゃんのプレステをこっそり見に行った時のあの気持ちだ。
あの時はプレステいじると怒られるからこっそり何かのゲームをやるのを見せてもらったな……何か車が走っているゲームだった……。
あの時のあれが、似ても似つかぬ形で目の前にある。
しかも所有物としてだ。
さ、さわっていい?
夫に聞くとどうぞ、と言われる。
コントローラーはあの時よりも丸みを帯びて手に馴染む。
本体は形が変わったけどコントローラーは基本形を保っていて、あぁ、この形は最初から完成されていたのだと感動する。
夫はPS4を使って自分が一番好きなゲームを教えてくれた。
KINGDOM HEARTSだ。これは違うコラムに書いた。
ハートレスが現れた
週末はツマミを作り、好きな酒を飲みながらプレステで映画を再生したりゲームをしたりする。
トルネも買ったので録画したテレビ番組も見る。
録画し忘れていないか出先からスマホで番組表を確認する。
34歳。
最先端のIT機能を積んで、プレステは私を待っていてくれた。
ゲームがド下手な私でも、ゲーム以外の部分でプレステで遊べるよう、プレステは進化して待っていてくれた。
涼し気な顔をしてそこに鎮座しこちらから接触を図ると未知の楽しみを教えてくれる。それはまるでよく行くバーの奥にいつも一人で座る寡黙なイケメンに勇気を出して話しかけたら色々な遊びを教えてくれた、と言うような。
プレステはやはり大人なゲーム機である。
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