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北辰テストの上手な受け方


1.北辰テストの役割

北辰テストとは、埼玉県の高校受験を対象にした北辰図書が実施する民間業者の模試のことじゃ。ワシが神様見習の頃から存在する、もはや埼玉県の伝統芸能と言っても良い試験じゃな。当時は公立中学校で、半ば専売特許のように受験し、その結果を学校の面談で使っておったが、コンプライアンスの影響もあり、現在は公立中学校とは完全に独立した民間模試になっている。なお、埼玉県あるあるでよく話題になるが、北辰テストは全国ではないので、県外の受験生や親御さんと話をしても何のことやらわからないので注意じゃw

北辰テストには簡単に言うと、下記の2つの役割がある。

(1)私立高校の確約基準

埼玉県の私立高校は、多くの学校が「確約」という合格の事前約束のような制度を導入しておる。先に言っておくが、慶應志木、早大本庄、立教新座のような学校と、各学校の特待生コースに確約はなく、本番の試験で基準点以上を取る必要がある。逆に言うと、それ以外のほとんど9割以上の学校では「確約」で実質的な合格を手にすることが可能なのじゃ。

「確約」という言葉は公式には使ってはいけないらしく、各高校も中学校の面談でも「安心して受験してください」「この北辰偏差値で受験して落ちた例は過去にはありません」というような、回りくどい言葉遊びをしておる。しかし、各高校が示す基準以上の偏差値が取れていれば、当日の試験を白紙解答でもしない限りまず合格じゃ。

この確約に必要な「偏差値」が北辰テストの結果なのじゃ(駿台模試で良い場合もあるが、、、難しすぎるな)。典型的なケースでは、7月(第3回)北辰テスト以降12月回までの結果から、偏差値の高い結果を2つ選んで高校の基準と照らし合わせることになる。4月や6月の北辰テストは通常の場合、確約の対象にはならないので、あくまでも7月以降で高得点を取ることが求められる。例えば、栄東高校のような上位校の場合、例年で言うと北辰偏差値が70を2回超えたら確約になっている。2回の平均ではなく、各校が示す基準偏差値を2回超えることが条件になるケースが多い。この2回越えの結果を持って、各学校の個別相談会に行くと「確約」が口頭でもらえることになるのじゃ。

なお、北辰偏差値は5教科でも3教科でも、そのハイブリッド(7月回は5教科で70越え、9月回は5教科が69だったが3教科で70越え、⇒トータルで2回の70越えで確約成立!)でもよい。大宮開成高校など、3教科の偏差値に限定している学校やクラスもあるので、念のために事前相談会・学校説明会などで確認して欲しいのう。

(2)公立高校入試対策

北辰テストは、公立高校入試の形式を模して作成されておる。したがって、北辰の形式に慣れておくことで公立高校入試の対策も同時に行えることになる。国語の作文、英語の作文、数学と英語の難易度(選択問題)などは、特に夏休みまでは公立入試よりも大幅に簡単じゃが、夏休み以降は難易度も上がり、作文の様式も選択問題の本番と類似してくる。

2.4月からの北辰テスト対策

4月から来年の1月までの北辰テストは長丁場じゃが、その時期に応じて対策や心構えを切り替えていかないと、無駄が多く、効率よく目標偏差値や学力増強を実現することができない。そこで、時期に合わせた北辰テストとの付き合い方を特別に授けてしんぜよう。

(1)4月及び6月の北辰テスト

まず受けた方が良い。部活もあり忙しいとは思うが、可能な限り受けて、その様式に慣れるのじゃ。また、この4月と6月に出題された単元(理科や社会の分野)は、7月以降の確約に使われる試験回には出ないので、当面の単元の優先順位を絞り込める利点もある。4月は北辰図書が販売している過去問を1回くらいは解いてから受けて欲しいが、ノーベンでも仕方ない。6月に関しては期末テストと時期的に重なることもあるので、内申点を考えると、そこまで北辰テスト対策をすることもないな。

(2)7月及び9月の北辰テスト

期末試験が終わった瞬間に、全力で北辰7月対策じゃ。その理由は、7月&9月の最短で目標偏差値を叩き出し、10月にはとっとと私立の確約を手に入れたいからじゃ。そうすれば、10月以降は「滑り止め」の安心の上で、公立対策に集中できる。北辰テストは可能な限り早く卒業したい(10月以降も受け続けた方が良いが、偏差値をとらなねばならないストレスとは無縁になる)。また、9月回までは社会で言うと「公民」が範囲に入らず、理科では3年の範囲(イオン等)が入らない。つまり、10月以降は、試験回数が進むにつれて、新しい試験範囲がどんどん増えるので対応が面倒になるのじゃ。

(3)10月~12月(及び1月)の北辰テスト

この3回は確約に向けた予備と心得よ。7月からの結果と合わせて目標偏差値が取れたら私立受験は事実上の終了じゃ。到達できなかった場合は、私立のランクを下げることと、併せて公立高校の志望校も見直す必要が出てくるかもしれん。
早々に目標偏差値を取った子羊さんは、視点を公立入試の模擬練習に切り替えるのじゃ。特に12月回と1月回(確約には遅すぎて使えない)は、選択問題が用意されているので、公立入試のシミュレーションになる。理社の試験時間も11月までは40分と短いが、最後の2回は公立入試と同じ50分になる。

3.北辰テストの特徴

最後に特徴を簡単にまとめておこう。詳細については教科ごとに、別の投稿で分析をした結果をお届けしようと思っておる。残念なことに、多くの学習塾では、最大手も含めて、この北辰テスト対策が手薄になっておる。特化した授業は夏休みの数日に、オプション費用で行われる特講くらいじゃな。

(1)数学

大問1だけで半分近くの点数が取れる。取れる問題を絶対に落とさない対策が必要じゃ。大問2には作図や空間図形などで、まれに難問が含まれていることがある。大問3は規則性とよばれる中学校ではほとんど教えてくれない問題(ベースは私立中入試)が頻出するので、対策の有無が得点差を生む傾向にある。大問4は当面のところ関数問題で道の座標を文字でおいて方程式で解く問題。最後は合同証明からの求積問題じゃ。数学には難問も多く、前から順番に全てを解こうとすると時間切れで点数を落としてしまう。解いてはいけない問題の選球眼を磨くためにも、過去問をたくさん解いて欲しいのう。

(2)国語

中学校の授業や、いわゆる一般的な参考書や問題集が言う読解力では歯が立たない。大問1の小説と大問3の論説は、ともに指定語を使った要約や置き換え(パラフレーズ)の技術が問われている。雰囲気や主人公の気持ちになって、というような曖昧な読み方をしていると点数は上がらない。そして、絶望的に時間が足りなくなるので、埼玉県の国語読解にはスペシャルなスキルが求められる。
大問2も知識問題に加えて、対話式の問題を読むのに時間がかかる。大問4は公立入試と同じで漢文は出ない(基本的には古文)。最後に作文がくる。作文は北辰テストの実施月によって内容が変化していく。最初は簡単な意見文で、最後は2つのグラフを読み取る問題。共通しているのは自分の経験に基づいて文章を取りまとめるスキルが要求されていることじゃ。これも、事前にパターンを作成することで、時短と高得点を狙うことが可能じゃ。

(3)英語

夏休み明けまでの回はレベルが低いが、減点されないためのクセも強いのが北辰テストじゃ。月、曜日などの基本的な単語の綴りが書けるか?英問英答では意訳ではなく1対1で完全な訳が出来ているか?代名詞を適切に使った英訳が出来ているか?などなど。最初のうちは何故減点されているのか不思議な経験をすることもあるじゃろう。この辺りは、別の機会に解説したい。
また、並び替え対策も必要じゃ。英語を熟語や文法でカタマリにして解いていく技と、並び替え箇所の前後の接続を意識した訓練が必要じゃな。英作文も最初のうちは簡単じゃが、後半は公立入試と同じ様式(選択問題)に対応する訓練が必要になる。この頃になると、国語と同じで長文読解に時間が絶望的に不足するという課題に直面するじゃろう。その対策も後々、解説したい。それから、リスニングは年々難しくなっている。早めに北辰の過去問や、何か適切な問題集などを手に入れて、空き時間に継続的に取り組んでおくとよいな。これからの時代、英語は読解だけではなく、4要素と呼ばれるリスニング、ライティング、スピーキングを合わせた総合力が問われる(大学入試や、その先のTOEICなどでもな)。その基礎となるのは、聞き取り能力とも言えるからのう。

(4)理科

理科は1年から3年までのバラバラの単元を学年を超えた串刺しの分野で見る目が大切じゃ。その分野とは「生物」「化学」「地学」「物理」じゃ。例えば地学なら、1年生の地質・地震、2年生の気象、3年生の宇宙(天文)という流れじゃな。それぞれの分野から選ばれた問題が大問を構成している。大問1のみ分野を超えた短問じゃが、大問2からは各分野ごとになる。短期的に効率よく北辰対策をする場合、例えば4月回で地学に地震が出題されたら、次の6月回は気象の可能性が高い(3年分野は9月まで出題範囲外)、という感じじゃな。基本的な対策は過去問と、電話帳と呼ばれる市販問題集(分野別の公立過去問)になる。

(5)社会

社会は北辰10月回までは公民が出題されない。なので、7月と9月で目標偏差値を取り切ると楽じゃな。勢い北辰対策は地理&歴史になる。地理は正直なところやる事が余りない。例えば単純に日本の鉄鉱石輸入先の順位を暗記しても出題されない。むしろデータを読み取る能力が問われる。とはいえ知識が必要な問題もあるので、まずは過去問を解いて形式を理解してみよう。
問題は歴史じゃ。得意な子は勝手に点を取れるのでよいが、苦手な子は少し対策に工夫が必要じゃ。多くの塾ではストーリで歴史の流れを理解して、年号は覚えなくて良いとしている。しかし、語呂合わせで覚えられるので、込み入った次期(例えば江戸の三大改革)や、外国の出来事と日本の出来事が交錯する次期(明治等)は、暗記が強い側面もある。コンスタントに9割は取りたい科目なので、早めに知識と問題のクセを体得して欲しいのう。

4.最後に

以上、細かいテクニック等には踏みこなかったが、北辰テストの概要はお伝えしたつもりじゃ。公立第一志望の子は、とにかく7月と9月で目標偏差値を取ってしまう事じゃな(上位を目指す子なら二回とも70以上取れれば、栄東は抑えられる)。偏差値は5教科の方が出やすいので、夏休み中の塾以外の勉強は理社に充てるなど、工夫次第で北辰のプレッシャーから抜け出して、早めに公立対策に没頭できるのじゃ。埼玉県独自の業者テストのクセを上手く利用して、効率よく受験を乗り切って欲しいのう。

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