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実録・鉄道トラブル(その3)車両故障オンパレード(2007年8月1日の日記)解説その②

ATSの件は、ATSのスイッチを入れた時にちょっとだけ警報ベルが鳴って、赤色灯が点灯してすぐ消えるのですが、赤色灯が点灯しなかったと言う事象です。
普通そんなところ見てないので気が付かなくても不思議じゃないんですが、この時は運転士が気づいた。
ATS故障には定義があって、それを動作どうさくで確認したら赤色灯不点灯も故障の一種になっていて、規程上そのままでは走らせることができませんでした。
表示灯が点灯しない原因のほとんどは球切れなので、同じ電球と交換してみるのが王道。
しかし、交換しても点灯しなかった。
こうなるとATS内部の故障か断線くらいしか思い浮かばなかったのですが、この時はATSの動作電圧である24Vのソケットに100Vの電球が取り付けられていました。

例えば24Vで10Wの電球の抵抗値は約57Ω、100Vで10Wの電球の抵抗値は1kΩです。
24Vの回路に1kΩの電球を入れると流れる電流は0.02A程度で、フィラメントが光るはずがありませんね。

*電圧(E)と電力(P)から抵抗値(R)を求める式:R=E^2/P

こういう事が発生しないように電圧によってソケットの形状を変えているんですが、ここは共通のソケットだったと言う訳です。
そんなこと指令は知らんがな!
検査係だって知らない人も居ると思いますが、この時来てくれた人はピンと来たようです。
おかげで、ほぼ遅れること無く発車できました。

ちなみにATSが故障した場合は基本車両交換ですが、運転の途中でそれができない場合は、運転士をもう一人乗務させることで運転を継続させることもできます。しかし、途中駅に運転士を送り込むのも相当な時間を要することがほとんどなので、ATS故障は大幅な遅れや運転休止となる可能性が非常に大きい故障のひとつです。

回21Mは3両編成で1ユニットです。2ユニット以上あれば、1ユニット故障しても遅れながらも運転継続できますが、1ユニットの場合冗長性がまったく無いので即運転継続不可になります。
ここで困るのが、運転の途中(駅間や待避線の無い駅)で止まっちゃった場合、当該列車が運転休止となるほか、複線区間では同一方向の列車が、単線区間ではすべての列車が運転できなくなる点です。
なので1ユニットの列車に不具合が発生した場合はおのずと慎重にならざるを得ず、この時の様に車両交換ができない場合はほぼ運休にしてしまいます。

この日の様に1回の泊まり勤務でこれだけの車両故障が発生することは稀です。
大抵は乗客にはわからない程度の小さいトラブルが数件、運が良ければ電話も無線も鳴らないって事もあります。
忙しすぎるのも暇すぎるのも嫌なんですが、適度に仕事が発生するなんて都合のいい日はほぼありません。

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