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あの扉の向こうに『ぬくもりの後遺症』

あの扉の向こうには


いつからだったなんてトボける事はしない

事柄をどこかで避けようと

冗談でも話すことを怖がっている

そんな自分がいるから。

それは何気ない日常を暮らしていたある日

たったふたりの家族だったあの頃

いつものように仕事に更けていると

アイツから電話が掛かってきた

なんだろう?そう思いながら出ると

慌てながら、でも嬉しそうな気分を抑えられず

「よく聞いて、デキたかも!!」とはしゃぐ声

ボクは一瞬で脳をフル回転させてその意味を理解する

そして飛び上がりそうになるも

心で気持ちをグッと抑えた

たしかに「ぬくもりが」そこに生まれていた

家に帰るとそのことで、はやる気持ちがほとばしる

以外にアイツは冷静で、というかフリをしていた

それからしばらくは腫物をさわるかの様に

アイツの身体を気遣いながら

そっと『ぬくもりに』手を添えて

大事にそれを見守り続けていた

はずだった。

数か月経ったある日

いつものように仕事終わりに買い物し

家の前に着いてみると

部屋の窓から明かりが消えていた

誰もいないのか、近所の実家に帰ってるのか

その程度の想像は全て否定された

暗い部屋にポツンと人影が見えた

いつからなのか

ずっと泣き続けていたアイツは

たったひと言だけ「ごめんなさい」

脳が理解するまで数十秒

心が理解するまで数時間かかる

「ありがとう、ごめんな」

自らも瞳から溢れる涙を気にせず抱き寄せ

アイツとぬくもりに掛けた言葉

それ以上、伝える言葉が出てこなかった

確かなのは

新しい『ぬくもりを』直接その手に抱くこともなく

離れていったこと。

それからひとつ覚えたよ

『ぬくもりの後遺症は』辛く何時までも消えない事を。

あれからふたりは

お互いにひとりになった

あれからボクは

『ぬくもりを』求めることに臆病になっている

でも怖いけど諦めたつもりもない

もうそれぞれになったけど

あの『ぬくもり』も『ぬくもりの後遺症も』

忘れる事はないだろう

確かにあったその命を

抄いあげる事が出来なかった後悔と

去っていったあの日の記憶を

いまだに引きずる臆病さを克服するには

少し時間が掛かり過ぎたかな



そんな、きっとそれでも『暖かいぬくもりに』憧れを抱く物語。。

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