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コンテンツマーケティングの類型について

コンテンツマーケティングで取り扱う要素についてはお伝えしたので、コンテンツマーケティングの全容を類型 = 似ている別のものをいくつか挙げることでお伝えできればと思います。新しい用語が意外と身近なんだと伝われば幸いです。

ここで取り上げる「類型」は、「似ている型」の意味で用いています。コンテンツマーケティングを細分化して、その分類をするために用いている、とは真逆のことをするために持ち出しているのでお間違いないように。

普段あまりマーケティングに接することが多くない方や、Web系のトレンドに詳しくない方であれば、急に「コンテンツマーケティング」と聞かされても、イマイチピンとこないんじゃないでしょうか。具体的な話へ入って行く前に、似たようなものを引っ張り出して来て、少しでも身近なんだと感じていただければ幸いです。

なお、コレまでの講座を踏まえていただくとよりわかりやすいかと思うので、以下もご覧いただけましたら幸いです。

■ コレまでの講座
0-1.自己紹介(講座向け)
0-2.本編へ入る前に、注意事項
1-1.そもそも、「マーケティング」とは何か
1-2.なぜ、「マーケティング」に取り組むのか
1-3.マーケティングの範囲と主な対象
1-4.マーケティングを取り巻く環境の変化について
2-1.「コンテンツ」とは何か

また、本講座あたりから、若干怪しい用語や解説なども飛び出すかと思いますが、あくまでも理解しやすいかと思って取り上げているだけなので、それぞれに対して何か特別な意味は持っていない、ということも書き添えておきます。

最もベーシックなのは、広報 + 販売、広告

特に、玩具系のテレビ番組がもっとも分かりやすい

売りたい商品は、特定の玩具であったり、トレーディングカードであったり、何らかの衣類やキャラクターそのものであったり。収益に直結するモノが存在しつつ、それを周知する、あるいは「自分も欲しい」という思ってもらうような、個別のコンテンツを展開する形は、Webこそ中心で活用していないものの、コンテンツマーケティングそのものと言えるでしょう。

販促を主目的としながらも、そもそも物語として面白いものも希求する。そして、露骨に販促を盛り込みすぎたくないクリエイターと、売上を上げてもらわないと困るスポンサー、メーカー側とのせめぎ合いが生まれるのもこの手のコンテンツじゃないでしょうか。Bで始まるオモチャ屋さん関係とか、Kで始まるアミューズメントやゲームの会社さんなんかが得意な取り組みでしょう。

買わなくても生活には全く影響しない、かなり純粋なホビーに対して「欲しい」という気持ちを持ってもらう、そのホビーの周囲に広がっている「世界観」や「購入すれば味わえる世界」を購入する前にきっちり、良質なコンテンツとして伝える。そしてそのコンテンツを軸に多面展開して再利用する、というのもコンテンツマーケティングのお手本といえるでしょう。毎週1回、50本の広報活動と、それに差し挟まる広告、営業活動のバランスも、参考にされると学びが多いかと思います。

最近見かけるのは、いわゆる「記事広告」

テレビドラマの合間に挟まる、自動車メーカーとコラボレーションしたCMとか、読み物やエンターテインメント性の高い、一見広告とは思えない記事とか。面白さを優先したWebムービーなどもこのパターンかと思います。売りたい商品そのものをアピールしすぎずに、使っている人や使っているシーンを見せて印象に残そうとしてみたり。商品とは無関係な部分で面白いと思ってもらいながら、商品のことも視野に入れて記憶に刷り込もうとしてみたり。

テレビドラマや映画の中で、自社の商品を小道具などに使ってもらう手法も、一種のコンテンツマーケティングでしょう。

「水戸黄門」も、コンテンツマーケティングの一つ

諸説ありますが、十五代目の将軍候補だった一橋慶喜(のちの徳川慶喜)の下馬評、評判を良くするために、徳川光圀の伝記物がプロパガンダ的に使われた、という説があるようです。慶喜が生まれた水戸徳川は徳川御三家の中でもやや格下に当たる家系だったらしく、また慶喜の父親、徳川斉昭が当時の政争に敗れ、水戸藩や水戸学のイメージが悪化していたこともあり、慶喜の将軍継承は簡単には運ばなかったと言われています。

そこで、同藩の2代目藩主にして水戸学の祖である徳川光圀を用いたイメージアップキャンペーンが展開されるのですが、その一連のコンテンツ(一部フィクション含む?)となったのが、あの『水戸黄門』のようです。

「水戸黄門」というコンテンツを通して、水戸学、水戸藩のイメージをよくして行く。一橋慶喜の下馬評を少しでも良くするために取り組んだ、という点ではコレもコンテンツマーケティングの一つでしょう。

サンタクロースのイメージ像も、コンテンツマーケティング

「赤い服と白いヒゲ」、「恰幅のいいおじいさん」は作り上げられたイメージ像

コレも諸説ありますが、あの赤いドリンクメーカーが作り上げたイメージと言われています。クリスマスの時期、必ずサンタクロースのイメージ、赤いトラックとともに、あの特徴的な瓶を入れたコマーシャルをしてますよね? クリスマスで人が集まる時期には、アレを飲みましょうという刷り込みです。

クリスマス = サンタクロース。サンタクロース = あのイメージ。あのイメージのCMをしてて、サンタクロースの衣装と同じ色をしているのは、あのメーカーだ、と。ここに悪い印象って入りにくいですよね。家族なり恋人なりと過ごす時間、いい時間を思い起こすところに、自社の商品を潜り込ませている。これも、間違いなくコンテンツマーケティングです。

信仰心を支えるのも、一種のコンテンツマーケティング

イメージの力で「信じさせる」なら、ほぼコンテンツマーケティング

本当はどうか確かめようがない、もしくは本当に真実かどうかは二の次でいいものに対して、「こうなんだよ」と一定の情報にまとめて、口伝なり印刷物なりで広めていくものであれば、基本的にはコンテンツマーケティングみたいなものだと言っていいでしょう。

その国の成り立ちの正当性であったり、ある教祖のカリスマ性であったり、実際のデータや実証性に乏しい学説であったり。よくよく考えると、「本当に?」と思うものでも、意外と物語として面白かったり、納得のいくストーリーであれば疑うより信じてしまうでしょう。特に、今ほど情報に関する自由度が高くなかった時代であればなおさら、目の前で聞かされている話の信ぴょう性を確かめることは難しかったかと思われます。

情報、真相へのアクセスは制限されている状態で、識字率も決して高くない社会。いかにも真実っぽく、身振り手振りを交えて、あるいは音を交えて、瑕疵の少ない面白いものを聴かされると、事実はどうあれ、「それが真実」になってしまいます。

良くも悪くも、「神話」や宗教系の各種経典や伝承、民話や怪異話というのも、社会の安定や心の安定、結束力を高めるために必要だったコンテンツマーケティングと言えるんじゃないでしょうか。

プロパガンダ、メディア操作もコンテンツマーケティング

例えば、アドルフ・ヒトラーの『我が闘争』自体はどちらかというと「広告」寄りの手法ですが、その一連の演説で支持を勝ち取ったという振る舞い方は、コンテンツマーケティング的と言えなくもないです。ハリウッド映画の配役に、コンテンツマーケティング的な影響、その背後にある力関係の変化、資金元の構図みたいなものを見て取ることもできます。

戦争や政治に関する歴史をつぶさに見ていくと、「こういう情報やキャンペーンの展開の仕方は、コンテンツマーケティング的だな」と思えるポイントが多々あります。共産主義に関する話や第二次大戦前後の日本に関する話、新興宗教(特に例のテロを起こしたところ)にも、ある種の情報統制、コンテンツを用いた世論への影響力行使が埋め込まれているのがよく分かります。

端的に言えば、コンテンツマーケティングとは、「プロパガンダ」や「ペンによる支配や統治」と大差ありません。投入される資金力、その手法の巧緻、一連の動きで何を達成したいのか、その達成したいことが利他的なのか利己的なのか。それぐらいの要素でグラデーションがついているだけじゃないでしょうか。

ITやWebを使うから、最近出て来たマーケティング用語だからちょっと変わっている手法なんだと思うかもしれませんが、むしろマーケティングの手法としては最も古い部類に入るやり方と言えるでしょう。ペンは剣より強いということ、諜報部員の世界がなぜあんなにややこしいのか、メディアに関わる人たちに大きなお金が回るのは何故なのか、何となくお分かりいただけるかと思います。

使いこなせると凄まじい

その分、取り扱いには気をつけたい

売り込む気持ちをできるだけ取り除いて、人畜無害な顔をして懐に入り込む。良い印象を持ってもらうように情報を上手く使って、求める行動を誘発する。コンテンツマーケティングの実態を言えば、だいたいそんなところです。上手く使いこなせると、その効果は絶大なものになるでしょう。

同時に、良心が痛む人もいるかと思います。私もどちらかというと、その一人です。歴史を見れば暗澹たる気持ちになるのは仕方ないでしょうし、実際に今の世の中をコンテンツマーケティングという観点でとらえ直した時も、できればやりたくないなと思うかもしれません。でも、その気持ちこそが大事なポイントだとも思っています。強力な武器になり得るからこそ、使い方を間違えてはいけないと。

スキルを磨けば、悪用はいくらでもできるようになるでしょう。実際に取り組んでいた人はそんなつもりがなかったとしても、結果的に悪用されて来たケースも沢山あるかと思います。自分一人が注意したところで、どこで変な使われ方をするか分からないとも思いますが、だからこそ、良心が痛む人は自分の気持ちに正直になって、使って欲しいと思っています。

自分の欲を満たすためだけに使うのか、世の中を良くするために使うのか。世の中をどんな風に変えたいのか、そこにはご自身のエゴやワガママがたっぷり入っていても良いと思いますが、自分の気持ちを傷つけず、目の前の人も傷つけず、未来を良い方向に導くために、コンテンツマーケティングを使ってみる。使えるように取り組んでみる。そういう向き合い方、関わり方が健全なんじゃないでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。 ただ、まだまだ面白い作品、役に立つ記事を作る力、経験や取材が足りません。もっといい作品をお届けするためにも、サポートいただけますと助かります。 これからも、よろしくお願いいたします。