シン・仮面ライダーを覚えていたい

庵野秀明監督のシン・仮面ライダーをようやく劇場で観る事が出来た。
※この文章には本作のネタバレが多分に含まれます。未視聴の方は、作品視聴後の閲覧を推奨します。

劇場ポスター


公開後、ネット上では賛否が大きく別れていただけに若干の不安も抱えつつ足を運んだワケだが、果たしてボクの感想はといえば

「めっっっっちゃクソ良かった!!!!!」
(ただし、俺は!!!!!)

であった。
この(  )内の部分が余りにも多く感じてしまったので、どこかにこの感情をぶつけたく一筆記そうと思ったのだ。

  • 出だし、のっけから賛否別れそう

  • そもそもグロじゃない

  • 説明!

  • ラスボス0号

  • そして劇終

  • 結局さ

出だし、のっけから賛否別れそう

さて、まず一本の映画としてはやはり冒頭に掴みのアクションシーンを入れたいものである。
ここ暫くの特撮オタはドンブラザーズによって散々「何故こうなったかというと…」で調教されているので時系列調整は全く問題ない。

で、冒頭であの戦闘描写から始まるわけだが。

なるほど、これがネットで言われていた賛否両論になっていて個人的な懸念点の一つである「グロという安い大人向け描写」の正体か。まさか開始数分でお目にかかるとは。

そもそもグロじゃない

確かに血糊の量でいえば冒頭部分が1番使っていただろうが、後半の戦闘でも随所で血糊描写は使われている。
だが、戦闘へのリアリティ描写だとかそれこそ安い大人向け演出だとかと問われれば、NOだ。
これはグロじゃない。
改造された事実も知らず、自分の力加減が分からずバッタオーグのフルパワーで戦闘員を殴ればこうなる。力関係で言えば当然の事実だ。
そして、その力に本郷自身が怯えなければならない。後述するが、苦悩する本郷を描くためにはこの初回戦闘でカッコいい外連味のあるバトルをさせてはいけない。

というか、ここの段階で「あーハイハイ、大人向け大人向け」ってなっちゃった人、後半ちゃんと見てた?って思っちゃう

説明!(人物像の改変)

さぁ、ここで緑川博士たちからの説明パート。
ボク達からすれば親の顔より見た「仮面ライダー本郷猛は改造人間である!」等々の事実が本人に伝わるんですね。

で、本作における本郷猛の人物像がここで視聴者に明かされるんですね。大っきいシンジくん
加えてショッカーの情報も明かされ、TV版ではなく石ノ森先生の漫画版をベースに敷いている事も判明していく。
やっぱりこの点も賛否別れた要因なんだろうなぁ。

ただ、本作においては「改造人間の悲哀と苦悩」がしっかり描かれていたのでテーマのために人物像の改変が必要だったんだよね。
藤岡さんの本郷は強い。強過ぎる
加えてご本人も強いし、鎧武以降はライダー関連で出演される事もあり別格の強さのオーラがある。
寄せてしまえば、そのイメージに引っ張られ、テーマを描けないどころか本郷のキャラ崩壊を言われてしまう。

ここは難しかったろうなと思う。
テーマを描くか、あの頃を描くか、絶対に両立出来なかったし、どちらかは取りこぼす作品になる事が確定したシーンだった。

いや意外と?(怪人の改変)

このままどんより行くのかな、と感じてた所だがその後はテンポ良く戦闘が進んでシン・ウルトラマンを感じた。
BGMもアップテンポ調で疾走感があったし、クモ先輩や2号の辺りはTV版へのリスペクトが凄まじかった。

そしてショッカーライダーである。
黒いボディに真っ赤な目は無条件ににカッコいい。
バッタモチーフであるが故に群生体という意味付け。さらには、マフラーの削除。
本作においてマフラーはルリ子からヒーローたれと託される祈りの象徴であったので、色違いであっても無い方が良い。非常に納得のいく改変であった。

ちなみに、黒い複製の群生体で島本和彦先生のイミテーション7を連想した方も多かったのではないか。
黒い体、赤い目、複製、複数個体、変身後の上に衣服。
絶対に意識してると思うししててほしい。

ラスボス0号(特大のオリジナリティ)

すったもんだの挙句、最終戦。
まさかのチョウオーグがラスボス。しかも「仮面ライダー第0号」を名乗ってきた。

正直かなり面食らった。

だが考えれば考えるほど、切り捨てられなかった部分が凝縮されていたと思う。
漫画版ベースではV3が生まれないのだ。
ここが切り捨てられなかったんだと思う。
だから兄と妹。だからダブルタイフーン。

そしてここでは仮面ライダーSpiritsが垣間見えてくる。マスクの隙間からの吐血描写はSpiritsが源流だし(クウガは逆輸入された事を高寺Pが後に語っている)暴走する兄怪人と、それを止める人の手が入った妹の関係性はドクガロイドの回を彷彿とさせないだろうか。
そう考えると唐突に現れた蝶怪人のポジション変更にも合点がいくのだが…。

そして劇終(スーツの改変)

漫画版をベースに敷きつつもショッカーライダー戦を生き延びた本郷にやはり最期が訪れた。
が、プラーナの固定という形で本郷の魂は一文字と共にある。
最後の疾走シーンは「ここが映像作品として見られるとは」と正直震えた。

パチンコのシティーハンターで、海原との決闘をアニメ映像として見た時の感動に近い。(台無し)

そして何より漫画版では変更のないスーツが、第2+1号となる事で、見慣れた「新」1号配色になるのがにくいではないか。
ここでタイトルにもう一つのミーニングを畳み掛けてくるとは思わなかった。
ボクは正直、心の中でスタンディングオベーション状態だった。

結局さ

アンチショッカー同盟っていう名称の組織も、TV版のちょい役より小説版1971-1973に出てくる方が近い印象があったし(政府関連、プラーナ技術を所持等)前述したとおり、漫画版・Spirits・イミテーション7等の書籍関連を凄く感じたのです。

TV版のアップグレードはかつてTHE FIRSTが行っていたために、漫画版をベースにそっちに舵を切ったのかなって。死神博士も地獄大使もいないし。
その上でTV版の要素もしっかり捨てずに拾っていて、凄く贅沢な作品だったと思うのです。

ただ、人は選ぶ。
今までのシンシリーズ比べて圧倒的に人を篩にかける。
ゴジラは怪獣対人間の超シンプル構造。
ウルトラマンはこんな素敵なSFなんだよっていう超良質プロモーション。
そこに、このライダーである。
前2作のノリで見に来たライト層は凄い速度で置いてけぼりだよ。風速でプラーナ貯まっちゃうよ。そりゃ賛否も別れるよ。別れて当然の作品だよ。

でも、そんな作品だけど、賛側の人間からしたらとても大盛りで食べ応えがあった。楽しかった。続編も楽しみだ。待ってろよビッグマシン。そう思えてならないのだ。

入場特典は第2+1号の神引きでした!

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