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記録 2022/03/02

あんのじょう(百鬼夜行)児島しか知らなかったので、いい機会と思って読んだ。

どんどん嫌味な悪役が出てきてはどんどん改心する、ものすごく勢いのあるオルタナ料理漫画。

料理に「速度」と「三次元」の概念を乗せることに成功した「見て楽しめる画作り」を軸に、絵の楽しさと漫画の足並みを揃えるために「寿司」を「一期一会のスピーディーな食べ物」「客と向き合うエンタメの側面を持った料理」と定義して構築された作品。

作品の全てを「とにかくスピードを出す」に特化しており、ストーリー構成もスピードを削がないように配慮されていると感じた。味の描写がだいたい1pで終わるの、料理漫画としての攻め方がすごくない?

「キャラクターの掘り下げ」と「寿司バトルのスピード感」を両立するための手法がかなり力技で、普通なら「とにかく描写を減らし、寿司の話を高速で進める」ように舵を切ると思うが、逆にどのキャラにも等しく「重い過去と負けられない理由」を盛り、徹底的に全キャラの過去を掘り下げる手法を取っているのが大きな特徴。

全員が全員重い過去をスタンド能力として背負うことで「情念の強さ」を互角にし、結果的に読み手に「味勝負で勝った」と思わせるのはなかなか面白い発想と言える。当然作品の大部分は過去召喚パートに割かれることになるが、それでも「テンポが悪い」と感じさせないのは作者の大ゴマ使いの上手さゆえか。

主人公が「情念」という使い切りアイテムで勝たないことにより新しい力を求める頻度を減らし、修行編を挟まずテンポよく寿司を続けられる利点もあると、総じて「漫画の面白さ」と「寿エンパイアならではのスピーディーさ」を両立させる良手だと感じた。

その分キャラクターの掘り下げ角度が「寿司にマジで、寿司が大好きで、主人公に負けてお互いを認めて良き理解者になる」の方向しかなく、続けて読むと読み口がだいたい同じになるなあと思った。「おいしいものは人を幸せにする」「主人公がものすごくいい奴だからどんな相手も絆されちゃう」基本設定に真摯すぎる。

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