お笑い怪獣・明石家さんまについて。
テレビをつけると今日も甲高い笑い声が響く。おなじみの明石家さんまだ。本当に長いことテレビの第一線で活躍している。大ベテランでありながら、ここまで自ら前に出て笑いを取りにいくタイプの芸人はそうはいない。
しかし、私は長いことこの人の凄さがわからなかった。
しかし、今ならよくわかる。自分がもしプロの芸人になってもこの人とは共演したくはない。やはりとんだお笑い怪獣だ。
明石家さんまの凄さはプレーヤーとしてというよりも、チームプレーでの司令塔、や絶妙な振りやパス。しょーもないボケやコメントもファインプレーに見せてしまう力量がある。正直圧巻である。
そして、どんな面白いネタやボケも明石家さんまの前ではこくごとく吸収され、さんまワールドのエネルギーにされてしまう。
過去たくさんの若手がさんまに勝とう、潰そうと挑んできたが、こくごとくさんまの餌食にされてきた。それはこの部分において、さんまは誰よりも強いからだ。そして、それを壊そうとするものを絶対に許さない。ダウンタウン浜田は「さんまさんは時にもの凄い怖い顔をする。目の奥が笑っていない」と言っていたが、その自分の聖域を犯すものに対する威嚇とも言えるだろう。
さんまを観察していると人の話やネタをよく聞いている。そしてそれを面白がり、自らのギャグやボケに変換してしまう。どんなにつまらない、面白いに関わらず、見事にそれを返す力がある。パターンも豊富で、お笑いが起きるパターンを熟知している。
だから、どんどん新しい人が出てきても対応することが出来る。
この人の凄さはこのあたりにある。
なるほど、たしかにこの部分を究極に磨くことで、ピン芸人でありながら長く生き残ることが出来る。
ではなぜ、若い人はこの人の凄さがわかりにくいのか。
それは、一見死角のない明石家さんま唯一の弱点とも言えるのが、「芸風が古い」ということだ。
ダウンタウン以降、ダウンタウンが先鋭的な笑いを世間に広めた影響で、それ以前の笑いが「ベタ」「古臭い」というイメージがついてしまった。
ダウンタウンより前から活躍している明石家さんまはまさにこの二つに当てはまってしまう演者だ。
だが、明石家さんまは令和の今日もテレビから消える気配はない。
それは、さんまが「世間に寄り添っている」演者だからだ。
テレビは年配の人が多く見ている。年配は笑いのレベルが高い必要はない。
そしてさんまは新しいことに対してもとても勉強熱心だ。
最近だと鬼滅の刃が流行っているが、「俺はしゃべり柱や!」と言っていた。
ワンピースが流行ったときも「チョッパーっておるやろ、俺はデッパー(出っ歯)や」と流行りに対する取り入れるスピードが凄い。
だが、やはりこのネタの古さ、ベタさは否めない。
この芸風の古さで、物凄く印象的なシーンがあった。27時間テレビか何かで、さんまがダウンタウンの音楽番組に乱入する場面があり、ダウンタウンと絡んだ。
「おい、ダウンタウン!俺の代わりにやってくれ。ヘトヘトやねん。」
ダウンタウンは乗り気ではなく、「この番組の司会俺がやるわ」とたまたま、そこにいた徳永英明を見つけると、徳永英明の歌の歌詞をいじって、「何も聞こえない〜、いや聞こうとせい!」というネタがびっくりするくらいすべっていた。
あまりの空気に松本人志が、「さんまさんすみません。ちょっと強めに押してもいいですか?」という、見事な返しにその空気は爆笑に。
滅多に見られない天下の明石家さんまが、松本人志とはいえ後輩に助けられたという屈辱的なシーンだったが、とても印象に残っている。無敵と思われた明石家さんまの弱点が露呈された瞬間だった。
とはいえさんまにはこれからもテレビで頑張って欲しい。
ここまでプレーヤーとして戦えるのは本当に凄い。化け物のレベルだ。
そろそろ少し引いてもいいかと思うが、本当にテレビが好きなのだろう。
芸人は舞台で死ぬのが本望とはよく言われるがこの人はテレビで死ぬのが本望なのかも知れない。
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