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スズキ スイフトスポーツ(6MT)

いまさらでスマヌの味見

思えばZC33型は登場してからだいぶ経過するけれど、なかなか縁に恵まれず未試乗の物件だった。
迂闊に乗ってしまうと先代同様すぐに欲しくなってしまうから、むしろ敢えて遠ざけていた面もある。典型的なスキモノにはどストライクすぎるのだ。

それにしてもひさびさのマニュアル。
リハビリの一環だからきょうは買わないよ〜、と自分を騙しつつ、軽めのクラッチを踏む(なぜほとんどの人はこの行為を「めんどくさい」と言うのか?)。
短いストロークのシフトレバーを1速に送り込んで発進する。扱いやすい。
1年以上クラッチを踏んでいないけれど、ぎこちなさはゼロだ。
いやいや、スポーツモデルとはいえ扱いやすいクルマ側のナイスなアシストのせいだと思うが。

段差を乗り越えたときのアシは、想定していたよりもずっとしなやかでボディもガッチリと衝撃を受け止めてくれる。
ライバルが続々と登場する現在でもまったく遜色ない実力と言っていい。
一方でプラスチックの質感は、ライバルに比べてちょっと見劣りするかもしれないけれど、数年前の日産と同じくらいのクオリティだと思えばなんでもないし、性能を考えれば「あばたもえくぼ」程度だろう。
実際、登場したばかりの二代目トヨタアクアが部分的にクオリティをやたらと抑えてくれたおかげで、まだまだスイフトにも戦う余地が残っていると思ったほどだ。

エンジンはターボ化されたことで、カチーーンと直線的に回転が上がっていく先代までのキモチ良さがスポイルされたかな? と心配していたけれどさにあらず。
開けた道路に差し掛かる前の段階で、すでに理性が吹っ飛びそうになっていた。ステアリングの反応しかり、アクセルに対するレスポンスしかり。
こりゃあニッポンの宝だわ。
高回転まで野太い快音を立て6,000回転以上までキッチリ回ってくれる。
しかも低回転域でも十分にチカラが湧き出るタイプだから扱いやすく、狭隘でアップダウンの激しい山道も、退屈な街中も楽しく駆け抜けていくことができそうだ。スイートスポットが広いのが印象的。
無駄がなく「着ている」感覚で乗れるのが異様にたのしい。

パワーユニットだけ比較すれば、欧州のハッチバックとひけを取らない上質さすらあるし、これならATを選んでも不満はないだろう。長距離を一気に走る、なんてユーザーにもオススメだ。


やれ自動ブレーキだ、駐車サポート機能だ、足を出すとスライドドアが開くだのと、ドライバーを思考停止させる装備ばかりがもてはやされている昨今、スイフトスポーツは走る部分に強くスポットライトを当て続け、確実に進化させる一方で、どっこい前述の安全デバイスをさりげなく装備しつつ、ニッコリと200万円前半のプライスタグを付けて販売されている事実は、この世の奇跡と言ってもいい。

良心的なスズキのことだ。2022年後半以降にバトンタッチされる次期モデルも、変わらず真面目に、旧来からのクルマ好きを唸らせる完成度を保って登場するに違いない。
GR86/BRZが持て囃されている今でも、十分に買う意味のあるクルマだと思う。

運転なんてツマンナイ、などどわかったようなことを言ってる連中に、テスト前の教科書みたいな蛍光ペンの色をしたこのクルマに無理して乗せてみたらどんな顔するかな。