見出し画像

トイレの花子さんと水の女神~学校の怪談は精霊の伝説



トイレの花子さん

昔から、家の三ヶ所に御札を貼って神祀りしました。

玄関、台所、便所。

台所には三宝荒神、あらみたま。

便所には、みずはのめ、水の女神。

便所の女神には花を絶やさない。

赤い花の少女はいつもやさしい、にぎみたま。

便所ではみんなおちついていられる。

赤い花の少女が笑ってくれる。

便所で泣いても、わかってくれる。

だのに、御札がはがされてしまった。

女神は花の少女の手を引いて去る。

女神は水に帰って流れ去る。

花の少女はさびしくてかなしくて。

子供たちに手折られてしまう。

そしてここはどこ?

学校のトイレ。

みんなせわしなくあわてて出入する。

しおれてしまった赤い花。

こんこん、花子さんいます?

赤い花は涙をふいて返事する。

うん。

だのに子供たちは逃げてゆく。

🐢🐢🐢🐢🐢

ミズハノメ

#ミズハノメ 、です。検索すれば、こんな素敵なイラストが出てきます。

トイレの神様には、このミズハノメと、火の神ウスサマが祀られます。ウスサマはインドの火の神アグリのこととされます。火で浄化するか、水で浄化するかの違いもありますが、女神とするときはミズハノメとなります。

トイレの神様は美人です。だから、常にお供えの花を欠かせてはなりません。

トイレの花子さん、という学校怪談が語られています。花子さんは、ミズハノメに供えられた聖霊ですね。

ミズハノメは記紀神話では、イザナミが瀕死の時に流した尿から生まれた、とのみ書かれています。由来のよくわからない女神です。いろんな説があります。水神として、根元的な神であることはまちがいありません。

日本書紀は、罔象、モウショウ、と当て字します。意味は、ただようこと、あるいは、虚無です。哲学的な表現です。

ただよう虚無。宇宙論的な思索へいざなわれます。トイレの女神は、人を哲学者にします。宇宙の起源へと、導きます。

いつしか、私たちは、トイレの女神をお祀りしなくなりました。しおれた花の聖霊は、都市伝説の妖怪となります。

トイレで清浄な水を使えることが、どれだけありがたいことか。

どうか、ていねいな手洗いも忘れずに。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?