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グローブ

1972年ミュンへオリンピック。アーチェリー競技が52年ぶりにオリンピックに復活した記念すべき大会です。この大会で初代ゴールドメダリストとなったのは、男子はジョン・ウィリアムス(USA)、そして女子がドリーン・ウィルバー(USA)です。
ドリーンは全米選手権4度優勝。1969年バレーフォージ世界選手権2位、1971年ヨーク世界選手権2位、そしてミュンヘンで2つの世界記録と共に、世界の頂点に立ちます。この時、彼女は42歳でした。
猫目の形をしたメガネと優雅な振る舞いが彼女のトレードマークでしたが、もうひとつ忘れてはならないことがあります。それはワンピースボウの時代から、テイクダウンボウを初めて使ったミュンヘンもそうですが、彼女は一貫して「グローブ」で射っているのです。
最近ではグローブを見かけなくなり、あってもそれは初心者用の道具とみなされています。たしかに1960年代まで、グローブは競技用の道具でした。しかし、その後登場するタブによって1970年代からは、初心者を指導するための道具となり、競技では見かけなくなります。そして今では、初心者指導でさえグローブは使われなくなってしまい、指導者もその存在を忘れたのです。

1930-2008年 アイオワの地元には彼女を称える像が飾られています。

なぜグローブは忘れ去られたのか。これは指導者の責任も大きいでしょう。1970年代までは、初心者指導には必ずグローブが使われました。タブで教える指導者はいませんでした。その理由は、指の掛け方や力配分、引手のリラックスなど、グローブだからこそ教えられることや、正しいフォームの獲得に時間が掛からなかったことなど、タブ以上のメリットがあったのです。それは今も何ら変わるものではありません。逆にタブだからうまく引けないことがあります。
そしてドリーンは、グローブが初心者だけのものではなく、世界チャンピオンの道具であることも教えてくれたのです。

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