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廉価版シャフト

日本には、ハンティングも3Dもない。リカーブもコンパウンドもベアボウも、紙の的を射つターゲット競技しかない。この市場の特殊性を知らなければなりません。アメリカでは、この分野は全体のわずか10%にも満たない小さな市場ですが、日本ではそれが100%です。

そんな日本でアーチェリーをする時、使用するカーボンシャフトの最上位モデルには、たぶん、
Straightness: ± .001”
Weight tolerance: ± 0.5 grains per packaged dozen
と、書かれています。「グレード」とも呼ばれる、重さと曲がりのバラツキを許容する範囲を表すもので、曲がりに関しては、ほぼアルミシャフトに匹敵する直進性だというのです。
では、どのメーカーも「Junk」は別にして、上位モデルの後に「廉価版」のモデルがあります。同じモデルでありながらグレードが違う、バラツキの範囲が大きくなるシャフトであったり、同じシャフトなのになぜかモデル名が異なりグレードが落ちるシャフトがあります。そして「per packaged dozen」が表すように、同じモデルであっても、「12本1パッケージ」を他のパッケージと混ぜれば、この範囲にあらずということもあります。
ではこのようなグレードの低い、廉価版のモデルをメーカーはどのように作っていると思いますか。

最初から低いグレードを狙って作っているのではありません。最上位の品質を狙った結果として、廉価版ができてしまうのです。そんな廉価版を商品として販売しなければ、廃棄するしかなくコストに跳ね返り、最上位モデルの価格は跳ね上がります。
先のAVIA社の話で、Kurt は「アーチェリーシャフトの品質向上とコストダウンのためにスポーツカイトの分野に新たに参入」することで会社を興したと書きましたが、これは非常に面白い話です。AVIA社の生産と売り上げの約80%を占めるのは、航空産業と自動社産業に対するカーボン素材の供給で、残りがスポーツカイトや玩具、ホビーといった分野であり、アーチェリーシャフトは全体の10%にも満たないのでした。AVIAはグレードの落ちたシャフトを、スポーツカイトやホビーで消化することで、上位モデルのグレードと低価格を維持したというのです。

昔、EASTONが初めてACEを世に出した時、歩留まりは50%にも及ばず30~40%と言っていました。今でこそ技術や機械の進歩で70-80%はあるでしょうが、それでも商品とならないシャフトが生まれます。そこでアルミの専業メーカーは考えます。両端を削らなかったり、外観だけを変えたグレードの低いモデルを出せば、廃棄するシャフトが売れて価格も抑えられると。。。

ところでグレードは、「品質」を表すものであって、決して「性能」を表しているのではありません。廉価版だから当たらない、ということではありません。ご留意ください。


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