プレゼンテーション

担任の先生(まよなかめがや#4)

中学のときの担任の先生の
訃報を今日知った
そんな年始のできごとを
便りで知る11月である。

先生は2,3年のときの担任で
サッカー部の顧問だった
振り返ると3年間ほぼ毎日
顔を合わせていたことになる
もはや父だ。

先生は口うるさかった
あれをやるな
もっとこうしろ
こうするべきではないか

先生はぼくの何もかもを
見透かしていた
本気で取り組まないこと
周りの目を気にすること
たまに強引になること

ぼくも先生の日常を
とてもよく見ていた
いつもタバコ臭くて
コーヒー臭くて
日に焼けて色黒で
いつもお昼には湯飲みに
インスタントの味噌汁を入れていた

こう書き出すと
いかに学校の先生は人の内面を
見ているとかいうことに
驚かされる。


中3の二学期にあった
最後の進路面談のとき
ぼくは推薦で進学することを決めた

先生はぼくに
「お前だったらもうちょっと上を
目指せたと思うんだけどな」と
少し残念そうに言った。
あれはぼくの3年間を見てきた
口うるさい先生がみてきた
ぼくの正しい評価だったんだと
今になって思う


中学を卒業してから来年で20年。

ほぼ毎年年賀状のやりとりはしていたけれど
先生はぼくのことを覚えていただろうか。
声とか見た目とか口調とか。
当時とあんまり変わっていない
自信はあるけれど
その自信になんの意味があるのか
今はよく分からない


学校の先生は大変だし
生徒からはなめられるし
休みも部活に出なきゃいけない

ぼくはなりたくないなと思う職業1位だった
それは今もさほど変わっていない


でも大人になってからも
中学高校の先生は
昔話や想い出話には必ず登場するし
怒られたことや
つまらないやりとりが
あの当時の空気感で想い起こされる。
こうして亡くなっても
想い出されることがきっと多いはずだ

いいも悪いも含めて
あちこちで自分の想い出話を
してもらえるなんて
なかなかそんなことはない

もしかすると先生は
うらやましい職業なのかもしれない

もちろんなりたくはないけれど。


先生ありがとう
ぼくは先生に期待してもらって
今そのありがたみを感じています

誰かの期待を背負えるということは
人生でそんなにないんだということに
今さらながら気づきました

先生ごめんなさい
たくさん「ぼくにはできない」と言って
できそうなことにも目を背けて
逃げて逃げ切って
全力で取り組まないことも多かったですね

3年というとってもとっても
短い時間の想い出は
20年経ってどれもこれも
ぼくにとっては失いたくない想い出です

亡くなったときに想い出すなんて
都合がよいなと思うし
「もっと俺を想い出せよ」と
背の高い先生は
ぼくを見下ろして言っているかも
しれませんね


たまには夢にでも出てきて
口うるさいこと言ってほしい
そんな気もしている

ホントぼくは都合がいい生徒ですね


在りし想い出が頭のなかに
流星群のように流れてきて
きっと今日は布団に入ったら
泣いてしまうんだろうな


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