どうして家庭洗濯できる衣類をクリーニング店に依頼するのか?

節約志向が高まり、
家庭で洗える衣類を消費者が求めるようになる中、
アパレルメーカーは家庭洗濯可能な商品を大量に市場に投入してきています。

家庭洗濯可能な衣類が増えることは、
クリーニング業界にとっては、売り上げをつくり上げるうえでマイナス要因になります。
クリーニングに出さなくても、家庭で洗えてしまうためです。


しかし、そのような状況の中でも、私はクリーニング業界の未来は明るいと前回書き述べました。


それでは、
どうしてそのようなことが言えるのか?
今回は、それに対する私の考えをお伝えしたいと思います。

私は家庭洗濯についてそこまで知識を持ち合わせていませんが、
おそらく以下のようにされているのではないかと考えます。


①洗濯機に色分けした洗濯物(被洗物)を品物の種類別に入れる。
②水道水を注入し洗剤を投入して定めた時間回す。
③すすぎ洗い後、柔軟剤をいれて脱水して終了。
④終了後、ハンガー等に掛けて干す。
⑤乾燥後、たたみ、品物よってはアイロン掛け。
だと思います。

クリーニング店では、家庭洗濯に近いクリーニング方法としてランドリークリーニングが有ります。
お客様の衣類を大切に取り扱うクリーニング店では、以下のように行われます。

①品物によって使う洗剤を選択。
②洗浄水(水道水の硬度を限りなく0にして)を使い、水道水に含まれる硬度による洗剤の洗浄力を低下を防ぐと共に、水道水の硬度で出来る金属石鹸付着による被洗物(洗濯物)の硬化の防止をはかる。
③被洗物(洗濯物)の種類に応じた洗浄時間で最適な温度での温水洗浄。
温水洗浄するのは、洗浄力を上げるために必須条件。
(真冬の冷水による洗濯は洗浄力を低下させます)
④洗剤の洗浄力を上げるための洗浄助剤の選択。
⑤衣類のダメージを極力抑えながら、汚れを落とす洗浄。
⑥洗うことによって低下する衣類の風合いや性能を回復させる加工剤の使用。
⑦風合いを回復するために、種類別に応じた温風乾燥。
⑧出来る限り新品に近づける整形の仕上げ。
以上がクリーニング店が行うランドリークリーニングです。

先に、クリーニング店のランドリークリーニングが家庭洗濯と近いと書き述べましたが、実際は家庭洗濯とランドリークリーニングは、似て非なるものなのです。
私のお店には、家庭洗濯可能な衣類が沢山持ち込まれます。
どうしてなのでしょうか?
①自分で洗うのは面倒だ。
②上手く洗えないから。
③ブランド品だから怖い。
④アイロン掛けが難しい。
⑤洗ったけど、シミや汚れが残った。

理由は様々だと思います。

本当のことはそれぞれで、実際はお客様にきかなくてはわからないと思います。
ただここで言えることは、
洗うことは綺麗になることに直結しないということです。
このことは、家庭洗濯でもプロのクリーニング店が行うランドリークリーニングでも同じです。
やはり、
適切な時期に、適切な方法、処理を行わなければ、いつまでも綺麗な状態で衣類を着用することは出来ないのです。

私は、家庭洗濯が駄目だというつもりはありません。
ただ限界があるのです。
クリーニング店が行うランドリークリーニングも同じです。
それは、薬を飲んだり、お医師さんに診察してもらっても、
必ず病気が治るとは限らないことと同じなのです。


お気に入りの衣類をあまりダメージを受けない状態で、適切に洗濯することをオススメします。
この投稿をしているのは11月初旬です。
私のお店には、この夏に着用された家庭洗濯可能な衣類がたくさん持ち込まれています。
その数量は、ジャケット、スーツなど本来クリーニング店が行うドライクリーニングよりはるかに多いです。
これは、クリーニング店が行う仕事をお客様が評価されている証だと考えます。
私はクリーニング料金を下げて家庭洗濯の代行(PTBプロジェクト)として行うクリーニング業は支持しません。

クリーニング店は何のために必要なのでしょうか?

クリーニング店の仕事の目的は、単に利潤を求めるものではないと考えます。

お客様の衣類の困りごとを解決することが使命なのです。

実際に私のお店では、
お客様が2,500円で買われたTシャツで、
「とっても気に入っています」
とのことで、
クリーニング料金とシミ抜き料金をあわせて2,500円までで収まるならお願いしたいと、言われたことがあります。


クリーニング店が行う仕事の価値をしっかり伝えることによって、
たとえ家庭洗濯が可能な衣類が益々増大しても、
クリーニング店の仕事がなくなることはないと考えています。

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